婚約から始まる「恋」

観月 珠莉

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*61* すれ違い

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みのりちゃんの家で、しこたまお説教された後、電話が鳴った。

「……?直嗣さんからだ。」

その言葉を聞いて、みのりちゃんはニヤリと笑う。

「早速、作戦が功を奏しているようね。」
「そうなの?」
「いいから、出てみて!!」

みのりちゃんに促され、電話に出る。

『お前、今、何処に居るんだ!!』

通話ボタンを押し、私が言葉を発する前に直嗣さんからどやされた。

「えっと…今、みのりちゃんの家です。」
『二人だけか?』

みのりちゃんの事を紹介した事あったっけ?…と思いながら、会話を続ける。

「あの…みのりちゃんと藤原先輩も居ます。」

直嗣さんのチッという舌打ちが聞こえる。

『何もされていないだろうな?』
「…?何もって、何ですか?」
『いや、良い。今から迎えに行く。そこは何処だ?』
「今からって…。」
『良いから、場所を言え。』

久々に話をしたと思ったら、強引に場所を聞かれ、渋々、みのりちゃんのお家の近くを伝えた。
一時間後、直嗣さんから近くに到着したとの連絡が入る。

「みのりちゃん、藤原先輩…色々とありがとうございました。」

私は、玄関口でペコリと頭を下げる。

「ほら、さくら。御曹司が待っているんでしょ?行きなよ。」
「ありがと。藤原先輩…頑張ってくださいネ…うふふ♪」
「あ…あぁ…。」

藤原先輩は、頭をポリポリと掻きながらちょっとだけ赤くなっていた。
二人にお礼を告げて、待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所に行くと、直嗣さんが車に身体を預け、腕を組みながら空を見上げていた。

「お待たせ…しました?」

強引に迎えに来たのは直嗣さんなのに、何故か、疑問形で話し掛けてしまう。

「いや…良いから乗れ。」

直嗣さんは、助手席のドアを開け、乗り込むように促す。
私は、数か月ぶりの直嗣さんの車に乗った。

「突然、どうしたんですか?」
「いや…。」

直嗣さんは、どうにも歯切れが悪い。
暫く、無言のまま車が走るとようやく直嗣さんが話し出した。

「何故、待てなかったんだ!!」
「え…何の事?」
「……。」

また、沈黙が続く。

「鮫島電機の長男と結婚するんだろ!!」
「え?鮫島さん、結婚するんですか?」

そんな話は聞いていないけれど、鮫島さんはとても素敵な人なので、お相手も魅力的な人だと良いなぁ…と願った。

「違うのか?」

直嗣さんからの質問は続く。

「先日お会いした時には、特に結婚するような話は言っていませんでしたよ?」
「決まった訳では無いんだな?」
「えっと…確認してみます?」
「確認しなくて良い!!」

何だか、イライラしている直嗣さんだった。
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