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犬も喰わない!~バカップルの痴話喧嘩編~

別れ話のABC/パターンB-①

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「前の彼女とかどうだったの?」


何気なく聞いた一言だった。そもそも智太はどんな恋愛をしてきたんだろう。喧嘩するのはどんな時?別れた原因は?デートのパターンは?

過去のを知ってれば今に生きると思ったから。

「えー?あー、まあ、そこそこ」
「そこそこぉ?なんだよそれ~」

最初はちょっとした好奇心もあった。過去のコに嫉妬してないと言ったら嘘になる。

「過去なんてどうでもよくない?今の俺にはサトルが居るからじゅーぶん。」

充分、と言う言葉に頬が上がる。そうなんだ、って照れくさい。正直嬉しくなってしまった。だからこそもっと頑張りたくなった。


出来るなら長く一緒に居たい、そんな願望もある。
長く一緒に居るためにリサーチは大切だ。色んな考え方や経験が解るしコミュニケーションにもなるし。


「でも別れた原因とか知りたいし」
「えー、さー?合わなかったって事じゃない?そんなん解んないよ」
「わかんないのぉ??ふつー喧嘩したとかさ、そーゆーのの原因あるんじゃないの?」
「さあ…。いーじゃん別に、過去は過去だし」

一瞬過去を思い出したであろう表情が哀しげで、それがまた俺を煽る。

「過去なら教えてくれてもいーじゃん?」
「やだよ、わざわざそんな事言いたくないし」
「なんで?過去のことだし、もう終わってるなら言ってもいいじゃん」
「終わってるんだからどーでもいーでしょ」
「んな言いたくないの?女の子とかあんま嫌がらずに教えてくれるけどね」

一瞬、智太がムッとした事に気がついた。自分が言った『女の子』に反応したんだろうか?
それはもしかして嫉妬で?

「別れる原因が前の子と同じなんて嫌だから教えてよ」
「いーって、言いたくない」
「なんで」
「言いたくないから」
「そんなに言いたくないって、まだその子のこと好きなの?」
「そうじゃない」
「そうじゃん、未練あんじゃんソレ」
「違うって」
「じゃあなんで言いたくないの」

嫌な空気にならないように気を使ってるつもりだった。最初は軽い気持ちで、笑って聞いてたハズだったのにどんどん引っ込みが付かなくなる。

智太が〝言いたくない〟って言えば言うほど気になって聞き出したくなってしまう。
言いたくないと言われるほど、まだ好きなんじゃないかと思ってしまう。
好きだから未練があるから、思い出したくないんじゃないかと疑ってしまう。

智太が変に黙るから、なんで黙るのって聞きたくなってしまう。

「なんで黙るの」


もうこれ以上はきっと聞かない方が良いって、分かってるつもりなのに・・・。


「俺はサトルの過去なんて聞きたくない」
「なんで?俺は全部言えるけど」
「知りたくない人間なの」
「相手の事もうなんとも思ってないのに?」
「そうゆう問題じゃない」
「俺の場合はさぁ」

「聞きたくないんだってば!」

怒らせた、ってのはもちろん解った。
だけどなんでそんなに言いたくないの?って疑問が強くてムッとしてしまう。

女の子はたいてい嫌な顔せずみんな教えてくれた。教えてくれない子こそ未練があったりして、内緒にされるのが怖くて、そんな自分の過去が浮かんでくる。

智太、まだ好きなの

顔も名前も知らない過去の子が気になって仕方ない。

未練がないのに言いたくない理由も解らない。
やっぱ俺ことなんてそんなに好きじゃないのかもしれない、って思ってしまう。


なんでなんでなんで・・・



「……、そうなんだ。」


喉の奥から絞り出した大人の返事。そうなんだ、って思ったのは本当。だからと言って、理解した訳でもない。


「そろそろ戻る?」


智太も智太で大人の返事を絞り出したのかもしれない。



ただの会話でコミュニケーションで、喫煙所で珍しく2人きりで居られるひとときのハズだった。


「ああ」そう返事して2人で戻った。


明るい声を出してみるけど、心の中のモヤモヤは晴れない。

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