Ωの弟が後天性メロαになるなんて聞いてない
『Ωの弟が後天性メロαになるなんて聞いてない』
朝倉湊、十六歳。生まれながらのαである彼は、自分の容姿にも能力にも絶対的な自信を持つ、生粋のナルシストてある。
そんな湊には、一卵性双生児の弟、朝倉奏という存在がいた。
自分と寸分違わぬ顔を持つ奏のことを、湊は幼い頃から複雑な心境で意識していた。そんな二人には、ある決定的な違いがあった。
優秀なαとして生まれた湊に対し、奏は社会的に弱い立場とされるΩだったのだ。
同じ顔、同じ血を分けた双子でありながら、なぜ弟だけがΩなのか。
湊はその事実を受け入れられず、奏に対して傲慢で辛辣な態度を取り続けてきた。けれど、どれほど酷い言葉を浴びせても、奏は一度として兄を責めようとはしなかった。傷つきながらも穏やかに微笑み、湊の身勝手ささえ受け入れてしまう。
そんな弟の優しさが、湊にはどうしようもなく腹立たしかった。
高校卒業後の大学生になってからも、同じ大学で、同じ家で暮らす二人。湊は奏を疎ましく思いながらも、誰よりその存在を意識し、弟が自分以外の誰かに笑いかけることすら面白くない。だが、その感情の正体を認めることだけは、彼の肥大した自尊心が許さなかった。
ところがある日、二人の関係を根底から覆す出来事が起こる。
Ωだった奏が、後天的にαへと変化してしまったのだ。
それも、ただのαではない。容姿も振る舞いも完璧で、相手を甘やかし、包み込むような愛情を惜しみなく注ぐ、いわゆる「メロα」になってしまったのである。
これまで自分より下にいるはずだった弟が、同じαとして目の前に立っている。それだけでも湊には耐え難いというのに、奏は兄に対して真っ直ぐな恋愛感情を向け、「俺の番になって」と迫り始める。
拒絶する湊。しかし奏は怒ることも、無理に従わせようとすることもない。ただ変わらぬ優しさで、湊の心に踏み込んでくる。
自分は弟を愛してなどいない。そう言い聞かせるほど、奏への執着は醜く膨れ上がっていく。弟を独占したい。誰にも渡したくない。けれど、そんな感情を抱く自分自身が許せない。
愛情を認められない兄と、傷つきながらも兄を愛し続ける弟。
やがて湊の歪んだ自尊心は限界を迎え、これまで必死に守ってきた虚勢が崩れ始める。
――お前のせいで、俺はこんな醜い感情に支配されるようになった。
それは弟への憎悪なのか。それとも、自分でも制御できないほど深い愛情の裏返しなのか。
最後に残るのは、優越でも支配でもない、たった一つの切実な願いだった。
傲慢で不器用な兄と、どこまでも優しく、時に残酷な弟。
鏡合わせの双子が織りなす、執着と依存、愛情と憐憫が複雑に絡み合う、歪で純粋なオメガバースBL。
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優秀なαとして生まれた湊に対し、奏は社会的に弱い立場とされるΩだったのだ。
同じ顔、同じ血を分けた双子でありながら、なぜ弟だけがΩなのか。
湊はその事実を受け入れられず、奏に対して傲慢で辛辣な態度を取り続けてきた。けれど、どれほど酷い言葉を浴びせても、奏は一度として兄を責めようとはしなかった。傷つきながらも穏やかに微笑み、湊の身勝手ささえ受け入れてしまう。
そんな弟の優しさが、湊にはどうしようもなく腹立たしかった。
高校卒業後の大学生になってからも、同じ大学で、同じ家で暮らす二人。湊は奏を疎ましく思いながらも、誰よりその存在を意識し、弟が自分以外の誰かに笑いかけることすら面白くない。だが、その感情の正体を認めることだけは、彼の肥大した自尊心が許さなかった。
ところがある日、二人の関係を根底から覆す出来事が起こる。
Ωだった奏が、後天的にαへと変化してしまったのだ。
それも、ただのαではない。容姿も振る舞いも完璧で、相手を甘やかし、包み込むような愛情を惜しみなく注ぐ、いわゆる「メロα」になってしまったのである。
これまで自分より下にいるはずだった弟が、同じαとして目の前に立っている。それだけでも湊には耐え難いというのに、奏は兄に対して真っ直ぐな恋愛感情を向け、「俺の番になって」と迫り始める。
拒絶する湊。しかし奏は怒ることも、無理に従わせようとすることもない。ただ変わらぬ優しさで、湊の心に踏み込んでくる。
自分は弟を愛してなどいない。そう言い聞かせるほど、奏への執着は醜く膨れ上がっていく。弟を独占したい。誰にも渡したくない。けれど、そんな感情を抱く自分自身が許せない。
愛情を認められない兄と、傷つきながらも兄を愛し続ける弟。
やがて湊の歪んだ自尊心は限界を迎え、これまで必死に守ってきた虚勢が崩れ始める。
――お前のせいで、俺はこんな醜い感情に支配されるようになった。
それは弟への憎悪なのか。それとも、自分でも制御できないほど深い愛情の裏返しなのか。
最後に残るのは、優越でも支配でもない、たった一つの切実な願いだった。
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