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ステラさんの実家の宿屋はステラさんの両親と兄夫婦が運営していました。
ステラさんの紹介で転がり込んだ私ですが、当然事情を知らない皆さんにあまり良い顔はされませんでした。
ステラさんがあまり協会では見せない顔でお父さんと激しく言い合いをしていましたが、どうにか合意したらしくて私は空き部屋を一つ借りることができました。
協会では優しいお姉さんで通っているステラさんの違った一面を見ることができました。
冒険者用の宿は一応男女の区画が分かれていて、トイレは共同ですが家賃が月に金貨3枚、お風呂は別料金で1回銅貨3枚でした。
部屋にはキッチンは無くベッドと椅子が置いてありますが、休憩や寝るだけの目的で使うことになりそうです。
食事は食堂があって1人前銅貨5枚で食事を取ることができます。
ステラさんのご厚意で家賃は発生しないのですが、毎日お風呂と三食を求めると銀貨2枚くらいは消費してしまいます。それ以上はステラさんのご家族も妥協してくれなかったらしく、ステラさんに謝られてしまいました。
「私にとっては家賃をまけてもらうだけでも申し訳ないです。本当にいいんですか?」
「あんな狭い部屋で金貨3枚なんてのが高すぎるのよ。何も気にしなくていいわ。それより当座の生活費ね。私も協会の窓口としてできる限りは協力するから頑張りましょうね」
ステラさんはそう言ってくれますし、あまり甘えないでちゃんと稼いで家賃もお支払いできるようにしないといけません。
それ以前に、手持ちが銀貨8枚しかないので節約しなかった場合5日も経たずに干上がってしまいます。
食堂を手伝うという提案もしていただいたのですが、やはり冒険家業でお金を稼ぎたいと思います。
とはいえお姉様達と会いたくない私は迷宮に入ることは躊躇われました。
そこで冒険者協会の依頼掲示板で街の外の薬草取りや害獣の駆除を請け負ってみましたが、時間を取られる割にあまり身にならず一日に必要な銀貨に少し足りない程度を稼ぐのが精いっぱいでした。
結局夜には食堂を手伝って少しでも食費を浮かせることになりました。
迷宮に頼らずに冒険者として食べていこうと思ったら、強力な魔物の討伐や遠方にアイテムを取りに行ったりと、他の人ができないことをしないと駄目なようです。
敬遠していましたが、やはり迷宮に入るべきなのでしょうか。
グレースお姉様は私への分け前は毎回銀貨1枚程度しかくれませんでしたが、先日のムカデの討伐時には金貨をドロップしていました。
あれは地下3階の強敵なのでそこまでは無理としても、今の私なら地下1階でそれなりに稼ぐことができるかもしれません。
迷宮の探索は貴族のみに許されているのでその利点は生かしたいのですけど、なかなか踏ん切りがつかないまま簡単な依頼と食堂の手伝いで食いつなぐだけの生活を数日送りました。
私は使用人紛いの生活を送っていたこともあって給仕は得意だったので、食堂を切り盛りしているステラさんの兄嫁のナタリーさんからは昼も働かないかなどと言われたり、次第にステラさんの家族にも好意的に接してもらえるようになってきました。
そんな矢先、給仕の最中にお姉様達の噂を耳にしたのです。
私の代わりに回復職を連れて迷宮に入ったときに、誰かが再起不能になってしまったと。
噂の出どころはその時の回復職の人らしいのですが、悪評が出回っているせいかお姉様達はパーティー編成に難航しているようです。諦めていないということはレイラお姉様かルーナお姉様に何かあったということでしょうか。
見つかればまた強引に迷宮に連れていかれる可能性もあるのですが、お姉様達が手をこまねいているなら私が迷宮に入っていても見つからないのではないでしょうか。
私は翌日から意を決して迷宮に入ってみることにしました。
ただし、どこで噂になるかわからないので一人で地下1階だけを探索します。
扉をくぐっては敵が少なくなるまでリセットして、光攻撃魔法で屠っていきます。光攻撃レベル3からは威力は分散されますが複数攻撃が可能になるので、比較的楽に敵を倒すことができました。
夕方には食堂の手伝いがあるので、昼過ぎまでに魔力を使い切って銀貨にして7枚を稼ぐことができました。ドロップはほとんどが銅貨ですが、宿屋での支払いには便利なので良しとしました。
目標は先日使ってしまった帰還の魔石の再購入です。それを買えれば2階に降りてもいいかもしれません。
戻ってステラさんに冒険者カードを渡すと、思った以上に経験値が入っていました。パーティーだと分配されますが、一人だと全て自分に経験値が入るようです。
所詮1階なのでたいした経験値ではありませんでしたが、レベルが一つだけ上がりました。
迷宮は実入りがよかったので、この調子でしばらく頑張ることにしました。
この調子なら帰還アイテムを買いながらでも家賃を支払うことが出来そうです。
ステラさんの紹介で転がり込んだ私ですが、当然事情を知らない皆さんにあまり良い顔はされませんでした。
ステラさんがあまり協会では見せない顔でお父さんと激しく言い合いをしていましたが、どうにか合意したらしくて私は空き部屋を一つ借りることができました。
協会では優しいお姉さんで通っているステラさんの違った一面を見ることができました。
冒険者用の宿は一応男女の区画が分かれていて、トイレは共同ですが家賃が月に金貨3枚、お風呂は別料金で1回銅貨3枚でした。
部屋にはキッチンは無くベッドと椅子が置いてありますが、休憩や寝るだけの目的で使うことになりそうです。
食事は食堂があって1人前銅貨5枚で食事を取ることができます。
ステラさんのご厚意で家賃は発生しないのですが、毎日お風呂と三食を求めると銀貨2枚くらいは消費してしまいます。それ以上はステラさんのご家族も妥協してくれなかったらしく、ステラさんに謝られてしまいました。
「私にとっては家賃をまけてもらうだけでも申し訳ないです。本当にいいんですか?」
「あんな狭い部屋で金貨3枚なんてのが高すぎるのよ。何も気にしなくていいわ。それより当座の生活費ね。私も協会の窓口としてできる限りは協力するから頑張りましょうね」
ステラさんはそう言ってくれますし、あまり甘えないでちゃんと稼いで家賃もお支払いできるようにしないといけません。
それ以前に、手持ちが銀貨8枚しかないので節約しなかった場合5日も経たずに干上がってしまいます。
食堂を手伝うという提案もしていただいたのですが、やはり冒険家業でお金を稼ぎたいと思います。
とはいえお姉様達と会いたくない私は迷宮に入ることは躊躇われました。
そこで冒険者協会の依頼掲示板で街の外の薬草取りや害獣の駆除を請け負ってみましたが、時間を取られる割にあまり身にならず一日に必要な銀貨に少し足りない程度を稼ぐのが精いっぱいでした。
結局夜には食堂を手伝って少しでも食費を浮かせることになりました。
迷宮に頼らずに冒険者として食べていこうと思ったら、強力な魔物の討伐や遠方にアイテムを取りに行ったりと、他の人ができないことをしないと駄目なようです。
敬遠していましたが、やはり迷宮に入るべきなのでしょうか。
グレースお姉様は私への分け前は毎回銀貨1枚程度しかくれませんでしたが、先日のムカデの討伐時には金貨をドロップしていました。
あれは地下3階の強敵なのでそこまでは無理としても、今の私なら地下1階でそれなりに稼ぐことができるかもしれません。
迷宮の探索は貴族のみに許されているのでその利点は生かしたいのですけど、なかなか踏ん切りがつかないまま簡単な依頼と食堂の手伝いで食いつなぐだけの生活を数日送りました。
私は使用人紛いの生活を送っていたこともあって給仕は得意だったので、食堂を切り盛りしているステラさんの兄嫁のナタリーさんからは昼も働かないかなどと言われたり、次第にステラさんの家族にも好意的に接してもらえるようになってきました。
そんな矢先、給仕の最中にお姉様達の噂を耳にしたのです。
私の代わりに回復職を連れて迷宮に入ったときに、誰かが再起不能になってしまったと。
噂の出どころはその時の回復職の人らしいのですが、悪評が出回っているせいかお姉様達はパーティー編成に難航しているようです。諦めていないということはレイラお姉様かルーナお姉様に何かあったということでしょうか。
見つかればまた強引に迷宮に連れていかれる可能性もあるのですが、お姉様達が手をこまねいているなら私が迷宮に入っていても見つからないのではないでしょうか。
私は翌日から意を決して迷宮に入ってみることにしました。
ただし、どこで噂になるかわからないので一人で地下1階だけを探索します。
扉をくぐっては敵が少なくなるまでリセットして、光攻撃魔法で屠っていきます。光攻撃レベル3からは威力は分散されますが複数攻撃が可能になるので、比較的楽に敵を倒すことができました。
夕方には食堂の手伝いがあるので、昼過ぎまでに魔力を使い切って銀貨にして7枚を稼ぐことができました。ドロップはほとんどが銅貨ですが、宿屋での支払いには便利なので良しとしました。
目標は先日使ってしまった帰還の魔石の再購入です。それを買えれば2階に降りてもいいかもしれません。
戻ってステラさんに冒険者カードを渡すと、思った以上に経験値が入っていました。パーティーだと分配されますが、一人だと全て自分に経験値が入るようです。
所詮1階なのでたいした経験値ではありませんでしたが、レベルが一つだけ上がりました。
迷宮は実入りがよかったので、この調子でしばらく頑張ることにしました。
この調子なら帰還アイテムを買いながらでも家賃を支払うことが出来そうです。
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