22 / 297
22.大人の会議(1)
しおりを挟む
小太りのおっさんがニコニコしてるのに癒される日が来るとは。俺まだ18やぞ。
城にいる純潔の乙女全員と入浴という、嬉しいんだか拷問なんだか分からないイベントの後、さすがに寝室に忍び込んでくる女子はおらず、異世界に来て初めてグッスリ眠れた。
里佳と温泉に浸かってるという夢で飛び起きてしまったけど、よく寝られたお蔭で頭はスッキリした。
日本にいるとき、里佳を相手にエロい夢なんか見たことなかったのに、次々に起きる色んな刺激が脳内で処理し切れてないんだろう。そういえば、卒業式のあと家族で温泉に行くって言ってたな。今頃、どうしてるんだろう……。
とか考えてると、シアユンさんが迎えに来てくれて、城を治める最高幹部が集まる『三卿一亭の会同』に向かった。
案内された部屋で、円卓の一番上座に座らされると、最初に目に入ったのが小太りのおっさんだ。
和むわぁ。
ほかに眼つきの鋭いおっさんが2人と……、ミンリンさん。ああ。ダメだ。やっぱり風呂場での姿がポンッと頭に浮かんで離れない。
「では最初に、私から皆様をご紹介させていただきます」
と、俺の横に立ってるシアユンさんが言った。うん。ちょっと気合入れますね。椅子に座ってる俺の頭の真横の辺りにちょうど、シアユンさんの細い腰が来てるの意識してしまいますけど。
「マレビト様の左にお座りなのが剣士長のフェイロン様です」
赤茶けた長い髪に黒い髭、こけた頬に鋭い眼つきのおっさんが軽く頭を下げた。剣士団の長って聞いてたから、もっと貫禄ある感じの人を想像してたけど、神経質そうで剣の達人っぽい雰囲気だ。
「6年前に侵攻してきた北の蛮族との戦でご活躍され、常に蛮族たちの返り血で真っ赤に染った姿から『赤の斬り鬼』の二つ名が王都に轟いた剣豪でいらっしゃいます」
おお。強いんだ。そりゃそうか。イーリンさんたち剣士を束ねてるんだもんな。年は親父と同じくらいかな? だとすると40代前半ってところ。
「右にお座りなのが司徒のウンラン様です」
小太りのおっさん! ニコニコしてて和みます。
「農業と治政を司られております」
「と言いましてもな、今は農地には立ち入れず、商いも出来ませんから、食糧と資材を管理するのが主な仕事になっておりますわい」
と、ウンランさんが黄土色の髪の毛と髭を揺らして、柔和な口調で笑った。笑うと皺が目立つ。思ったよりお爺さんなのかもしれない。
「ウンラン様は初代マレビト様の系譜に連なり、子爵の爵位をお持ちです」
おお! 爵位とかあるのか。ん? 初代マレビトの系譜? そうか。76人も子供つくったって言ってたな。子孫は貴族になってるのか。
「なに。初代様の系譜といっても傍流も傍流。王のお情けで授爵しただけですわい」
と、ウンランさんはカラカラと笑った。ああ、こんな感じの数学の先生いたなぁ。定年間際の。やる気が有るんだか無いんだか分からない、自然体なスタンスが心地よかった。
「マレビト様から見て左前方、フェイロン様の隣にお座りなのが司空のミンリン様です」
し、知ってます……。シルエットがハッキリ分かる紺色のドレスがお似合いですね。編み込みでアップにまとめた黒髪もツヤがあって素敵です。と、今目にしている姿だけを見ようとするのだけど、どうしても朝の風呂場での姿が頭から消えてくれない。
「土木と治安を司られ、城内の建造物を一手に担われております。王都では土木建築に最も通暁した女性として知る人ぞ知る存在でしたが、活躍の場を求めてジーウォへの赴任を志願されました」
ミンリンさんは、少しはにかんだ笑みを浮かべて頭を下げた。紺のドレスにスッポリと覆われてる大きな胸が円卓に乗りそう。
いかん、いかん。どこ見てるんだ。
「ち、治安の分野は門外漢で……、衛士長に任せ切りだったのですが、人獣が現われた最初の晩に亡くなってしまい……、今は村長のフーチャオ殿に助けていただきながら、なんとか務めております……」
と、ミンリンさんは最後に残った、もう一人の眼つきの鋭いおっさんの方を見た。
村長っていうよりは、軍人さんかスパイのような、只者ではない雰囲気を漂わせてる――。
城にいる純潔の乙女全員と入浴という、嬉しいんだか拷問なんだか分からないイベントの後、さすがに寝室に忍び込んでくる女子はおらず、異世界に来て初めてグッスリ眠れた。
里佳と温泉に浸かってるという夢で飛び起きてしまったけど、よく寝られたお蔭で頭はスッキリした。
日本にいるとき、里佳を相手にエロい夢なんか見たことなかったのに、次々に起きる色んな刺激が脳内で処理し切れてないんだろう。そういえば、卒業式のあと家族で温泉に行くって言ってたな。今頃、どうしてるんだろう……。
とか考えてると、シアユンさんが迎えに来てくれて、城を治める最高幹部が集まる『三卿一亭の会同』に向かった。
案内された部屋で、円卓の一番上座に座らされると、最初に目に入ったのが小太りのおっさんだ。
和むわぁ。
ほかに眼つきの鋭いおっさんが2人と……、ミンリンさん。ああ。ダメだ。やっぱり風呂場での姿がポンッと頭に浮かんで離れない。
「では最初に、私から皆様をご紹介させていただきます」
と、俺の横に立ってるシアユンさんが言った。うん。ちょっと気合入れますね。椅子に座ってる俺の頭の真横の辺りにちょうど、シアユンさんの細い腰が来てるの意識してしまいますけど。
「マレビト様の左にお座りなのが剣士長のフェイロン様です」
赤茶けた長い髪に黒い髭、こけた頬に鋭い眼つきのおっさんが軽く頭を下げた。剣士団の長って聞いてたから、もっと貫禄ある感じの人を想像してたけど、神経質そうで剣の達人っぽい雰囲気だ。
「6年前に侵攻してきた北の蛮族との戦でご活躍され、常に蛮族たちの返り血で真っ赤に染った姿から『赤の斬り鬼』の二つ名が王都に轟いた剣豪でいらっしゃいます」
おお。強いんだ。そりゃそうか。イーリンさんたち剣士を束ねてるんだもんな。年は親父と同じくらいかな? だとすると40代前半ってところ。
「右にお座りなのが司徒のウンラン様です」
小太りのおっさん! ニコニコしてて和みます。
「農業と治政を司られております」
「と言いましてもな、今は農地には立ち入れず、商いも出来ませんから、食糧と資材を管理するのが主な仕事になっておりますわい」
と、ウンランさんが黄土色の髪の毛と髭を揺らして、柔和な口調で笑った。笑うと皺が目立つ。思ったよりお爺さんなのかもしれない。
「ウンラン様は初代マレビト様の系譜に連なり、子爵の爵位をお持ちです」
おお! 爵位とかあるのか。ん? 初代マレビトの系譜? そうか。76人も子供つくったって言ってたな。子孫は貴族になってるのか。
「なに。初代様の系譜といっても傍流も傍流。王のお情けで授爵しただけですわい」
と、ウンランさんはカラカラと笑った。ああ、こんな感じの数学の先生いたなぁ。定年間際の。やる気が有るんだか無いんだか分からない、自然体なスタンスが心地よかった。
「マレビト様から見て左前方、フェイロン様の隣にお座りなのが司空のミンリン様です」
し、知ってます……。シルエットがハッキリ分かる紺色のドレスがお似合いですね。編み込みでアップにまとめた黒髪もツヤがあって素敵です。と、今目にしている姿だけを見ようとするのだけど、どうしても朝の風呂場での姿が頭から消えてくれない。
「土木と治安を司られ、城内の建造物を一手に担われております。王都では土木建築に最も通暁した女性として知る人ぞ知る存在でしたが、活躍の場を求めてジーウォへの赴任を志願されました」
ミンリンさんは、少しはにかんだ笑みを浮かべて頭を下げた。紺のドレスにスッポリと覆われてる大きな胸が円卓に乗りそう。
いかん、いかん。どこ見てるんだ。
「ち、治安の分野は門外漢で……、衛士長に任せ切りだったのですが、人獣が現われた最初の晩に亡くなってしまい……、今は村長のフーチャオ殿に助けていただきながら、なんとか務めております……」
と、ミンリンさんは最後に残った、もう一人の眼つきの鋭いおっさんの方を見た。
村長っていうよりは、軍人さんかスパイのような、只者ではない雰囲気を漂わせてる――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
404
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる