Last Smile

神坂ろん

文字の大きさ
上 下
163 / 196
第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔

161話

しおりを挟む


「龍司様、湊様は必ず自分がお守りしてみせます!もちろん龍司様もお守りします!」

ルカもアキに並んで跪くと、床についた手を振るわせながら絞り出すような声で言った。

「龍司様…どうかお気をつけくださいませ。…貴方の帰りを待ってらっしゃる湊様の為にも」

ふんわりと巻かれた長い金色の髪を靡かせてセリが跪く。

セリの姿は、いつも身に着けている白衣姿ではなく、全身黒のロングコートが目印の戦闘服を着ていた。
龍司が4人の為に用意した、4人にとって最も思い入れのある仕事着だ。

ゼロ、アキ、ルカに関しては、仕事で見る機会も多かったためさほど違和感はなかったが、セリは昔に比べると着用する事も少なくなってしまったため、少しだけ違和感を感じてしまった。


「お前ら…、わざわざ見送りなんて必要なかったんだぞ。しかも、そんな服まで着て…」


龍司は跪いた4人に視線を向けて呆れたようにため息をつくも、心配そうに向けられた視線に困ったように笑みを浮かべた。
いつもどんな時でも龍司の事を心配し、信じ、守ろうとしてくれる彼らの忠誠心の高さに関心さえしてしまう。
自分を裏切るなとは言ったが、こうもストレートに龍司に対する気持ちをぶつけてこられると、少しの照れくさい。

そして嬉しくもなってしまうのは、龍司もまた彼らを信用し、大切に想っているからだった。


「龍司様、私たちは龍司様を心配しているのです。このタイミングでの七瀬さんの依頼…どうもに落ちない所が多々あるんです。昔からあれほど龍司様を想っていた七瀬さんが、今回の依頼で龍司様の事を諦めるとは私には到底思えないんです…!!」


「龍司様。月嶋七瀬からの依頼…アキから聞きました。俺もアキの意見と同意見です。何か裏があるかもしれません。もしかしたら、トモヤのあの言葉となにか関係があるかもしれません!」

不安そうに告げるアキの意見を肯定するように、頷いたゼロが深紅の瞳を龍司に向ける。
地下でゼロが話していた朋也の言葉が浮かんできて、龍司の表情が少しだけ曇った。

「まさか。考えすぎじゃないのか?七瀬が俺を殺せる訳がないだろう。例え殺そうと考えていても、あいつ1人位俺だけで何とかなる」

「ですが!!」

「心配するな。仮に自分で何も出来ないからと七瀬が殺し屋を雇っていようが、そう簡単に俺は死なない。それに…その時はお前らが動いてくれるだろう?…何かあったら必ず連絡はする」

龍司はアキの前まで来ると、不安げに見上げてくるアキの肩を軽く叩き、再び歩きはじめる。
歩いていく龍司を振り返ったアキに続いて、他の3人も立ち上がり、龍司の姿を追うように振り返った。



「――もし…もし、依頼終了時刻の夜中24時を過ぎて1時間経っても俺からの連絡がなかった場合は動いてくれ。…まぁ、ないとは思うが」



龍司は歩いていた足を止め、振り返ることなく4人に向けて言った。
4人はほぼ同時に龍司の後ろ姿に向けて頭を下げた。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ある公爵令嬢の生涯

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,452pt お気に入り:16,126

ブラック企業勤めの俺、全部が嫌になり山奥のシェアハウスに行く

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14,549pt お気に入り:3,343

無表情令嬢は死亡フラグを回避したい!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:64

貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,722pt お気に入り:3,810

されど御曹司は愛を誓う

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:24

処理中です...