Last Smile

神坂ろん

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第2章:君の笑顔

12話

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「っ!」



どういう…こと…?

龍司の言っている意味が、わからない


「そんなに聞きたいなら少しだけ教えてやる。俺と湊が初めて会ったのは10年前じゃない。…それと、俺はお前の母さんと父さん、二人とも知っている。なんせ、お前の母親の百合亜は、俺の実の姉で父親の朋也は…姉さんの旦那であり俺の義理の兄だからな」


「っ!!!」


え…?



「龍司が俺の母さんと父さんの…?」

「あぁ。」

淡々と話す龍司の声には感情なんてなかった。

機械の様に、ただ言葉を発しているだけ…そう言った方が適切なのかもしれない。

こんな龍司は、今まで見た事がなかった。

だって、いつも龍司が話す声は、いつどんな時でも、誰よりも優しいのだから。



「俺が話せるのはここまでだ。…あとは…いずれ思い出す」



思い出して欲しくはないがな…。


小さく呟いた龍司の言葉は、しっかりと湊の耳に届いた。


「龍司…」

分からない。

なんで龍司は全部話してくれないの?
昔の知らない記憶は俺にとって、龍司にとって辛い事なの?




すん、と甘い香りが鼻を霞めた。

今までに嗅いだ事のない香り。

甘くて甘美な匂い。

これはどこから漂っているのだろう。


見上げた龍司の顔が、次第に二重になってぼやけていくような感じがした。
少しずつ、湊の瞼が重くなってゆく。

「龍…司…」


意識が遠のく寸前。
最後に見た龍司の顔は、今までに見た事が無い程に優しくて――







泣きそうな表情だった。





「湊、―――している…」





愛おし気に湊を見つめながら呟いた龍司の言葉は、湊に届く事はなかった。






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