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123.呪力の発現(3)

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「シーシの……?」

「はい」

と、シアユンさんは優しく微笑ほほえんだ。

「私たちはみな、シーシ殿の言葉に深く納得なっとくしております」

「……純潔じゅんけつ純情じゅんじょう失恋しつれん少年しょうねん

「そちらではございません」

あ……、すみません。インパクト強すぎて。純潔どうてい純情うぶ失恋フラれた少年ガキ

祖霊それいがマレビト様をマレビトに選んでおつかわしになったのには意味がある。……という言葉です」

「私も、そう思っております」

と、ツイファさんが言った。

「私も思ってます! だってスゴイじゃん!」

という、メイユイをみんなが見た。

「だって、マレビト様が召喚されて、まだ20日はつかそこそこでしょ? 20日はつか前には、夢にも思わなかったよ、こんなの! 剣士以外の人が剣士と一緒に闘ってるでしょ? 平民へいみんに家を建ててくれたし、ご飯も美味おいしくなった! 服もキレイなの着てる! すごい武器ぶきも作ってくれた! なにより、なんか人獣じんじゅうに勝てそうな雰囲気になってきてるのがスゴイよね!」

「私も同じ思いでおります」

と、イーリンさんが言った。

「剣士はひとりで闘います。それが、人の命をうば儀礼ぎれいであると教わってまいりました。ですが、みなで闘う。みなで力を合わせる。この楽しさ、この強さをマレビト様に教えていただきました」

「私はね……」

と、ユエが小さな声で言った。

「私のおっぱい見てドギマギしてるマレビト様を見てるの楽しい」

おっと。なにぶっ込んでるんです?

「お兄ちゃんにも馬鹿ばかにされてて、邪魔じゃまだなぁってずっと思ってた自分のおっぱいが、好きになったよ!」

ユーフォンさんが、り向いてユエの頭をでた。

「ユエはえらいね」

「そう?」

「自分の好きなところを見付みつけられる子は偉いんだよ?」

「そっか……。ふふっ」

「またひとつ、自分の好きになれるところを、マレビト様から教えてもらったね」

「ほんとだぁ!」

そ、その論理ろんり展開てんかいは少し複雑ふくざつな気持ちになりますが……。好きになれたんなら、いいことなんですよね……?

「マレビト様」

と、ユーフォンさんが俺になおった。

こいはタイミングです! マレビト様の『今じゃない』って気持ちもよく分かります! 私にも、そんな時がありました。でも、そんなタイミングのマレビト様を祖霊それいが選ばれたのには、きっと意味があるんだって思うんです」

意味……、か。

「確かに今のマレビト様には呪力じゅりょく発現はつげんすることは出来ないかもしれません。でも、出来ることは何でもされようする。シキタリだからってあきらめたりしません。私たちも諦めずに出来ることを頑張りたいんです」

このたちが俺に、里佳りかのことを忘れさせようとしてるって考えたら、なんだか迷惑めいわくのようにも感じるタイミングだ。

だけど、フラれた傷をいやそうとしてくれてるって考えたら、なんだかとても胸にあたたかいものを感じてしまう。

「それが全部じゃないかもしれないけど、祖霊それいが私たちにマレビト様をわせくださったのは、私たちにあきらめないことを教えるためだったんじゃないかな? って思うんです」

ユーフォンさんが、みんなが、よく分からない呪力チートなんかじゃなくて、俺の行動、俺の人格じんかくを認めてくれて、俺のことを大切に思ってくれてる。

だから、大切な人が傷付きずついてるから……、いやしてあげたいんだって気持ちが伝わってくる。

シアユンさんが正座せいざしているひざの前に、静かに手をいた。

「かつて、みなの前で申し上げましたおもいに、今も変わりはありません。いえ、むしろ想いはより強くなっております」

……想い?

「我ら純潔じゅんけつ乙女おとめ一同いちどう。どこまでもマレビト様のお気持ちにい、マレビト様のされることを心の底からおささえいたします。どうか、末永すえながくおつかえさせてくださいませ」

と、シアユンさんは俺に向かって深く頭を下げた。みんなも同じように続いた。

……。

もう! 

みんな、ビキニ姿だし!

シアユンさん、そんなに深く頭下げたら、おしり見えてるし!

プリッとキレイなお尻ですね!

まんまと【お色気大作戦】に、やられておりますですよ?

……いつか、純潔じゅんけつ乙女おとめの誰かと、になるかもしれません。

耳にはメイファンとミンユーが「子種こだねがほしいです」ってささやいてくれた声もよみがえります。

でも今は、たよりない俺ですけど、呪力じゅりょくにアテのない俺ですけど、出来る限りの知力ちりょくしぼって、みんなと一緒に人獣じんじゅうかわせてください。

それで……、いつか、そういうことになるとしても。

いつか、里佳りかへのおもいに整理せいりがついて、みなさんとむすばれるとしても。

その時は、平和をむかえてからがいいな。

平和な時に平和な呪力じゅりょく発現はつげんするのがいいな。

うん。

「ありがとうございます」

と、俺も深々ふかぶかと頭を下げた。

「ふつつかなマレビトですが、どうか、よろしくお願いいたします」

そして、みなで頭を上げて、ププーッて笑い合った。

それから、面積めんせきの小さな橙色だいだいいろのビキニ姿のユーフォンさんが立ち上がり、たからかに宣言せんげんした。

「それでは【お色気大作戦】、本格ほんかく始動しどうです!」

ええっ?

そうなる?

そうなるのかー。

ま、頑張がんばってるんなら、応援おうえんするしかないよね。

ドギマギしながら、応援するよ。

……。

……でも、チラ見はやめよう。

出来るだけ。

出来るかな?
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