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90:ハリネズミとバード

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元彼バードを見た途端、まるでハリネズミのような刺々しい雰囲気になったクラウディオをすぐ隣に張りつけて、フェリは静かにソファーに座って、真面目な顔で記事の内容と具体的な文章表現を話し合いながら記事を書いているチビッ子達を眺めていた。アデルは利発なようで、お昼前に書き上がった記事を読ませてもらったら、中々上手く書けていた。フェリが褒めると、2人とも照れたように、でも嬉しそうに顔を見合わせて笑った。可愛らしい小さなカップルの姿に和む。いや、まだカップルではないのだが。
可愛らしい子供達に比べ、元恋人2人は子供達の邪魔にならない程度の小さな声でずっと罵りあっていた。厳密に言うと、露骨に嫌そうな顔のクラウディオが噛みついていた。いつも余裕のある大人の男なクラウディオがこんな風になるなんて、正直ちょっと面白い。どうやら恋人だった頃に散々バードに浮気をされ、酷く泣くはめになったらしい。マジか。それにどうも会話を聞いている感じ、クラウディオが抱かれていたっぽい。マジか。

クラウディオは夏休みの宿題も一緒にやりたいと言う子供達の為に昼食を用意して(バードの分は物凄く嫌そうに)、現在食べ終えて片付け中である。ジェラルドをとられると危機感を感じているのか、あまりにもむくれていたのでジャンが飛竜に乗せていたアンジェラも、クラウディオ同様ハリネズミのような雰囲気になっている。
ジェラルドとアデルは、昼食が終わると、夏休みの宿題を一緒にやり始めた。トリッシュは勉強が嫌いで、夏休みの宿題は夏休み終了間際に半泣きで全部まとめてやっていたそうだが、ジェラルドもアデルもコツコツタイプなのか、2人で分からないところは教科書で調べつつ、真面目に宿題に取り組んでいた。
1時間程で今日の予定分を終わらせた2人は、ジャンを伴い、ジェラルドの飛竜ルチアを一緒に見に行った。居間にはハリネズミなクラウディオとアンジェラ、少々困っているフェリとロヴィーノ、飄々としているバードが残された。


「あー……お茶でも淹れようか」

「ありがとうございます。フェリ様」

「こいつには泥水で十分だぞ、フェリ」

「はははっ。本当に可愛くなくなったな、クラウディオ」

「殺すぞ」

「えーと……」

「母上。俺が淹れてきます」

「あ、うん。よろしく、ロヴィーノ」

「アンジェラ。手伝ってくれ」

「……うん」


ハリネズミ2号のアンジェラをつれてロヴィーノが居間から出ていった。ハリネズミ1号はフェリの真横に座って、ずっとフェリの腰を片手で抱いているので、フェリは実は動けなかったりする。うん。どうしようかな、本当に。


「あ、そうだ。可愛くないクラウディオ」

「くたばれクソ野郎」

「俺はアデル連れてこっちに来て日が浅いもんでな。子供用の服を買えるいい店知らないか?適当な店で買っていたが、いまいち気に入るのが少なくてな」

「……?伴侶は?」

「アデルの母親とはこっちに来る前に離婚した」

「お前の浮気が原因だろ」

「いや?結婚したのは、ただ単に子供が欲しくなっただけだし。子供を産んである程度育ててくれたら用なしだから離婚しただけだ」

「最低」

「浪費癖ありの家事もしない顔だけ女なんて、子供を産ませる以外の使い道あるか?」

「……どこがよくて結婚したんだ」

「顔」

「最低」

「はっ。で?店の場所と名前は?」

「……大通りのサンガレア商会本店の3つ隣に子供服専門店がある。2階は女の子用のものだけだ。小学生くらいまでなら、そこで全部揃えられる。女性の店員もいる」

「下着類もあるか?ブラジャーとか。あと高学年になれば、早ければ月のものも始まる子がいるだろ?」

「……そこらへんも置いてある。中央の街は特に男夫婦が多いからな。女性の店員に頼めば、サービスで色々子供に教えてくれる。月のものに必要なものもそこで買えるし、使い方も教えてもらえる」

「ふむ。中々いい店だな。髪飾りなんかの小物を扱う店は?」

「……大通りの花街通りよりの所らへんに集中して雑貨屋がある」

「ふーん。お前確か娘がいたよな。新聞で読んだ。初潮きた時どうした?」

「……マーサ様に頼んだ」

「あぁ。その手があるか。俺も頼むかな」

「バードはマーサと仲いいのか?」

「まぁ、ぶっちゃけ遊び相手なんですよ、フェリ様」

「はぁっ!?」

「へー」

「ほら。どこぞの可愛くないのと違って、セックスうまいし?」

「誰が下手くそだ、粗チン野郎」

「つまらんマグロだった癖に」

「いつの話だクソ野郎」

「ん?マーサは基本遊び相手は抱く方が多いだろ?」

「えぇ、まぁ」

「お前が抱かれてんのかよ」

「ま、こっちでの勤務にもなったし?そろそろ嫁になる気だ」

「お前の浮気癖は最早病気のレベルだろうが」

「ざーんねん。今はマーサ一筋なのよ?俺」

「信じられるかボケ」

「お前が信じなくても別にどうでもいいけどな」


バードが鼻で笑ったタイミングで、ロヴィーノが紅茶をお盆にのせて運んできた。マーサにバードのことをちょっと聞いてみようかなぁ、と思いつつ、紅茶をチビチビ飲む。まさかのクラウディオの元彼ではあるが、マーサの嫁になる気の遊び相手のようだし、2人の雰囲気から焼けぼっくいに火がつきそうな感じはまるでしないので、フェリは危機感や不快感は全然感じていない。ハリネズミなクラウディオも新鮮で少し可愛い。ジェラルドはアデルちゃんが好きみたいだし、アデルちゃんも可愛くて、少し大人しい感じだが利発な子のようだから、子供達2人には仲良くしてもらいたい。中央の街に来たばかりなら入学当初はアデルちゃんには知っている子がいない状況だっただろうし、そこらへんはジェラルドがうまーくやってくれるといい。フェリ的にはアデルちゃんが今後家に出入りするのは大歓迎だ。息子の幼い恋心は応援せねば。とはいえ、アデルちゃんを溺愛しているっぽいバードが毎回ついてくるのは、フェリは別に構わないがクラウディオが嫌がりそうだ。そこらへんのフォローはマーサにやらせるか?

午後のお茶を飲んでからバード・アデル父娘は帰っていった。ジェラルドはアデルちゃんを3日後に博物館に行こうと誘って、了承を得ていた。やったな、ジェラルド。博物館デートだ。ハリネズミ父娘はなんとなく不服そうである。ブラコンなハリネズミ2号はジェラルドがアデルちゃんにとられるのが嫌で、ハリネズミ1号はまたアデルちゃんについてきそうなバードの存在が嫌なようである。どんだけバードが嫌いなんだ。






ーーーーーー
その日の夜。
フェリはクラウディオと繋がったまま、寝転がったクラウディオの上で荒い息を整えていた。3回戦が終わり、わりと満足している。クラウディオが上半身を起こして汗に濡れたフェリの身体を優しく抱きしめ、何度も触れるだけの優しいキスをしてくれる。フェリはクラウディオの首に腕を絡めて、素直にそれを受け入れた。


「なぁ、クラウディオ。確か3日後は仕事だろ?」

「あぁ。残念ながらな」

「じゃあ、ジェラルドは俺が街に連れてくな」

「……クソ野郎がついてきてたら即帰るんだぞ」

「バードはマーサの嫁になる気なんだろ?マーサ的に原則として嫁は浮気厳禁、遊び相手は自由にしろって感じだから、本当にマーサに惚れてるんじゃないか?」

「だとしても存在そのものが不快だ」

「どんだけ嫌いなんだよ。ジェラルドはアデルちゃんが好きなんだし、今後も顔を合わせることになるんじゃないか?」

「……アデルちゃんはまぁいいけど」

「可愛くて利発な子だよな」

「まぁな」

「アンジェラが焼きもちさんなのがなー」

「お兄ちゃん大好きだからな」

「バードが仕事の時ってアデルちゃんどうしてるんだろ?」

「……2人暮らしなら家に1人なんじゃないか?」

「それはなんか可哀想だな」

「あぁ」

「なんなら休みの日はうちで遊ばせたら?ジェラルドも喜ぶし」

「クソ野郎がついてこなければな」

「本当に嫌いなんだなー」

「存在そのものが許せん」

「どんだけだよ」


むすっとした顔で言うクラウディオに少し呆れてしまう。フェリはクラウディオを宥めるように優しく頭を撫でて、何度も唇にキスをした。


「明日は俺ちょっとマーサのとこに顔出してくるな」

「分かった」

「昼には戻るし、午後から2人でデートしないか?芝居でも観に行こう。ジャンとは明後日あたりに2人で出かけるしさ。チビッ子達はロヴィーノに任せよう」

「いいな。ついでに服でも見に行くか?今年はまだフェリの服は買ってないだろ?」

「うん。あと絵の具でなくなりそうな色があるから画材屋行きたい」

「あぁ。フェリ」

「ん?」

「もう1回」

「ふふっ。いいよ」


クラウディオがフェリの唇を舌を伸ばして舐めたので、フェリも舌を伸ばしてクラウディオの舌と絡めた。身体を撫で回すクラウディオの熱い手の感触に、落ち着いてきていた身体がまた熱を持つ。腰を揺すって中のクラウディオのペニスを刺激すると、すぐにまた固く大きくなった。クラウディオが繋がったままフェリを抱えて体勢を変え、フェリの身体を優しく押し倒した。舌を絡めあいながら、ゆっくりクラウディオが腰を動かし始める。内壁を擦るクラウディオの熱いペニスの感触が堪らない。
クラウディオに揺さぶられながら、フェリは夢中で与えられる快感に浸った。
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