リア=リローランと黒の鷹

橙乃紅瑚

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第一章

9.熱に溺れる ★

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「……リア……リア……起きてくれ……」

 優しく呼びかけられる声。リアは目を開けて、ゆっくりと上体を起こした。さらさらとした風が頬を撫でる。

「ん、ぅ……」

 リアは、ゼルドリックの黒いコートの上に寝かされていたようだった。傍らでゼルドリックが労しげに、「調子はどうだ」とリアに訊ねた。

(あれ……? すごく、体調が良くなってる)

 自分の身体の奥底を無理やり揺り動かされるような、虫が皮膚の上を這い回るような悍ましい感覚がすっかり消えている。自分を苛んでいた熱も消え、リアはそのままいつも通り元気に動ける気がした。そして、元気になった身体でリアは冷静に考えた。

 ――これは、本当に夢なのだろうか?

 リアは随分とうつつに迫る夢だと感じた。感じる身体の軽さも。冴える頭も。まるで現実の様に感じる……。身体をつねれば目覚めるだろうか?そんなことを考えていた時、ゼルドリックが頭を撫でて、再度どうなんだと聞いてきたためにリアは一旦思考するのを打ち切った。

「問題ないです。随分と身体が軽くなりました」

(きっと、私の身体に何かしらの魔法をかけてくれたのね)

 リアは微笑んで、ゼルドリックに感謝の言葉を述べた。

「熱を出した私を治療して下さったのですね……。お陰様で本当に体調が良くなりました、ありがとうございます」

 夢で会う彼は高慢でも嫌味たらしい訳でもなく、ただひたすらにリアに甘く、優しかった。だから何も怖れることがなく、リアはゼルドリックに向き合い、素直に礼を言うことができた。

「……そうか……君が良くなって、本当に良かった……」

 ゼルドリックはいつもリアに見せる、口の片端を曲げるような皮肉げな笑みではなく、恋人に向ける様な蕩けた笑みを浮かべた。その目には慈愛の色が浮かび、心からリアの快復を喜んでいるようだった。

(あっ……)

 リアは赤面した。何かの穴に、自分がすっかり嵌ってしまった気がした。どくどくと、大きな鼓動の音が胸の中で響く。

(私、どうしたんだろう……!)

 ゼルドリックは野生的な顔で、横にも縦にも大きい身体付きをしている。跳ね上がった眉と口髭から、リアはゼルドリックに対し、格好良いというよりも、どうしても高慢で威圧的な印象を持ってしまっていた。

 しかし、今の彼はリアにとってまさしく王子のように思えた。今までずっと心の中で逢瀬を重ねてきた、黒の王子様。少しだけ乱れた黒髪も、力強い目も、高い鼻も。何もかもがリアの心に、甘い刺激を与えてくる。

(彼が、とても格好良く見える……。)

 胸が切なく跳ねる。ゼルドリックを見ていては尚更胸が苦しくなる気がして、リアは顔を彼から逸らした。

 そしてリアは、自分がゼルドリックに何をしたのかを思い出した。熱にうなされて、浅ましくも自分からゼルドリックを求めてしまった。目の前の彼は自分が作り出した幻であるとはいえ、現実のゼルドリックを汚したようなものなのだ。あまりの申し訳なさと羞恥から、リアはゼルドリックから勢い良く顔を背けてしまった。

(私……私は何て事をしてしまったの……? いくら夢だとはいえ、ブラッドスター様にいやらしいことを求めてしまった。もう、目を合わせていられない……!)

「リア……どうした? こちらを見てくれ」

「そ、そう言われても……」

 リアは目を伏せ、ゼルドリックと顔を合わせない様にした。ゼルドリックの目を見るのが怖かった。

「仕方のない奴め」

 ゼルドリックは少しだけ意地悪さを声に乗せて、リアの身体を柔らかく抱き留めた。

「喉が渇いているだろう」

 ゼルドリックは傍の水瓶を煽り、リアの顔を両手で固定して、一気に彼女の口内に流し込んだ。

「んんんっ……!? ……んっ……んっ……んくっ……」

 口移しで行われる水分補給。その強引さに、リアは喉を鳴らして水を飲むしかなかった。驚きから目を開いてしまうと、ゼルドリックはリアの瞳をじっと見つめた。

「はあっ……はあっ……」

「やっと目を合わせてくれたな。……どうした? 先程は随分と積極的だったというのに」

「そ、それは……」

「……まさか、俺に触れられるのが嫌だったのか……?」

 ゼルドリックは低い声でリアに尋ねた。その様子には不安のようなものが滲んでいて、リアは勢いよく首を横に振った。

「違います! ……わ、私は……ブラッドスター様に大きな迷惑をかけてしまいました……。浅ましくも自分からねだって、最後は首に手を回して……何度も、何度も……!」

 ――パルシファーの綿毛の様な髪だな?

 ゼルドリックのふと言葉が蘇る。髪を毒草に例えるほど嫌いな女に求められる苦痛は、どれほどのものだろうか? 今のリアには、夢とうつつの区別がよく付かなかった。ただ、自分の情欲の犠牲にしてしまった、目の前の男に許しを乞うた。

「ブラッドスター様こそ、私に求められて嫌な思いをしたでしょう? ……治療のために、本当に申し訳ありません……」

 リアは今にも涙を溢してしまいそうなほど目を潤ませた。言葉にする度、ゼルドリックと交わした熱い口付けが蘇る。幻だとはいえ、自分を嫌っている男を何度も求めた。ゼルドリックに申し訳が立たない。自分のいやらしさと浅ましさが情けない。リアは悔恨の余り目を瞑った。ゼルドリックからの断罪の言葉が怖くて仕方がなかった。

 だが、ゼルドリックはリアを慰めた。伸ばされた黒く長い指が、滴った涙のしずくを優しく掬った。

「俺は、君が求めてくれた時、本当に嬉しかった」

 きっぱりとゼルドリックは言い放った。

「謝罪なんて必要ない。俺が……俺が、リアとしたかった。君が俺を求めてくれて、何度も何度も口付けができて、天にも昇る心地だった。幸せだった……。もし熱で聞こえなかったのなら、もう一度言ってやる。愛おしくてたまらない。リア……。君のことが好きだ」

 リアの涙がまた一筋溢れた。ゼルドリックは唇を寄せてそれを吸い取った。愛おしげに、もう泣くなと言うように赤い髪を優しく撫でた。

「君が熱に苛まれた時は、何度だって俺が冷ましてやる。だから泣かないでくれ。これは夢だ。君が泣くことはない。安心して、俺に全てを委ねてくれ……」

(ああ……。なんて甘く、都合の良い夢なんだろう。ブラッドスター様が、こんなにも優しい……)

 夢の中のゼルドリックは本当に優しく、自分を好いてくれている。それがとても嬉しかった。リアはこのままこの夢が醒めなければいいと思った。

「リア。……愛しいリア」

 ゼルドリックがリアの手首を掴んで、コートの上に優しく彼女の身体を横たえた。リアに覆い被さり、絶対に逃がさないとでもいうように上から見下ろす。リアは影に捕らえられた。強い夕日の光は、ゼルドリックの大きな身体によって遮られてしまい、彼の顔は逆光で見えない。

「ブラッドスター様……?」

「ゼルドリックと」

 ゼルドリックが自分の名を呼ぶように求めると、リアは素直にゼルドリック様と口に出した。

「……もう一度、呼んでくれ」

「ゼルドリックさま……」

 リアは、目を潤ませてゼルドリックの名を呼んだ。ゼルドリックは甘い声の刺激に酔いしれた。

「可愛いな。リア……」

(君に名を呼ばれるだけでとても心地良い。君こそ、俺に魅了の魔法でもかけているのではないか……?)

 ゼルドリックは、リアを愛しく思う気持ちに浸りながら、彼女の胸元に顔を寄せ、そのまま大きく息を吸い込んだ。リアから立ち昇る濃厚な汗の匂いを、余すことなく嗅ぎ取るように。

「……い、いやっ……! ゼルドリック様、駄目です! 放して下さい! お願い!」

「……んっ……何故だ」

「私、熱を出して、ひどく汗をかいて……! 絶対に臭うから、お願いです! 離れてください!」

「くくっ……。何だ、そんなことか……君の汗の匂いは口付けを交わした時から知っている。今更だ」

「うぅ……」

「それに、俺は君の匂いがとても好きなんだ。甘ったるくて濃厚で、ずっと嗅いでいたくなる……もっと、嗅がせてくれ……」

「そ、そんなの嘘っ……いやぁ…! もう嗅がないで……」

 暴れ回るリアを何でもないというように柔らかく押さえつけ、ゼルドリックはリアの寝衣に手をかけた。

「リア、君に触れたい。もっと君が欲しい……」

 ぴたりとリアが動きを止めた。胸にかけられた手を潤んだ瞳で見つめている。

「君の熱は俺が何度でも取ってやると言ったな。だがその代わり……俺が熱に苛まれた時は、君に冷ましてほしいんだ」

 ゼルドリックが懇願するかのように項垂れた。リアの首筋に、垂れ下がったゼルドリックの黒髪が触れる。影になる中で、見開かれた青い瞳だけがやたらと輝き、自分を射抜いてくる。リアは自分が求められている事実に、ぞくぞくと身体が喜びに震えるのをはっきりと感じた。

「俺に触れられるのは嫌か?」

 嫌な訳が無い。むしろ、もっと触れてほしい。きっと現実の彼と、こんなことをする機会は訪れないのだ。夢の中なら、自分に素直になってもいいじゃないか……。

 リアは、欲望に従うことにした。ゼルドリックともっと触れ合っていたかった。

「……嫌では、ありません……」

「なら、君に触れてもいいか」

 リアがこくりと頷くと、ゼルドリックは嬉しそうに微笑み、赤い髪を労るように撫でた。その安心感に、リアはゆっくりと目を瞑り身体の力を抜いた。

「優しくする。だから、そのまま俺に身体を委ねてくれ……」

 ゼルドリックはリアの胸元を一気にはだいた。下着を着けていないリアの胸は、あっという間にゼルドリックの目の前に晒された。外気が流れ込み、汗ばんだ肌が急速に冷えていく。リアは羞恥から甲高い悲鳴を上げた。

「いっ……いやああっ! ……嘘、うそ……!」

 ゼルドリックに触れられるのは嫌ではなかったが、リアにとって、自分の胸を見られることは本当に恥ずかしいことだった。リアは、自分の胸に劣等感を抱いていた。やたらに大きく育ってしまったそれは、慎みがないという言葉がぴったりだと思っていた。

 胸の大きさに比例して乳輪は肥大し、日々黒の王子様を想って慰めている尖りは赤く腫れ上がっている。自分の浅ましさの象徴というべきそれを異性の目に晒すのは想像以上に恥ずかしかった。

「うぅ……っ……見ないで……」

 涙を流して懇願するリアを前に、ゼルドリックは荒い息を吐いた。強く恋焦がれている女が、恥ずかしくて堪らないというように顔を背け泣いている。そして豊かで柔らかそうな胸。濃桃色の乳輪と乳首が腫れたように盛り上がり、触れられるのを望んでいるかのようにふるふると震えている。

 胸を見られて泣いているリアの少女のような純粋さと、反対に成熟しきった胸のいやらしさに、ゼルドリックは頭が焼き切れんばかりの興奮を覚えた。

「……ははっ……なんていやらしいんだ……? 君は、こんなに慎みのない胸を俺に隠していたんだな……」

 ゼルドリックが甘く、だが少しだけ嘲りの色を含ませて苛めば、リアは尚更涙を流した。ゼルドリックはリアの双丘に釘付けられた。愛おしい女が自分の前で胸を晒しているという事実が、ゼルドリックの理性を強烈な勢いで奪っていく。

「うぅっ……見ないで、見ないでください………」

「見ないで? はは……。冗談じゃない。冗談じゃないぞリア……。せっかく、秘められていた君の胸が目の前にあるんだ……。余すところなく確認しようじゃないか」

「ああっ……ふあっ……!?」

 ゼルドリックは下から掬い上げるようにリアの胸に触れた。優しく、その重みと滑らかさ、柔らかさを確かめるように。

「ほう……随分と重みのある胸だな……。なあリア、聞きたいのだが、服越しに君の胸を見た時はこんなに大きくはなかった様に思えたのだがな。どうしてだ……?」

「ううっ……そ、それは、仕事の時にこの胸が邪魔で……ずっとさらしを巻いてて……」

「ほう……? そうか、そうか……服の中に、こんないやらしい胸をずっと隠していたと思うと、何ともそそられるな……。押さえつけていてさぞ苦しかっただろう? 君の日々の疲れが癒えるように、よくほぐしてやらないといけないな……」

 ゼルドリックは、その大きな両の手でリアの胸を揉み込んだ。リアの豊満な胸はゼルドリックの大きな手を持ってしても溢れ、リアが身を捩る度にふるりと震えた。ゼルドリックの骨ばった指がリアの柔らかな皮膚に沈み込み、その指一本一本でリアの胸に緩やかな快楽を与えていく。

 リアの白い胸を、自分の黒い手が好き勝手に犯している。それは降り積もった白雪を踏み躙るような、征服欲のそそられる光景で何とも淫靡だった。もっとこの胸に自分を刻みつけたい。舐めて、しゃぶって、噛んで、味わいたい。胸に触れられて羞恥と快楽に震えるリアの姿は、ゼルドリックに背が震えるほどの快感を与えた。

「……や、やだぁっ……いつまで揉んでるんですか……!」

「俺が満足するまでだ。君の胸は初めて触れるから、よく検分しないと……」

「け、検分って……! ふぅっ……んっ……! その触り方、いやらしいからやめてください……!」

「ははっ……今まさしくいやらしいことをしているんだよ、リア……君の胸は熟れきって、本当に、いやらしいな……」

 慎みのないお前の胸が悪い。ゼルドリックがそんな気持ちを込め、ほんの少しだけ力を入れて捏ねるように膨らみを揉めば、リアは感じ入った吐息を出した。

(女の胸など見ても何も思わなかったのに、君の胸だと思うとどうしようもなく興奮する……もっと触れていたい)

 ゼルドリックが指で乳輪を回すようになぞれば、リアは甲高い声を上げ、足をすり合わせた。

「リア、こちらを見ろ……。自分の胸が俺の舌に犯されるのを見るんだ……」

 ゼルドリックは伸ばした自身の舌を、わざとリアに見せた。リアはゼルドリックの舌を見て、僅かに目を見開いた。彼の分厚く長い舌が、自分の胸を舐めようとしている。リアはこれから襲いくるであろう快楽を恐れ、そして期待に胸を震わせた。

「あ、あ、待って、ゼルドリックさま……。それは、恥ずかしいから、いやっ……!」

「待たない。舐めさせろ」

 ゼルドリックの顔がゆっくりと近づき、白雪の胸に赤い舌が落とされる。舌は蛇のように、リアの膨らみにねっとりと熱を這わせた。白く柔い胸をしばらく舌で味わった後、ゼルドリックは力を込めてリアの乳輪をなぞりあげる。

「ふ、あっ……? あああっ……あああ……」

 舌をれろれろと動かして、ゼルドリックはリアの乳輪の感触を楽しんだ。乳輪から伝わる、粘り気のある初めての快楽に、リアは戸惑いつつも感じ入った声を上げる。

「君のここはまだ違った柔らかさがある……。ぷっくりとしていて、いかにも敏感そうだ。舐めて感触を楽しむのがくせになる」

「やだぁ……う、うぅ……!」

「美味しい、リア……汗みずくの君の胸は少しぬるついて塩辛いのに、甘さを感じる気がする……」

「……! ……やっ、そんなこと言わないで……!」

 ゼルドリックは、リアの掌をなぞる時のような執拗さを以てリアの乳輪をいたぶった。強く弱く、リアの胸が熱でしっとりと柔らかくほぐれるまで、優しい愛撫は続いた。胸を熱い手で揉みほぐされ、ぬるついた舌で胸を味わわれる感覚は、緩やかだが決して逃げられない快楽を蓄積させていく。リアは足をすり合わせ、涙を滲ませた。

「はぁっ……リア、リア……ん、んんっ……。はあっ……美味しい、な……」

「ふっう、……うああっ……こんなの、こんなの恥ずかしいっ……ゼルドリックさま……!」

(うぅ……何だか、もどかしい、よぉ……)

 リアは自分の胸を執拗に苛むゼルドリックを、潤んだ目で見つめた。ゼルドリックの垂れ下がった黒い髪が、さらさらと胸に触れる。青い双眸に見つめられるだけで、胸に熱を感じる。

(ああ、わたし……ゼルドリック様と、こんないやらしいことしてるんだ……)

 リアは目を閉じた。目の前の、甘く少しだけ意地悪なゼルドリックは本当に「黒の王子様」のようだ。自分を愛してもらいたい。屈強な男に組み敷かれて、ろくな抵抗もさせてもらえず快楽を与えてもらいたい。ずっと胸に抱えていた仄暗い被虐願望が、宿願が、自分ではなく他者の手で溶かされていく。

(嬉しい……、嬉しい……! でも、こんなんじゃ足りない……もっと、もっと触れてほしいの……)

 リアは媚びるように身体を捩った。じんじんとした胸に溜まった快楽を、ゼルドリックに解放してほしかった。

「はっ……どうした? ……随分と物足りなさそうじゃないか」

 ゼルドリックはリアの動きに何かを感じ取ったらしい。抵抗ではない、少し不自然な身の捩り方。それはおそらく、乳輪をいたぶる自分の舌に、胸の頂きを触れさせようとしたのだろうとゼルドリックは理解した。

「リア、君の望みを叶えてやろうか? ……いかにも嬲ってくれと言わんばかりに立ち上がっている、いやらしいここにねっとりと舌を這わせてやろうか……」

 リアの乳首に指を置いて、ゼルドリックは意地悪さを含んだ声をリアの耳元に落とした。優しくも支配的な声に、リアは自分の芯が濡れ、震えるのを感じた。

「ゼルドリック様……」

「言っただろう、リア? これは夢なのだ……。夢だと思えば、君も素直に俺を求めてくれるだろう?」

「あ、うっ……うう……」

 リアは口を噤みつつも、ゼルドリックの腕に弱々しく縋り付き、裾を握る手に力を込めた。その意図を汲み、ゼルドリックは微笑むと、リアの濃桃色の立ち上がった乳首を舐め上げた。

「あっん……。あ、あああああああ…………!」

 待ち望んでいた快楽に、リアが乱れきった声を上げる。もっとその声を聞きたくて、ゼルドリックはわざと緩慢な動きで乳首に舌を這わせた。

「んむっ……れろっ……はっ、……気持ち良くて堪らないという顔をしているな……。リア?」

「……あああっ……はぁっ……うぅん……! うん、気持ちいいっ……」

「君の此処は、俺が胸を暴いたときから立ち上がっていたな? ……何故だ……?」

「んんっ……ゼルドリック様との、キスが……気持ちよかったから……! 柔らかくて、熱くて……あんなに気持ちいいの、我慢できないよぉ……!」

「なっ……?」

 ゼルドリックは思わず息を呑んだ。恋焦がれていた女の口から、自分との口付けで感じてしまったという言葉が出るのは、あまりにも刺激が強かった。リアに対しての恋慕と情欲が、どんどんと募り、燃え上がっていく。

「き、君は……。何てことを言うのだ……!?」

(ああ、リア……。可愛い、可愛い、可愛い……!)

 赤くなった自分の顔を隠すように、ゼルドリックはリアの乳輪から乳首を、すっかり口に含んだ。

「ひゃあんっ……!」

 ゼルドリックは口に含んだそれを、ちゅくちゅくと口の中で泳がせたり、乳首を周りから中心へ舐めあげたり、優しく甘噛みしたりした。リアの目が見開かれ、涙がとめどなく流れていく。

「あ、あぁっ……あっ……あっ……。あつ、い……ゼルドリックさま……」

「んっ……んんっ……れろっ……」

「う、うう……。はあっ……あああああっ……」

「……なあ。……なあ、リア。君は、こんないやらしい姿を、今までに誰かに見せたことはあるのか……?」

 ゼルドリックはリアの首筋に舌を這わせ、流れる涙と汗を舐め取った。赤い髪を可愛らしい耳にかけ、快楽に濡れるリアに問いかける。

「うう……どうして、そんなこと……?」

「君は……。反応からして初心に見えるのに、身体は随分といやらしく成熟しきっている……敏感で、悩ましい身体つきだ。こんな身体だと、既に誰かに明け渡したことがあるのではないかと思ってな……」

「あ……わたしの、身体……嫌ですか……?」

 リアがぽつりと不安そうに溢した。ゼルドリックはリアを安心させるように、汗ばむ額に一つキスを落とした。

「そんな訳ないだろう? リア、俺は君に触れることが出来て本当に嬉しいんだ。君にもっと俺を刻みつけたい。……ただ、俺の身勝手な願いなんだ。俺が女に触れるのは、君が初めてだから……君も、初めてが俺であれば良いと思っていた……」

 ゼルドリックの告白に、リアの緊張がたちまち解れていく。リアはゼルドリックに腕を絡ませて甘い声で囁いた。

「ないですっ……私は男の人と、こんなことしたことないんです……キスも、胸を見せたのも、ゼルドリック様が初めてなの……」

「……っ……そうか……」

 ゼルドリックは思わずリアの口を自分のもので塞いだ。リアの告白が心を満たしていく。嬉しい、嬉しい。彼女の秘められた世界に踏み入ったのは、自分が初めてなのだ。優しく触れ合いながら、喜びに浸り合う。

(……ゼルドリック様……こんなに格好良いのに……。私と一緒だなんて、嬉しいな……)

 ――私はこの人と睦み合っている。自分を嫌うあのダークエルフと。彼は、今だけは私のもの……。

 仄暗い支配欲と切なさがリアの心を満たす。どこまでも都合の良い、甘い夢にもっと浸っていたい。ゼルドリックと舌を絡ませ合いながら、リアはうっとりと悦びを目に宿した。
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