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奪われたファーストキス
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「な、なんでっ?」
「……ふ。分かりやすすぎるだろ」
碧はまた小さく吹き出した。過去の恋を知られたくらいで狼狽える必要はないのだが、碧に変な誤解を与えてしまわないか心配なのだ。名前が共通点であるという理由で、彼に興味を持ったように思われたくない。
実際、波音は目の前の碧のことを、少なからず意識し始めていた。
「着いたぞ」
「うわあ……広い」
一軒の白塗りの家に辿り着き、碧は波音を抱えたまま器用にポケットから鍵を取り出した。二階建てのようだ。碧が玄関の扉を開けて中に入り、壁のスイッチを押して照明を点ける。
十畳は軽くありそうなリビングのある一階と、吹き抜けで繋がった二階に分けられている。中の壁は外と同じく白塗りで、床は石と木材を組み合わせて造られている。
リビングの奥にはハンモックやトレーニング器具が設置されており、それ以外は物が少なく簡素な部屋だった。しかし、見たところ寝具はハンモック一つしかないようだ。波音は一体、どこで休めばいいのか。
(ま、まさか。あの狭いハンモックで一緒に寝る、とかじゃないよね……?)
波音が青ざめている間に、碧は靴を脱いで家に上がり、二階への階段を進んでいく。天井では四枚のプロペラでできた扇風機が回転しており、二人に柔らかい風を送っていた。徐々に、二階の全容が見えてくる。
一階の約三分の二の広さ。壁際に一台のベッドと簡易な収納棚、クローゼットがある。碧の普段の就寝や着替えのスペースは、こちらのようだ。
「お前には、俺のベッドを貸してやる」
「えっと、いいんでしょうか? 私、床でも構いませんけど……」
「アホか。せっかく貸してやると言ってるんだ。俺はハンモックで寝るからいい」
波音はほっと安堵の溜め息をついた。それはそうだ。出会ったばかりの男女が同衾など、あり得ない。いや、現実世界では起こり得るのかもしれないが、恋人のいたことがない波音にとっては、考えられないことなのだ。
碧は波音をベッドの縁に降ろすと、クローゼットからシャツと膝丈のズボンを取り出して、波音に手渡した。
「とりあえずは、これを着ておけ」
「ありがとうございます」
「そういえば……お前の服と靴、どうにかしないとな」
碧は、波音の格好を改めてじっと見つめた。渚に借りたシャツの下は、紺の布地に白と黄色の花柄があしらわれた水着、しかもビキニだ。膝から下は素足のまま。
観察されるのが恥ずかしくて、波音は身を硬くした。その様子に気付いた碧は、腰を屈めて波音の目を覗き込む。
「なんだ? 今更、照れてるのか?」
「その……こういうのに、な、慣れていないと言いますか……! 緊張するので、あまり見ないでください」
「慣れてない? ああ、なるほど。それで」
何かに納得したように、碧は口角を上げた。かと思いきや、波音の肩をとんっと押して、ベッドの上に倒す。スプリングの反発で波音の上半身が弾んだ瞬間、碧は波音の上に覆い被さりながら、ベッドに乗ってきた。
「……ふ。分かりやすすぎるだろ」
碧はまた小さく吹き出した。過去の恋を知られたくらいで狼狽える必要はないのだが、碧に変な誤解を与えてしまわないか心配なのだ。名前が共通点であるという理由で、彼に興味を持ったように思われたくない。
実際、波音は目の前の碧のことを、少なからず意識し始めていた。
「着いたぞ」
「うわあ……広い」
一軒の白塗りの家に辿り着き、碧は波音を抱えたまま器用にポケットから鍵を取り出した。二階建てのようだ。碧が玄関の扉を開けて中に入り、壁のスイッチを押して照明を点ける。
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(ま、まさか。あの狭いハンモックで一緒に寝る、とかじゃないよね……?)
波音が青ざめている間に、碧は靴を脱いで家に上がり、二階への階段を進んでいく。天井では四枚のプロペラでできた扇風機が回転しており、二人に柔らかい風を送っていた。徐々に、二階の全容が見えてくる。
一階の約三分の二の広さ。壁際に一台のベッドと簡易な収納棚、クローゼットがある。碧の普段の就寝や着替えのスペースは、こちらのようだ。
「お前には、俺のベッドを貸してやる」
「えっと、いいんでしょうか? 私、床でも構いませんけど……」
「アホか。せっかく貸してやると言ってるんだ。俺はハンモックで寝るからいい」
波音はほっと安堵の溜め息をついた。それはそうだ。出会ったばかりの男女が同衾など、あり得ない。いや、現実世界では起こり得るのかもしれないが、恋人のいたことがない波音にとっては、考えられないことなのだ。
碧は波音をベッドの縁に降ろすと、クローゼットからシャツと膝丈のズボンを取り出して、波音に手渡した。
「とりあえずは、これを着ておけ」
「ありがとうございます」
「そういえば……お前の服と靴、どうにかしないとな」
碧は、波音の格好を改めてじっと見つめた。渚に借りたシャツの下は、紺の布地に白と黄色の花柄があしらわれた水着、しかもビキニだ。膝から下は素足のまま。
観察されるのが恥ずかしくて、波音は身を硬くした。その様子に気付いた碧は、腰を屈めて波音の目を覗き込む。
「なんだ? 今更、照れてるのか?」
「その……こういうのに、な、慣れていないと言いますか……! 緊張するので、あまり見ないでください」
「慣れてない? ああ、なるほど。それで」
何かに納得したように、碧は口角を上げた。かと思いきや、波音の肩をとんっと押して、ベッドの上に倒す。スプリングの反発で波音の上半身が弾んだ瞬間、碧は波音の上に覆い被さりながら、ベッドに乗ってきた。
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