21 / 297
21.キャッキャ(2)
しおりを挟む
「このあと会同では、よろしくお願いいたします」
と、湯船の中を泳ぐようにして、俺の側に来たお姉さんが言った。澄んだ水色の瞳と黒髪、それに大きな胸が印象的なお姉さん。
「あ、えっと……」
「し……、司空のミンリンと申します」
と言う、お姉さんの表情には、一緒に入浴していることを恥ずかしがってるだけじゃなくて、本当は人見知りなんだろうなぁっていう困惑が浮かんでた。
あれ? シクウ……、シクウ……、司空ってなんだっけ?
――土木と治安を司る【司空】。
というシアユンさんの声が蘇る。ああ! お城を治める4人の責任者の1人……って、ええっ!? 偉いさんの中に『純潔の乙女』がいるなんて聞いてませんけど――? おっさんばかりだと思い込んでました。
「ま……、まずは、ご挨拶をと思いまして……」
「それは、ご丁寧に……」
と、真っ直ぐミンリンさんの方に向き直って頭を下げると、視界に豊かな胸元がドンっと飛び込んできた。慌てて視線を逸らすと、女子たちは各々楽しそうにキャッキャ話してる。そうですよね。マレビトだかシキタリだか関係なく、一緒にお風呂入るの楽しいですよね。
「……司空としては年若とお思いかもしれませんが、ここにいる者たちの中では最も年嵩です」
と、ミンリンさんは恥ずかしげに頬を赤くした。人見知りっていうか、陰キャ感がある。ちょっと無理して挨拶に来てくれたんだろうなって雰囲気に、少し応援したい気持ちが湧いてしまう。
「土木や建築の学問が好きで熱中しているうちに、そういうコトからは縁遠く過ごしてしまい、純潔の身のまま27歳になっておりました」
「そ、そうですか……」
土木好き黒髪インテリ巨乳陰キャ女子……。マンガやアニメで観れば俺好みのキャラな気がするけど、実際に対面すると照れの方が先に立つ。全裸だし……。
え? 俺このあと、このお姉さんと真面目な会議で一緒するの? 初対面が全裸の女の人と? ていうか、ここにいる女子全員と、そういうことになるの?
最初に望楼で観戦したとき、目の前にいるシアユンさんの姿と、風呂場で全裸の姿を重ねてしまって、猛烈に照れまくった自分を思い出す。
せめて純潔乙女会議のとき、全員と挨拶しておけば良かった……。あのとき認識できてたのはシアユンさんとイーリンさんだけ。あとは『女子』って括りで見てた。
でも、もう遅いな。恥ずかしがりながらも、だいたいみんなの見ちゃったよ。
服着て会ったときに、みっともなく狼狽えることがないようにだけ、気を付けよう。「あ! 今、この人、私の裸を思い出してる!」とか察せられたら、恥ずかしくて死んでしまうわ。
「ほ、ほかに『三卿一亭の会同』っていうのに出席する人はいます? ここに」
と、ミンリンさんに尋ねた。ほかにもいるんなら、先に聞いておきたい。心の準備として。
「いえ。ほかの者は皆、男性でございますが……」
「あ、なら、いいんです。すみません。変なこと聞いて」
男性! 男! 男と会いたいなんて、初めて思ったかもしれない。
楽しげにキャッキャと入浴してる1クラス分くらいの女子たちの中で、ポツンと俺一人が男子。年頃男子として夢のようなシチュエーションにいるに違いないけど、俺には少し刺激が強すぎる。情けないことに。
ただ――、笑顔あふれる広い湯船の中で、黄色い髪をした女の子だけが独り、無表情に浸かっているのが気になっていた。
と、湯船の中を泳ぐようにして、俺の側に来たお姉さんが言った。澄んだ水色の瞳と黒髪、それに大きな胸が印象的なお姉さん。
「あ、えっと……」
「し……、司空のミンリンと申します」
と言う、お姉さんの表情には、一緒に入浴していることを恥ずかしがってるだけじゃなくて、本当は人見知りなんだろうなぁっていう困惑が浮かんでた。
あれ? シクウ……、シクウ……、司空ってなんだっけ?
――土木と治安を司る【司空】。
というシアユンさんの声が蘇る。ああ! お城を治める4人の責任者の1人……って、ええっ!? 偉いさんの中に『純潔の乙女』がいるなんて聞いてませんけど――? おっさんばかりだと思い込んでました。
「ま……、まずは、ご挨拶をと思いまして……」
「それは、ご丁寧に……」
と、真っ直ぐミンリンさんの方に向き直って頭を下げると、視界に豊かな胸元がドンっと飛び込んできた。慌てて視線を逸らすと、女子たちは各々楽しそうにキャッキャ話してる。そうですよね。マレビトだかシキタリだか関係なく、一緒にお風呂入るの楽しいですよね。
「……司空としては年若とお思いかもしれませんが、ここにいる者たちの中では最も年嵩です」
と、ミンリンさんは恥ずかしげに頬を赤くした。人見知りっていうか、陰キャ感がある。ちょっと無理して挨拶に来てくれたんだろうなって雰囲気に、少し応援したい気持ちが湧いてしまう。
「土木や建築の学問が好きで熱中しているうちに、そういうコトからは縁遠く過ごしてしまい、純潔の身のまま27歳になっておりました」
「そ、そうですか……」
土木好き黒髪インテリ巨乳陰キャ女子……。マンガやアニメで観れば俺好みのキャラな気がするけど、実際に対面すると照れの方が先に立つ。全裸だし……。
え? 俺このあと、このお姉さんと真面目な会議で一緒するの? 初対面が全裸の女の人と? ていうか、ここにいる女子全員と、そういうことになるの?
最初に望楼で観戦したとき、目の前にいるシアユンさんの姿と、風呂場で全裸の姿を重ねてしまって、猛烈に照れまくった自分を思い出す。
せめて純潔乙女会議のとき、全員と挨拶しておけば良かった……。あのとき認識できてたのはシアユンさんとイーリンさんだけ。あとは『女子』って括りで見てた。
でも、もう遅いな。恥ずかしがりながらも、だいたいみんなの見ちゃったよ。
服着て会ったときに、みっともなく狼狽えることがないようにだけ、気を付けよう。「あ! 今、この人、私の裸を思い出してる!」とか察せられたら、恥ずかしくて死んでしまうわ。
「ほ、ほかに『三卿一亭の会同』っていうのに出席する人はいます? ここに」
と、ミンリンさんに尋ねた。ほかにもいるんなら、先に聞いておきたい。心の準備として。
「いえ。ほかの者は皆、男性でございますが……」
「あ、なら、いいんです。すみません。変なこと聞いて」
男性! 男! 男と会いたいなんて、初めて思ったかもしれない。
楽しげにキャッキャと入浴してる1クラス分くらいの女子たちの中で、ポツンと俺一人が男子。年頃男子として夢のようなシチュエーションにいるに違いないけど、俺には少し刺激が強すぎる。情けないことに。
ただ――、笑顔あふれる広い湯船の中で、黄色い髪をした女の子だけが独り、無表情に浸かっているのが気になっていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
403
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる