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『睡蓮』と幸せのピエロ
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(いや、もしかしたら、この国では服が高価ってこともあるかもしれないし……)
碧はベンチに座って待っておくとのこと。長居はしないように言いつけられ、波音は一人、気になるお店から回ってみることにした。
どの店員も、波音の今の格好には違和感があるようで、店に入ってくるなりちらっと視線を寄越す。波音も気が気ではなくて、早く決めて買ってしまおうと、三店舗目で下着も併せて数着の服と靴を二足買った。
買ったものを着て帰っても問題ないとのことで、試着室を借りて着替え、もともと着ていた碧の服とサンダルは、丁寧に紙袋に入れた。下着は至って普通のシンプルなものを選んだ。
ただ、驚くべきはそれらの値段だ。波音の予想は裏切られ、一着あたりの値段が二桁から三桁と、かなり安価だ。だからと言って素材が安っぽいわけでもなく、縫い目や刺繍は丁寧だし、デザインも可愛い。
碧から預かった金額で、一体どれほど多くのものが買えるのか。紙幣一枚で、多くのお釣りが返ってきた。
(碧さんって、実はもの凄くお金持ち……?)
波音はぽかんとしながら、店を後にした。この財布は、曲芸団の団長としての稼ぎか、それとも皇族の財産か。しかし、碧の性格なら、血の繋がっていない皇族の富を、自分のもののように振る舞うことはしないだろう。きっと前者だ。
(例えるなら、手が届きそうで届かない王子様、なんだろうなぁ)
後々の請求が怖いので、必要最低限の分だけ揃えて、波音は碧の元へと戻った。青いカットソーと白のショートパンツ、花型コサージュのついたサンダル姿になった波音を見て、碧は一時停止された映像のように固まっている。
「お財布、お借りしました。ありがとうございました。領収書は中に入れてありますので」
「……あ、ああ」
「……? もしかして、似合っていませんか?」
「いや。いいんじゃないか?」
波音の不安をよそに、碧は頬を赤らめてそっぽを向いた。似合っていない場合、碧ならはっきり「ダサい」「鏡をちゃんと見てこい」などと言うはずだ。そうでないということは、素直に喜んでもいいらしい。
「ありがとうございます」
「……別に褒めてない」
「私にはそう聞こえたので」
「生意気言うな。倍にして請求するぞ」
「いたっ」
昨日と同じく頭頂部に軽い手刀を食らい、波音は黙った。しかし、碧の精一杯の照れ隠しがなんだか可愛らしく、にやにやするのは止められなかった。
碧はベンチに座って待っておくとのこと。長居はしないように言いつけられ、波音は一人、気になるお店から回ってみることにした。
どの店員も、波音の今の格好には違和感があるようで、店に入ってくるなりちらっと視線を寄越す。波音も気が気ではなくて、早く決めて買ってしまおうと、三店舗目で下着も併せて数着の服と靴を二足買った。
買ったものを着て帰っても問題ないとのことで、試着室を借りて着替え、もともと着ていた碧の服とサンダルは、丁寧に紙袋に入れた。下着は至って普通のシンプルなものを選んだ。
ただ、驚くべきはそれらの値段だ。波音の予想は裏切られ、一着あたりの値段が二桁から三桁と、かなり安価だ。だからと言って素材が安っぽいわけでもなく、縫い目や刺繍は丁寧だし、デザインも可愛い。
碧から預かった金額で、一体どれほど多くのものが買えるのか。紙幣一枚で、多くのお釣りが返ってきた。
(碧さんって、実はもの凄くお金持ち……?)
波音はぽかんとしながら、店を後にした。この財布は、曲芸団の団長としての稼ぎか、それとも皇族の財産か。しかし、碧の性格なら、血の繋がっていない皇族の富を、自分のもののように振る舞うことはしないだろう。きっと前者だ。
(例えるなら、手が届きそうで届かない王子様、なんだろうなぁ)
後々の請求が怖いので、必要最低限の分だけ揃えて、波音は碧の元へと戻った。青いカットソーと白のショートパンツ、花型コサージュのついたサンダル姿になった波音を見て、碧は一時停止された映像のように固まっている。
「お財布、お借りしました。ありがとうございました。領収書は中に入れてありますので」
「……あ、ああ」
「……? もしかして、似合っていませんか?」
「いや。いいんじゃないか?」
波音の不安をよそに、碧は頬を赤らめてそっぽを向いた。似合っていない場合、碧ならはっきり「ダサい」「鏡をちゃんと見てこい」などと言うはずだ。そうでないということは、素直に喜んでもいいらしい。
「ありがとうございます」
「……別に褒めてない」
「私にはそう聞こえたので」
「生意気言うな。倍にして請求するぞ」
「いたっ」
昨日と同じく頭頂部に軽い手刀を食らい、波音は黙った。しかし、碧の精一杯の照れ隠しがなんだか可愛らしく、にやにやするのは止められなかった。
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