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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
161話
しおりを挟む「龍司様、湊様は必ず自分がお守りしてみせます!もちろん龍司様もお守りします!」
ルカもアキに並んで跪くと、床についた手を振るわせながら絞り出すような声で言った。
「龍司様…どうかお気をつけくださいませ。…貴方の帰りを待ってらっしゃる湊様の為にも」
ふんわりと巻かれた長い金色の髪を靡かせてセリが跪く。
セリの姿は、いつも身に着けている白衣姿ではなく、全身黒のロングコートが目印の戦闘服を着ていた。
龍司が4人の為に用意した、4人にとって最も思い入れのある仕事着だ。
ゼロ、アキ、ルカに関しては、仕事で見る機会も多かったためさほど違和感はなかったが、セリは昔に比べると着用する事も少なくなってしまったため、少しだけ違和感を感じてしまった。
「お前ら…、わざわざ見送りなんて必要なかったんだぞ。しかも、そんな服まで着て…」
龍司は跪いた4人に視線を向けて呆れたようにため息をつくも、心配そうに向けられた視線に困ったように笑みを浮かべた。
いつもどんな時でも龍司の事を心配し、信じ、守ろうとしてくれる彼らの忠誠心の高さに関心さえしてしまう。
自分を裏切るなとは言ったが、こうもストレートに龍司に対する気持ちをぶつけてこられると、少しの照れくさい。
そして嬉しくもなってしまうのは、龍司もまた彼らを信用し、大切に想っているからだった。
「龍司様、私たちは龍司様を心配しているのです。このタイミングでの七瀬さんの依頼…どうも腑に落ちない所が多々あるんです。昔からあれほど龍司様を想っていた七瀬さんが、今回の依頼で龍司様の事を諦めるとは私には到底思えないんです…!!」
「龍司様。月嶋七瀬からの依頼…アキから聞きました。俺もアキの意見と同意見です。何か裏があるかもしれません。もしかしたら、トモヤのあの言葉となにか関係があるかもしれません!」
不安そうに告げるアキの意見を肯定するように、頷いたゼロが深紅の瞳を龍司に向ける。
地下でゼロが話していた朋也の言葉が浮かんできて、龍司の表情が少しだけ曇った。
「まさか。考えすぎじゃないのか?七瀬が俺を殺せる訳がないだろう。例え殺そうと考えていても、あいつ1人位俺だけで何とかなる」
「ですが!!」
「心配するな。仮に自分で何も出来ないからと七瀬が殺し屋を雇っていようが、そう簡単に俺は死なない。それに…その時はお前らが動いてくれるだろう?…何かあったら必ず連絡はする」
龍司はアキの前まで来ると、不安げに見上げてくるアキの肩を軽く叩き、再び歩きはじめる。
歩いていく龍司を振り返ったアキに続いて、他の3人も立ち上がり、龍司の姿を追うように振り返った。
「――もし…もし、依頼終了時刻の夜中24時を過ぎて1時間経っても俺からの連絡がなかった場合は動いてくれ。…まぁ、ないとは思うが」
龍司は歩いていた足を止め、振り返ることなく4人に向けて言った。
4人はほぼ同時に龍司の後ろ姿に向けて頭を下げた。
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