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「君は性転換をするつもりは無いのか?」

「せ、性転換、ですか?」

突然のことに戸惑いが隠せない。

「ひ、ヒロがしないで、て言っていますし、
私も興味ありません...」

「...わかった。無理にとは言わないよ。もししたい、と思う日が来たら私に言いなさい。腕のいい知り合いの医者も知っているし、お金は気にしなくていい。私が払わせて貰うからね」

笑顔でお父さんは締めくくった。

俺は冷や汗がダラダラだ。

そうして、私は頭を下げ、お父さんの部屋を後にした。

渡された紙袋を見ながら頬を撫でた。

確かに、化粧水はまだいいが乳液はベタベタした感じが苦手で塗らない事もしばしばだし、お母さんの買ってくれた美容液も極たまにしか使ってはいない。

「...女、て大変」

1日食後に2錠。忘れないようにしないと。

俺は化粧ポーチにプラセンタを入れた。ビタミンCも入ってるそうだけど。

芸能人の肌ツヤがいい、若いのはこういう事もあるのか、としみじみ感じる。

お父さんの部屋を戻ると、お母さんと夕飯の準備。

1品は俺が作った。

味見をしてくれたお母さんが、

「まあ!とても美味しい!瑞希ちゃんはセンスがあるのね」

びっくりした顔をし、また、褒めてくれて、嬉しかった。

出来上がるとヒロも呼び、初めてお父さんも含めて食事。

途中、ヒロの兄の大学生、海斗さん、ついでに悠人まで帰ってきてしまった。

「わあ!美味そ!腹減ったあ」

家族全員と居候の俺とでテーブルを囲む。

チラチラと海斗さんの視線。見たらお茶碗のごはんが無くなっていた。

慌てて、お代わりのごはんをよそい、手渡した。

「今日はさー、撮影だったんだけど、相手役のちんぽがなかなかいい反り具合でさ!撮影忘れて感じまくっちゃった!」

食事中の悠人からのアラレもない会話はみんなは慣れた様子で聞き流していたが、俺は食べていた物を吹き出してしまった。

「大丈夫?」

隣のヒロが俺を気遣い、むせている俺の背中をさすってくれた。

「でもケツイキしそうでしなかったし、でも潮は吹いた、てか、ようやく潮吹くようになったんだけどさあ、腹の上がびしょびしょになってさあ」

「食事中にやめろよ、バカ兄貴」

「もう何度も注意したけど、これだから。無理だろ」

ヒロは怒り、海斗さんは呆れた様子もなくおかずを口に運ぶ。

「なんだよー!食事は楽しくしたいじゃん!」

部屋に戻ると、ヒロは勢いよく仰向けで寝転がった。

「ごめんね、瑞希。アホが一匹いて」

「う、ううん。大丈夫。気にしてない」

俺は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと早速、お父さんから頂いたプラセンタを飲んだ。

「それ、なに?」

「プラセンタ。知らない?」

「なんか聞いたことはある」

「美容にいいの。たまにCMで見て知ってはいたけど。お父さんから頂いて」

「あー、肌に良い奴か。専門分野だもんね、父さんの」

「肌も綺麗になって綺麗になりなさい、て」

「あ、だったら。いつもカミソリ負けする、て言ってたじゃん?全身脱毛も頼んだら?」

「いいのかな...高そう」

「大丈夫だよ。俺の大切な彼女で。みんなの娘だもん」

ヒロがいつものように優しく後ろから抱き締めてくれ、とても嬉しかった。
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