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第2章

入学

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時間は流れ、私は16歳になりまして。この春見事に、魔法学校へと入学を果たした。
意外にも…ティアニー伯爵は私に接触しなかった、シオウにもね。口封じに来ると思ったんだけど…。
来年はルージュが入学するだろうな…めんど。


「セレスト!何ボケッとしているんだ、行くぞ」

「はーい」

そしてエルム。彼は15歳なんだが…これがまあ背も伸びちゃって。可愛さは彼方へとすっ飛んで行き、立派な男性となってしまった…。まあ弟みたい~なのは変わらないけど。
で、やはり口調が乱雑だ。特に私に対して、んだこのガキ…?と何度思った事か。

「(ああもう、こんな道のど真ん中で!可愛い顔してぽけっと突っ立って!!他の男が惚れたらどうすんだ、危なっかしい!!)」

ほら、こうやってプンプン怒りながら私の腕を引いて歩いちゃうんだから。
でも…決して強引ではなく、優しいものだけど。チラッと横を見上げれば、深緑の髪を靡かせる美青年が…本当、格好よくなったなあ…。


私も結構成長して、そこそこイケてるお嬢様だと思うけど。
ちなみに髪は…伸ばすのやめた。眞凛が似合うって言ってくれた、ウルフカットにしてるんだ。私はこれでいいの!後ろは少し伸ばしてるしね。


私達は今、入学式も終わって校舎へ続く道を歩いている。桜の花びらが舞って、幻想的…

 ビュゴオォッ!

「きゃっ!?」

「ぶっっっ!!?」

強い風が吹き、危うくエルムにサービスするところだった!
制服の膝丈スカートを咄嗟に押さえたので無事だったが、エルムはそんな私に釘付けだ。

「……今、期待しました?」

「だ……誰がっ!!!(くそ、惜しかった…!)」

そんな真っ赤な顔で否定しても、説得力ありませんよ。いくつになっても初心な坊っちゃんよのぉ~。




「セレスト。髪に花びらが付いてるよ」

「え…オースティン様!」

エルムを揶揄っていたら、後ろから誰かが私の髪に触れた。
これまた顔面麗しい王子様、オースティン様だ。彼がふっと微笑むと、令嬢はほぼ間違いなく恋に落ちる。
え、私は平気かって?なんともないんだわこれが。彼を恋愛対象として見ていないからだろうね。

アガット様もあれから、何度か誘拐未遂とかあったけど…お元気にしているので。オースティン様もネガティブにならず、爽やかな青年に成長した。

「2人共入学おめでとう。よかったら校舎を案内しようか?」

「「ありがとうございます」」

是非お願いしようと思ったら…。



「セレストーーーっ!!!久しぶり、会いたかったーーー!!!!」

「おぐっふぃっ!!!」

今度は校舎の中から、誰かが弾丸タックルかましてきやがった…!!
私は吹っ飛ばされたものの、風か何かに優しく受け止められた…魔法かな?

ってこの白の長髪、中性的な美しさを持つ彼は…!!

「オブシディアンくん…!久しぶりー!!」

「うん!!なんで同い年なのに、去年来なかったんだよー!!オレここで会えると思ってたのにー!!!」

「いやあ、エルムに合わせたから…こらあっ!!?」

きゃーーーっ!?ちょっと…!オブシディアンくんが、私の胸に頬擦りしてやがる…!!
私は空中にふよふよ浮き、オブシディアンくんはそんな私に乗っかっている状態。つまり、抱き合っているのだ!!

「なんだお前はーーーっ!!!セレストから離れろっ、この野郎!!!」

「兄さん、このお馬鹿!!!」

エルムはブチ切れてオブシディアンくんを蹴っ飛ばし。転がったオブシディアンくんは、パールちゃんが胸ぐら掴んで往復ビンタを…ってアラ?

「パールちゃーん!」

「セレストちゃーん!久しぶりっ!」

そう、清楚系黒髪ロングのパールちゃん!そっか、彼女も魔力持ちだったんだね!すっかり美人さんになってー!
私女の子の知り合いいなかったから、すっごく嬉しい!2人で両手を取り合って再会を喜ぶ。


「おいセレスト!!この変態白髪男は知り合いなのか!?」

「なーセレスト、このキレキレ坊っちゃん知り合い?」

「俺は婚約者だっ!!!」

「はー?オレも結婚の約束してますけどー?」

「は………?おい…セレスト…?」

「「「………………」」」


これは…賑やかな毎日になりそうだなあ!(現実逃避)





その後5人で改めて自己紹介。結婚の誤解は無事解けた。

「18歳になったら結婚しようって言ったじゃん!?」

「言ってない!!」

「駄目よ、兄さん。そろそろ大人になりなさい」

「大人に…?ああ、近所の兄ちゃんが言ってた『卒業』ってやつか!!」

「?あのお兄さん、学校なんて通ってないじゃない?」

それ…多分、違う…。
双子はオースティン様と同じ学年だけど、会話した事はないんだと。
この学校は各学年クラスは1つ。そもそもの生徒数が少ないからね。私の学年も11人だし。


で…やっぱり『運命乙女』のモデルになったであろう人達がチラホラいるわ。あ、あの先生隠しキャラだ!
若い男性はほぼ全員攻略キャラだ。例外なのは、地味めな人と太っちょさん。神様の好みで弾かれたんですね。
あとイケメンでも3年生っぽい人。ルージュとの接点が無いからだろうな。


さて…1年生の教室まで、オースティン様に送ってもらい。後でお茶しようね、という約束をして別れた。

ガラリとドアを開けると、中にいた数人がこっちに注目した。仲良くなれるかな…?特に女子。
この学校では身分は関係無い。王子も平民も、皆生徒だ。ここで社交界のマナーは意味をなさない。それでも大体気にするもんだけどね、仕方ない。
だからクラスメイトも公子のエルムには、なんて声を掛けていいか迷ってるみたい。


友達作りは追々か~…と席はどこだろ。場所決まってないのかな…?前の方の席に、エルムと並んで座った。
段々と人が増えて、全員揃った。あとは担任の先生待ちなんだけど…まだかな?もう鐘は鳴ったぞ?



 ガラッ



「ひえ~、揃ってた。いけね、学長にシメられる。
あー、諸君。先生が遅刻した事、秘密にするように。オッケー?」

「「「…………………」」」


小走りで入ってきたのは…大きな黒縁眼鏡で、肩くらいまでありそうな黒い髪を1つに縛り。ダボダボの白パーカーを着た、若い男性…?

生徒達は絶句なんだが、先生と思しき男性は構わず教壇に立つ。

「あー、うーん。新入生諸君、入学おめでとさん。先生は君達の担任の、P・Cでーす」

パソコンかな?…あ、イニシャルか。何故本名を隠す。


「せんせー!本名はー?」

おっと、男子生徒がクラスメイトを代表して質問した。手を上げたのは茶髪の…ああ、ゲームでお調子者キャラの人だ。

「あ?残念ながら男の質問は受け付けねえ。女子はいつでもウエルカムだ」

「なんだそれ!?」

え~…?ちろっと教室を見渡すが、女子は私含め4人。3人は動かなそう…仕方ない、ここは私が。おずおずと手を上げてみる。

「先生~…本名は教えてくれないんですか?」

「別に隠している訳でもないんだがな。まあ性癖だと思ってくれ」

先生はキリッ!とハキッ!と答えてくれた。なんだこの人。
生徒達の胡乱な視線などなんのその。先生は話を続ける。


「んで、P・C先生の担当は技術な。魔導具の作製が主な授業だ。
先生は大体職員室か実験室にいるので、質問があったら訪ねるように。女子はいつでもオッケー、男子は前日にアポ取れ」

「贔屓だー!?」

あっはっはっ!!と茶髪の生徒が笑う。他数人もくすくすと…私も。
何この人、いっそ清々しいな!!

「じゃあ次は君らに自己紹介してもらうぞ。
先に言っとくが、爵位とかそういうの要らんから。この学校においては…身分も年齢も性別も、全て平等だ。あ、男は女子に優しくしろよ?そこはあくまで立ち位置の話な。
少なくとも教師陣は、君らを差別は一切しない。そのつもりでな」

ごくり…一瞬沈黙が。先生っぽい事言うじゃん…。


「じゃあ端から行くぞ。名前と…そうだな。まあ将来の夢とかこの学校でやりたい事、その辺言っとけ。
ただし女子は追加で好きな食べ物、嫌いな食べ物、趣味、休日の過ごし方、好きなタイプを教えなさい」

「思いっきり男女差別してんじゃん!!」


またも男子生徒の声が響いた。




「んじゃ俺から!クリフ・ジャガーです、よろしく!」

さっきから賑やかな彼が先発か。両手の親指を立てて自分を指し、ウインクしてみせた。まさにお調子者。

「やりたい事とかー、この学校で見つけたいと思ってまっす!!趣味はー」

「はいそこまで!男の情報はそれ以上いらん、次…」

「…俺ってばねーちゃん3人いるんだよなー」ぼそっ

「よしクリフ・ジャガー。続けたまえ。あ、次の人からは姉妹構成も教えなさい。男兄弟の報告はいらん」真剣な顔

ぶふっ!!!ジャガーくん…もう先生の扱い方理解してる…!
そんなこんなで自己紹介は進み、次は私だ!!立ち上がり…女子の一番手じゃねーか!!


「セレスト・レインブルーです。色んな魔法を学びたいです。えーと…それで…」

「うんうん」期待に満ちた目

「えー…好きな食べ物はお肉。嫌いなのは特に無し。趣味は…釣り、というか自然遊び?休日は勉強したり、料理したり、外で遊んだり。好きなタイプは…秘密で!!それと姉妹はいません」

こんなとこかな?パチパチと拍手が鳴り響き、私は椅子に座った。

「アウトドア派か。先生の家色んな植物育ててんだけど、遊び来ない?」

「行かん!!!!」

「君にゃ聞いてねえ。まあいい、じゃ次」

先生に促され、額に青筋を浮かべたエルムがガタンッ!と席を立つ。


「エルム・ブロウラン!!自身の糧にする為魔法を学ぶ!!
言っとくがこのセレストは俺の婚約者だ、誰も手を出すなよ!!!」

そんな宣言すんな!?エルムは私の肩に手を置いて抱き寄せた。
ヒューヒュー!とか聞こえる…なんか顔が熱い!
だが先生の反応は…眉間にめっちゃ皺寄せて、口をへの字に曲げた。


「あ…?婚約者だと…先生は認めねえぞ…?」

「何故お前に許可を得る必要がある!?」

「先生にお前はないだろオイ」

いやあ、楽しいクラスになりそうだわ~。



……それにしても。P・C先生の顔をじっと見る。
眼鏡で分かりづらいけど…なんだろう、どこか…既視感?なんだこれ。
机に片肘を突き、その手に顎を乗せて観察する。

「…ん?どうしたんだ、セレスト」

「………先生が気になって…」

「は……!?」


私、会った事でもあるのかな。いや…あんな強烈な人、忘れないと思うんだけど。
てかなんでゲームにいなかったの?あのキャラだったら、神様も絶対ネタにすると思うのに。
…本来の運命では彼は、教師じゃなかったとか…?


あっ。じっと見てたら目が合った。でもすぐに逸らされて…うーん。

「セレスト…!お前、あんなのがいいのか…!?」


んっ!?なんでエルムは涙目で、真っ青な顔をしてるのかな!?


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