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一章
19.元神子は奉仕するそうです
しおりを挟むセルデアの唇と自身の唇がそっと重なる。微かなリップ音が室内に響いたかと思えば、角度を変えてもう一度。
重なった唇は触れた頬よりもずっとずっと、温かかった。
「ん、っは」
セルデアに舌先をじゅっと吸い上げられ、甘く噛まれる。それだけでセルデアとの行為に慣れた身体は、小さく跳ねる。どうにか離れようとするが、後頭部をがっしりと掴んだセルデアの手がそれを許さない。厚い舌が俺の口内を蹂躙していく。上顎を舐められ、背筋がぞくぞくと震える。
だめだ、頭が熱でやられる。
段々と頭からゆっくりと熱が身体に回っていき、ベッドに突いた手に力が入らなくなった。腕の力が抜けて、自然とセルデアに伸し掛かる体勢に変わる。
そこでようやく、唇が解放された。
「もっ、いいだろ……っ」
くそ、これだけで勃ち始めてる。キスしたくらいで。
火がついたように顔面が熱くなる。自分の身体が言うことを聞かず、すぐセルデアに反応するのが、かなり恥ずかしい。バレる前に離れないと。
そう思うが、セルデアの手が俺の背に回って、それを許さない。
「セルデアっ、いい加減に」
「イクマ、貴方にもっと触れたい」
「なにを……あっ、ん!」
セルデアの手が、背から臀にゆっくりと這う。それだけで油断していた俺の口から甘ったるい声が漏れた。
不意打ちをしたセルデアを睨みつける。しかし、俺が見たセルデアの頬は僅かに赤く染まり、こちらを見つめる瞳は熱を孕んでいる。セルデアが興奮している時の顔だ。
あ、こいつ、絶対に止まらないな。
それは、ベッドに引き込まれる時に何度も見たことがある。そして俺はその顔にどうしても弱い。同じように興奮し始めているせいもあり、強く拒否できない。
ただセルデアはまだ怪我人だ。どうやっても無理させることはできない。かといって、ここで拒否すると強引にでも動き出しそうだ。
暫し沈黙を選んで、悩む。解決策は思ったより、早く出た。言うなれば病人相手にするお約束、というやつだ。
「……なら、俺が全部するからお前は動くな」
ベッドの上にしっかり乗り上げると、二人分の体重のせいで小さく軋む。
俺は、仰向けで寝ているセルデアの足元辺りに座る。セルデアの目線は真っ直ぐ俺に向けられていた。
今からすることに、恥ずかしさと緊張から心が落ち着かない。きっと俺の顔は真っ赤になっているだろう。
軽い深呼吸のあと、ゆっくりと手を伸ばす。
被っていたシーツは既に剥がしており、手を伸ばしたのはセルデアの下半身だ。衣服を掴んで下へずらす。下着も同じようにずらせば、現れるのはセルデアの性器だ。
こうして真正面から向き合う機会はそう多くない。完璧に勃っている訳ではないようだが、既に緩く勃起したそれに小さく唾液を飲みこんだ。
「イクマ、無理はしなくても」
「無理じゃない。というか、一発くらいは口で抜かないと俺がもたないんだよ……」
セルデアの性欲も体力も俺以上だ。俺が息しかできない時も、こいつはケロッとしていることが多い。だからこそ、一度くらいは出しておかないと、後悔するのは俺だ。
場所が場所なだけに、この部屋で意識を失う訳にはいかない。
緊張から少し震えた指先で包み込むようにセルデアの性器に触れる。
それだけで、セルデアの身体が小さく跳ねたのがわかった。セルデアを見ると熱を孕む瞳が食い入るように見つめてくる。期待と興奮の混じった視線を受け、俺の下半身にも熱が溜まっていく。
ここで、やめるわけにはいかない。
ゆっくりと口を大きく開き、セルデアの先端を咥えた。
「っん……はっ」
舌で性器の幹に舌を這わせて、先端を吸い上げる。じゅっという音は妙に生々しく、俺がセルデアの性器を咥えているのだと再認識させられた。
「っ、く」
セルデアの呻き声に心臓がきゅっと締め付けられる。セルデアも気持ちいいのだと思えば思うほどに、俺自身も興奮するのがわかった。
羞恥よりも快楽を与えることを優先させていく。俺がしてもらった時に気持ちいいと思う箇所に舌を這わせ、大胆に動かす。苦味が口の中に広がるが、既にどうでもいいと思える程に興奮していた。
「んっ……は、っん」
「っ、イクマ……っ」
熱っぽい名前で、呼ばれると背筋がぞわりと震える。ふと、目線をセルデアへ向けた。
セルデアの頬は赤く染まり、形のいい眉は顰められ、瞳はどろどろの熱に侵されている。
ああ、やばい。
感じてくれているとわかればわかる程、どうしようもないくらいに熱が高まる。
「っ……もっと、奥まで咥えてほしい」
セルデアの声は掠れていた。
奥まで、といっても既にセルデアの性器は完璧に勃ち上がり、大きい。口の中を圧迫して、唾液を上手く飲み込めない。
無理だと思った。しかし、それ以上にもっと咥えてセルデアが興奮した顔を見たかった。
「ん、ぐっ……!」
だから、要望通りぐっと奥まで咥え込む。舌を微かに震わせながら、セルデアの性器を舐める。
「っく、あ……イクマ、ッは」
「んっ……ん!」
興奮しきった声で名前を呼ばれると同時に、セルデアの指先が俺の頬に触れる。その指先がなぜか、嬉しくてたまらない。更に感じて貰おうと口を窄めて、舐め上げる。それが気持ち良かったのか、セルデアの指先が乱暴に俺の髪を掴む。
「く、っ!だめだ、もう出るッ……!」
それが興奮による故意なのか、無意識なのかはわからない。ただ強く押さえつけられ、後ろに引けなくなる。
「っ、ぐ……ん、ンンッ!」
だからこそ、逃げられず口内でどろりとした液体が吐き出される。
熱い。口の中も熱いが、興奮で頭がぼうっとする。俺の口に出されているのだと思うと、下が小さく疼くような感覚がした。そのまま吐き出すことも出来ず、俺は反射的にそれを飲みこんだ。
「げほっ、ごほっ!」
「っ、イクマ!大丈夫か?」
セルデアの指先が離れるとすぐに口を離し、思わぬ出来事に咳き込んでしまう。セルデアは慌てた様子で起き上がろうとしてきたが、片手を上げてそれを制止する。
「う、うご、くなって。げほっ!」
反射的に出る涙で視界が微かに歪む。口端から垂れる白濁の液を手の甲で、ぐっと拭う。
セルデアは、心配そうな表情を浮かべているが、その瞳から欲情の熱は消えてない。俺の顔をじっと眺め、静かに喉を鳴らした。
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