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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
115話
しおりを挟む「湊…?」
「っ…」
どうしよう。
顔が熱くて、龍司の顔が見れない。
胸が今までにないくらいにドキドキしている。
初めて人を好きになって、その人と―――龍司と想いが伝わったからなのかな?
前だったらここまでにはならなかったのに、今じゃ龍司のどんな言葉にも反応をしてしまう自分がいる。
今までと同じように龍司を見ることができない…。
湊は胸元の服をきゅっと握ると同時に瞳も閉じて、落ち着こうと深呼吸をする。
なにも話そうとしない龍司の視線だけが、痛いくらいに感じられた。
静かな空間が、妙に長く感じられた時だった。
龍司がベッドに座ってくる。
ベッドが軋む音が響くと、そのまま顔を近づけてきた。
「――そんなに意識されると、襲いたくなるだろう?」
「っ…!!」
耳元で、低音で囁かれた言葉に、心臓が更に高鳴りだした。
龍司の吐息を間近で感じ、耳元で囁かれた大好きな龍司の低い声が、脳内で何度も何度も、木霊のように響き渡る。
その声は。湊の感情を乱すには充分すぎるほどだった。
胸元で握ったままの手を覆うように、龍司の大きな手が重ねられる。
湊の手とは違って、大きくて太くて、ごつごつとした男らしい手に、びくん!と肩が跳ねた。
そして同時に、指で顎を持ち上げられる。
強制的に龍司の方を向かされれば、黒曜石の様な漆黒の瞳と視線が交わる。
「――湊…」
愛しそうにうっとりとした表情で名前を呼ばれ、その切れ長の瞳から目が離せなくなってしまった。
子供の時の時点で、すでに普通の子供とは違い大人びていた龍司。
それは家柄もあるのか、育った環境のせいかは分からない。
だけど、昔から頭も良くカッコ良かった龍司は、大人になってからそのカッコ良さが増したと、何度見てもそう思ってしまう。
きっと、龍司と出会った女の人は誰だって龍司の事を好きになってしまうと思う。
もちろん女の人だけじゃない。
恋愛感情を持たない男の人でも、龍司の瞳に吸い寄せられる人もいると思う。
それ程に、彼の瞳はいろんな意味で人を惹きつける何かがある。
湊は、龍司の瞳から目を逸らせないまま、現実逃避の様にそんな事を考えてしまった。
スロー再生のように近づいてきた龍司の唇に、覚悟を決めた様に湊がゆっくりと瞳を閉じた。
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