上 下
210 / 471
第2章 跪いて足をお舐め

#39 悪役令嬢⑨

しおりを挟む
 馬車がようやく城門をくぐった。

 そこからは車寄せの道がカーブを描いて左に伸びており、その先に駐車している馬車の列が見える。

 どうやらそこに馬車を止めて、あとは歩けということらしい。

 御者が馬たちの鼻面を車寄せに向けるのを確認して、ルビイは最後の問いを発することにした。

「そういえば、今年の武闘会にはマリウス皇子も出場するって聞いたけど、本当なのかしら?」

 これはターニャからの情報である。

 彼女に会ったことは、スナフにも話してあった。

「よく知ってるな。それはまだ公表されていないはずだが…さては、出どころは妹か」

 パイプをふかしながら、スナフが言った。

 園遊会の席上は禁煙なので、今のうちに吸い溜めしておこうという腹らしい。

「皇子はこの夏にも結婚するだろう。となれば、来年には王位継承という可能性が高い。王はもうかなりのお歳だからな。だが、オタクで文人タイプのマリウスには何の武勲もない。せめて武闘会で優勝させて、ミネルヴァ一の勇者という称号を授けたいんじゃないか」

「優勝させるって言ったって、武芸の素人には無理じゃない? 仮に幸運が続いて、皇子がいいところまで行けたとしても、最後にはさっき話に出たアギもいるわけでしょう?」

「そんなもの、金さえ積めば、なんとでもなるだろう」

 不愛想な口調で、正一が口をはさんだ。

「ヤラセ、八百長なんとでも言うがいい。いくら実力勝負の世界とはいえ、皇子相手にまともに戦うやつがいると思うか? 今年は本来、マリウス一択で決まりのはずだったのさ」

「はずって…?」

「ルビイ、おまえだよ」

 スナフが吹き出し、煙にむせた。

「おまえはおそらく手加減しないだろう。だからおまえの参加を予測して、王宮は急きょアギを出場させることにした。マリウスと当たる前に、おまえをつぶすためにな」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

リョーマ伝~小学生編~

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:200pt お気に入り:0

昔抱いた後輩がヤ〇ザの愛人3号になっていた

BL / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:187

旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,599pt お気に入り:182

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

BL / 連載中 24h.ポイント:55,716pt お気に入り:5,039

蔑まれた令嬢に、伯爵の溺愛が止まらない。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:481

【 皆が還る場所… 】短編集(戦隊)10

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:5

夜の帝王の一途な愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,912pt お気に入り:86

処理中です...