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4.友人A、間違いだらけの展開に困る。
しおりを挟む不二君と広瀬君は、予想通り今まで以上に仲良くなったようである。
不二君が廊下で広瀬君を待っている姿をあまり見なくなった。一緒に帰っているのか、待つ場所を変えたのか、付き合えたのか。真相はわからないけれど、何かしらの進展はあったのだと推測する。
お役御免かあ。おこがましいが、少し寂しい気持ちになっている自分に気づいた。案外、不二君との雑な絡みは嫌いじゃなかったのだと思う。
でも、まあ。ということは、またこれから何かしらの新しいストーリーが始まるのだと心の準備をする。
今日も掃除当番で残り、教室で箒と塵取りを片付けていた時――
「キ、キャアアアアアアアァ!!!!」
恋愛ボケした学校には似つかわしくない女子の叫び声が聞こえた。真上の階からだろうか。今度はまさかサスペンス???!!と思いつつ階段を駆け上がる。
真上の階は2年生の教室だ。
「大丈夫ですか??!!!」
勢いよく、2年3組のドアを開ける。
目に飛び込んできたのは、男女が壁のそばで並んでいる姿。
大きめのパーカーに第2ボタンまで全開の着崩した明るい髪色の男性。うん、ヤンキーだ。
女性の方は大人しそうな腰までの黒髪をにまとめたポニーテール。うん、清楚系だ。
2人がならんでいるだけならいいんだけど、男性が女性の両腕を頭の上で片手で押さえて、背後から壁に押し付けている。
女性が襲われているとしか思えない2人の体勢に私は固まる。うそ~、変なところに来ちゃったよ~・・・。
私が教室のドアを開けたことで男性が油断してか、女性を押さえている手の力が緩んだようだ。女性が
「離して!!」
と言って、手をふりほどき、男性から離れてドア付近で固まっていた私の肩にぶつかりつつ、教室を飛び出していった。
彼女のことを守れたのかよくわからないけれど、き、気まずい。
「あ、スミマセ・・・」と言いかけて、後ろからねっとりとした声にかき消された。
「あんたたち、まだ帰ってなかったのォ?」
と、まぶしいぐらいの金髪をかき上げたのは巨乳の美人教師と噂の2年生の担当泉先生だ。
やって、しまった・・・。
これは私ではなくて、泉先生がこの現場に遭遇するはずだったのではないだろうか。
おそらく、「生徒のピンチを助けたら逆に襲われちゃった生意気美人教師」系のヒロインだ。もちろんそのストーリーはR18である。私では役不足だ。
「さっさと帰りなさいよォ~」と、背を向けナイスボディの腰を左右に振りながら2年3組の教室から離れていく。
「あ、はーい・・・」と、一応、返事をした。
「あの、お邪魔してすみませんでした」
友人Aにあるまじき失敗である。出しゃばってしまった。私のせいで、これから美人教師とのお楽しみタイムを奪われてしまったヤンキー先輩に念のため謝っておく。
「あ?」
謝られたことに対する返事が「あ?」って。こわっ。さすがはヤンキー先輩。高身長から見下ろされる視線はそれなりに迫力がある。これ以上長居しても、私もなんかヤバくなりそうなのでさっさと退散する。申し訳ないけれど、私のような平凡女子にR18の需要は無いことでしょう。
肩をグイっと掴まれて教室に引き入れられる。あ、やばい・・・
先輩の両手が私の顔の左右に置かれ、壁と先輩とで挟まれる。これ、壁ドン・・・。壁ドンってこんな近いんだ・・・。じゃなくて!
「さっきはよくも邪魔してくれたな」
先輩の顔が近づく。怖い怖い怖い!違う!相手間違えてる!!
「先生~~~!!!泉先生~~~!美人教師ぃ~~‼」
と慌てて叫ぶ。早く軌道修正をしなければマズイ。さっき出ていったばっかりの美人教師、きっとその辺にいるに違いない。
願いが届いたのか、ガラっと教室のドアが動いた。
た、助かった~~~~。
と、思ったのは束の間。そこには不二君が気だるげに立っていた。
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