リア=リローランと黒の鷹

橙乃紅瑚

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第二章

22.蜜漬け ★

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 ある日の仕事終わり。はらはらと舞う秋の木の葉と美しい夕暮れを楽しみながら、リアは市場で品物を物色していた。すっかり肌寒くなり、リアは耳に掛けていた自分の髪を下ろした。ふわふわとした自分の髪が、冷たい風から頬を守ってくれる様だった。

 その日、リアはゼルドリックのためにシチューを作ろうと決めていた。いつも忙しく帰ってくる彼の体調を気遣って、野菜と肉がたっぷり入った栄養満点の美味しいシチューを作りたい。今日はどんな野菜が市場に並んでいるのだろうかと見渡せば、リアは後ろから声を掛けられた。

「リアさん?」

 振り向くと、レントが立っていた。さらさらとした金髪が風に揺れている。中央政府の制服ではなく、ベージュのコートを着た彼は、尚更柔和な印象をリアに与えた。

「レントさん! お久しぶりです!」

 リアとレントは握手を交わした。ぱちりと、彼と初めて握手を交わした時の、静電気が走るような感覚がまた走った。

(あれ……?)

 リアは気になったが、ただの静電気が走ったのだろうと思いあまり気にしないことにした。レントは目を見開き表情を強張らせたが、誤魔化すように笑みを浮かべた。

「……リアさん、本当に久しぶりですね! 僕は長い任務に苦しめられていまして、なかなか工場こうばの方に顔を出せなかったのですよ。お変わりありませんか?」

 リアがはいと答えれば、灰色の目が細められる。レントは優しく微笑んだ。

「ファティアナ様が喜んでいらっしゃいましたよ。最近は尚更作品の輝きが増していると。リアさんが作られた品は、貴族の方々にも好評を得ているようです」

「わあ……本当ですか?」

「はい、王都にあなたの様な素晴らしい方を迎えることが出来て、僕も中央政府に勤める者として嬉しく思います」

 リアは満面の笑みを見せた。褒めてもらえるのは、いつでも嬉しいことだった。

「ここには買い物へ?」

「はい! 今日は寒いのでシチューを作ろうかと」

「ああ……良いですね。僕、シチュー好きなんです。しっかり焦げ目がついたパンと食べるとたまりませんね」

「あ! それ美味しいですよね! パンにちょっとだけチーズを乗せてみたり」

「うんうん。最高ですそれ、肌寒い日にぴったりの食事ですね。僕もここには買い物に来たんですよ、リアさんの話を聞いて僕もシチューを作りたくなりました」

 リアとレントが笑いながら食事談義に花を咲かせていると、いつも野菜を買っている八百屋のオークが、リアに茶化した様子で声を掛けた。

「いよお、赤毛の姉ちゃん! そいつは新しい男か?」

「ええ!?」

 リアは頓狂な声を上げた。首を勢いよく横に振れば、レントがきょとんとした顔でリアに声を掛けた。

「リアさん、王都に恋人がいらっしゃるのですか?」

「え、ちょっと! レントさんまで勘違いしないで下さい!」

 焦るリアを、オークの男はにやにやと見た。

「この赤毛の姉ちゃんはでっかいダークエルフの兄ちゃんとよく買い物に来るのさ。野菜をたっぷり俺から買ってくれる上客でね」

「えっ……リアさん、まさかゼルドリック様と……? そういう関係で?」

 何やら衝撃を受けているレントを前に、リアは真っ赤な顔でひたすら違いますと繰り返した。

「何だよ、照れなくたっていいじゃないか。仲が良くて恋仲に見えたけどね」

 オークがにやにやと笑うと、リアは顔を真っ赤にし口をぱくぱくと開いた。

(そ、そんな……私が、恋人だなんて! ぜひ恋人になりたいけど、想像したら照れちゃう……)

「リアさん、本当にゼルドリック様とお付き合いされているのですか……?」

 なにやら心配な様子で、レントはリアに聞いた。眉は下がり、声音は静かだ。ゼルドリックとリアが仲良く過ごすことを祝福していないように見える。リアは引っかかりを感じた。レントは何かをしきりに気にしているように思えた。

「えっ、ええと……それは違います、私はただの同居人です……」

「何だよ、つまらねえなあ」

 オークが呟くと、レントはほっと息を吐いた。

「リアさん、その……」

 レントは少し言い出しにくそうに言葉を紡いだ。

「ゼルドリック様から、何かされていませんか? その……身の危険を感じるものであったりだとか……」

 レントの問いの意図が分からずリアは目を瞬いた。

「えっと……? 特に問題ないです。良くしてもらっています」

「……そうですか」

 リアはレントの灰色の目に、悲しみのような色を見た気がした。

(あれ? 何か、変なこと言ったかな……)

「もし、何か困ったことがあれば。いつでも助けを求めて下さい。僕でも周囲のエルフでも。あなたの力になってくれそうな方に」

「えっ……ええ、ありがとうございます」

 リアは優しげな笑みをレントへと向けた。

「王都に来て間もない私のことを気遣って下さったのでしょう? レントさんは優しい方なのですね」

「優しいとはよく言われます」

 くすくすとリアが笑い、レントも笑い返す。二人の間に和やかな雰囲気が漂っているところ、唐突に黒いもやが現れた。

「随分と楽しそうだな……? リローラン、ここで何をしている」

「っ!」

 リアとレントの間に分け入るようにして、ゼルドリックが現れた。彼の眉は跳ね上がっており、口は引き結ばれている。リアはぱちりと目を瞬いた。

(あれ、機嫌が悪い…?)

 ゼルドリックはリアを背に隠すように立ち、レントを見た。その顔付きは厳しいものだった。

「レント=オルフィアンか。久しいな」

「……お久しぶりです、ゼルドリック様。お変わりないようで」

 レントは微笑みを向けたが、ゼルドリックの表情は一切和らぐことはなかった。同じ中央政府に勤めるエルフに対し、友好的とは言えない態度でゼルドリックはレントに接した。

「リローランに何か用か?」

「ええ、たまたま買い物に来たところリアさんを見かけたもので。二人で世間話をしていたのですよ。ね、リアさん」

 レントが声を掛ければ、リアはゼルドリックの背から出て、こくりと頷いた。

「ほう、君はリローランと世間話をする仲であったか。彼女は人見知りだというのに」

「そういえば、そうゼルドリック様からお聞きしていましたね。僕たちは歳も近いのですぐ打ち解けたんですよ。聞いていた通りの真面目な方で、僕も好感を持ちました」

「私が工場で働いていると、度々レントさんが来て調子はどうかって聞いてくれるのですよ。私が熱っぽいと言ったら、体調をこまめに気遣ってくれて……彼はとっても優しい方なのです」

「リアさんとはよく料理の話をするのです。僕とリアさんは同じ田舎育ちなので、色々話も合って……」

「今ではすっかり仲良しですよね、レントさん!」

 リアとレントは笑いあった。その様子にゼルドリックは顔をしかめ低い声で唸るように吐き捨てた。

「気に入らぬ」

「えっ?」

 リアにしか聞こえないような、静かな声。ゼルドリックが驚くリアの手をしっかりと掴んだ。

「レント=オルフィアン、リローランは私の庇護下にある。彼女に話があるなら私を通せ。リローランは王都に越してきてから日が浅く、様々な影響を受けやすいがゆえに。工場こうばの管理は君に任されているが、彼女自身のことは私に任されているのでな。過剰な心配は不要だ、このゼルドリック=ブラッドスターが付いている」

「ですが、ゼルドリックさ……」

 レントが言い終わる前に、ぶわりとゼルドリックの周りに魔力の渦が巻いた。それは魔力を感知できる者にしか見えない渦であったが、レントは自分に対する明確な威嚇と取った。

「え……?」

 レントがゼルドリックに気圧けおされ、言葉を紡げなくなると、ゼルドリックはリアの身体に腕を回した。

「それでは。私は彼女を屋敷に送り届ける」

「あっブラッドスター様! 野菜を買わないと……」

 リアが言い終わらない内に、ゼルドリックとリアは黒い渦に飲み込まれ、その場から姿を消した。レントは呆けていたところを八百屋のオークに声をかけられ、戸惑いつつも問題ないと返した。

「はあ、あのでかいダークエルフの兄ちゃん……相当赤毛の姉ちゃんのことが気に入ってんな。ありゃお熱だよ」

 オークの呟きに、レントは薄く誤魔化すような笑みを浮かべた。魔力で威圧された本能的な恐怖が、レントの背筋を震わせている。結局それから何も買う気が起きず、彼は市場を後にした。



 秋風に吹かれながら、レントはベンチに腰掛けた。ここは肌寒いと分かっているのに歩く元気が無かった。背筋は震え、脚も力なく笑っている。ゼルドリックによる魔力の威圧は、レントに強い恐怖を植え付けた。

(……ゼルドリック様は、いつ如何なる時も厳格なエルフだった。職務と礼儀を常に重視され、同胞のためならその身を砕くという、エルフの中のエルフだと称賛される。それにも拘らず……なぜ、ゼルドリック様は僕を威嚇した?)

 魔力で他のエルフを威嚇するなど、礼を失する行為。同じ中央政府に勤める同胞に対して向ける行為では決してない。レントは、礼儀を重んじるゼルドリックがなぜああいった行動に出たのか分からなかった。

 レントの脳裏に先程見た光景が過る。

 リアを背に隠し、身体に腕を回し、まるで己のものだと言わんばかりのゼルドリックの行動。

 ――あのでかいダークエルフの兄ちゃん……相当赤毛の姉ちゃんのことが気に入ってんな。

 オークの言葉が蘇る。

(ゼルドリック様は……リアさんに相当入れ込んでいる)

 レントは心臓が早鐘を打つのを感じた。冷や汗がぶわりと吹き出す。

(リアさんに触れた時、また彼女の未来を視た。リアさんに触れ、暴行を加える黒い手。特徴的な黒いもや。顔こそ見えなかったが、あれは……確かに、ゼルドリック様だと思う)

 レントは胸に手を遣り、必死に呼吸を落ち着かせた。

(駄目だ、許せない、あんな未来が訪れるのは! それに……)

 おかしいと感じたのだ。

 たまたま寄った市場で、微かではあるが何やら不自然な魔力の気配を感じる。魔力を抑えず、漏れ出るままに過ごしているような不自然さ。他種族に対して魔力酔いを引き起こさないように、エルフは通常、魔力を抑えながら生活するのが常識だというのに。

 魔力の元はどこかと探れば、そこにはリアがいた。なぜリアから魔力の気配を感じるのだろうかと、首を傾げた。

 しかし、ゼルドリックが現れてから気が付いたのだ。非常に、巧妙に、周りからは検知できないくらいに隠されてはいるが、ゼルドリックの魔力を直に浴びた自分は気が付いてしまった。リアと握手をした時に感じた魔力とよく似ていたのだ。

 リアの内には、ゼルドリックの魔力が流れている。それも大量に。ゼルドリックはわざと彼女に己の魔力を纏わせているのだと確信した。そして目的の分からないその行動に、レントは不気味さを感じた。

 リアは、ゼルドリックに対して随分打ち解けているように見える。もしかしたらリアは、ゼルドリックに恋情を抱いているのかもしれない。書き置きを毎朝残してくれるのだと笑った彼女の顔。その顔は本当に嬉しそうで、曇りのないゼルドリックへの好意を感じた。恋仲ではないとリアは言ったが、ゼルドリックもまたリアを気にかけているように思えた。強く執着しているように見える。

(厳格であった役人が礼を失してまで、リアさんを自分に近づけさせない理由は何だ?)

 何のために、彼女にあれほど強い魔力を纏わせている? 
 とっくに魔力酔いを起こしてもおかしくないほどの量を。

 そういえば、リアは熱っぽいと言っていた。あれは魔力酔いを起こしているせいなのではないか? 
 絶えず、ゼルドリックの魔力に晒されているために。

(あの魔力量……。凄まじい量だ。魔力探知を得意としない僕でも分かるほどに。あの量、体液の交換でも行わない限りは、……ん、体液……? まさか……)

 レントの脳裏に、先程視た悍ましいリアの未来が浮かぶ。

 レントは吐き気を催し口元に手を当てた。

 リアはゼルドリックの「愛玩動物」として、あの屋敷の中で飼われているのだろうか?
 身体を好き勝手に貪られ、魔力が滲み出した体液をたっぷりと注がれているのだとしたら……。

(駄目だ……それはいけない!)

 朧げで断片的だが、口に出すのも憚られる、悍ましく痛ましいリアの未来。
 それがすぐそこまで近づいているような気がした。

 レントは目を瞑った。額から出た汗が一滴、顔を滴り落ちていった。

 心優しく真面目で、仕事熱心なハーフドワーフの女性。
 リアの姿勢は、かつて共に暮らした人間の母の温かさをレントに思い出させた。

(リアさん、あなたは危険だ。すぐにゼルドリック様と離れた方がいい……)

(あなたは彼に、殺される)

 彼女の穏やかな微笑みを、エルフの薄汚い欲望でくすませたくなかった。王都に来て間もない彼女が、長年生きているダークエルフの毒牙にかかり、悍ましい目に合うことを何としても避けたかった。

(あんな未来を、迎えさせる訳にはいかない! 絶対に!)

 レントはベンチから立ち上がった。

 リアとの接触を増やし、断片的な未来についての手がかりを得なくては。そしてその未来を回避するために、何が出来るか考えなくては。いずれ、リアとゼルドリックを離さなくては。それにはゼルドリックからリアを救い出す大義名分が必要だ……。速やかに、ゼルドリックに気付かれることなく、動かなくては……。

 レントはずっと俯き、考えながら歩いていた。
 彼の上空を、何羽もの黒い鷹が見張るように旋回していることには気が付かなかった。


 ――――――――――


「っ、ブラッドスター様、一体どうしたんですか!?」

 リアはベッドの上に押し倒されていた。赤いシーツにふわりと身体が沈み込み、手首はゼルドリックに掴まれて逃げられない。

「あ、あの……お野菜を買わないと、今日はシチューを作り、たくて……」

 彼は何も言わずにリアを見据えている。影になって顔がよく見えない中で、青い瞳だけがやたらに輝いている。リアはゼルドリックの頬に手を添えた。彼の耳がひくりと動いて、リアに甘えるように顔を擦り寄せた。

(何か不安に思っている?)

 リアはゼルドリックが少し項垂れているように見えた。彼を安心させるように頬を摩る。

「ブラッドスター様、何かありましたか?」

 リアが気遣わしげにゼルドリックに声をかければ、ゼルドリックは溜息を吐いた。リアの手首を掴む手に、きゅっと力が込められる。

「君が……君が。レント=オルフィアンとあんなに仲が良いとは思わなかった」

「……レントさん?」

「エルフを前にしてまた君が傷付くことがあったら堪らぬ。そう思い、急いで君の元まで転移したのだ。君とあやつが仲良く話しているのを見てそれは杞憂だと分かった。だが……ファーストネームを呼び合うまでに仲が良いとはな」

 ゼルドリックはリアに顔を近づける。その近さにリアは思わず顔を赤らめた。彼の瞳に何やら昏いものが宿っている気がして、リアは顔を逸らしながら急いで釈明をした。

「えっと……レントさんはエルフの方にオルフィアン姓が多いので、ファーストネームで呼んで下さいって……」

「ふん、なるほどな……そんな理由で」

 ゼルドリックは顔を顰めた。リアの答えが気に入らない様だった。

「あの……それが何か?」

「気に入らぬ。あやつより俺の方が、君と仲が良いというのに」

「えっ?」

 リアは顔を真っ赤にした。
 その言い方はまるで、レントに嫉妬している様ではないか?

「同じ姓が多いという理由であやつが君に名を呼ばせるならば、俺も同様だ。ブラッドスターという姓はエルフの中に何百人もいる。ゆえに、君も俺のファーストネームを呼べ」

「えっと、それでは……ゼルドリックさま」

 リアは照れながら彼の名を呼んだ。夢で睦み合う時の呼び方。名を呼べば、快楽を思い出して自分の身体が疼くようで、小さく足を擦り合わせた。要求通り名を呼んだというのにゼルドリックは満足せず、リアに更なる要求をした。

「様は要らぬ」

「ゼルドリック……さん?」

「違う! さんも要らぬ。ゼルドリックと呼べ」

 ゼルドリックは口の端をくいっと曲げる笑みを浮かべた。あたふたするリアを揶揄からかって楽しんでいるようだった。

「そ、そんな! 呼び捨てなんて駄目です! 中央政府のお役人様に対して、そんな……」

「関係ない。そんなことを言ったら君も王女召抱えの職人様ということになる。我々の立場は対等だ。さあ、呼べ」

 ゼルドリックは高圧的にリアに命じた。何を言ってもこの役人は聞いてくれなさそうだし、呼ぶまで自分の上から退かない予感がした。リアは仕方なく目を瞑って、観念した様に小さく呟いた。

「ゼルドリック……」

「ああ……いい、な。実にいい……もう一度」

「ゼル、ドリック……」

 ゼルドリックは自分の名を呼ぶ声の余韻を味わうようにゆっくりと目を閉じた。

「君に名を呼んでもらえるのは距離が縮まったようでとてもいい……だが、できればもっと親しい呼び方で呼んで欲しいものだ。君にしか許さない呼び方で……」

 ――ゼルと、呼んでくれないか。

 リアの耳元に口を寄せ、彼は懇願した。リアは頭が熱くなるような感覚を覚えた。

(ゼルだなんて。……そんな呼び方、まるで恋人の様じゃない……)

「どうした? 呼んでくれないのか? リア……」

 赤い髪を撫でながら、ゼルドリックはリアの名を甘く呼んだ。あの夢の中の、甘い睦み事を想起させるような呼び方に、リアはぴくりと身体を震わせた。

「あっ……だめ、です……」

「ゼルと、呼んでくれ……。呼んでくれたら、君ともっと仲良くなれる気がするのだ」

「う、うぅ……恥ずかしいっ……」

「大丈夫。恥ずかしくなんてないさ。呼んでくれ、リア……」

 ゼルと。ゼルドリックが口を動かしながら黒く長い指でリアの唇をなぞれば、リアは瞳を潤ませた。

「ゼ、ル……」

 リアが照れながら呼ぶと、ゼルドリックは息を呑み、リアを抱きしめた。

「ひゃっ……近い、近いです!」

「許せ。君を抱きしめていたい……君に、そう呼んでもらえる時が来るなんて! 俺は嬉しい……ああ、それからだ。君のその堅苦しい敬語は要らぬ。これからは気さくに話しかけてくれ。いいな?」

 ゼルドリックは口早に喋り、リアを抱きしめる腕の力を強めた。その声は弾み、心から嬉しく思っているようだった。

「リア、リア……」

「ゼル……ゼル、さま……放してくださいっ」

「様も敬語も要らぬと言ってるだろうに」

 ゼルドリックは尚更身体を密着させた。彼の纏うミントの香りが、リアの頭をくらくらとさせる。

「ゼ、ゼル……本当に、そろそろ、放して……」

(は、恥ずかしい……こんなの、こんなの恋人みたい……)

「リア……もう少しだけ……」

 ゼルドリックに抱きしめられたまま、リアは羞恥の呻き声を上げた。ゼルドリックに抱きしめられていなければ、顔を覆ってごろごろと転がってしまいそうだった。



 それから。ベッドの上でゼルドリックの作ったスープを手ずから飲まされながら、リアは彼の指導を受けていた。どうしても敬語の抜けないリアを、ゼルドリックがしつこく矯正する。顔を真っ赤にして吃るリアを、ゼルドリックは赤い髪を撫でたり、頬を優しく突いたりしながら笑って揶揄からかった。

「リア、もう一回言ってみろ」

「あ、あ……ゼル、あの……このスープ、美味しい……ね」

「良い子だ。敬語も抜けてきたじゃないか?」

「きゃああ……恥ずかしい……」

「ははっ……こんなことで恥ずかしがって……愛いやつめ」

 ファーストネームを呼び合い、口調を打ち解けたものに変えた途端に、尚更二人の距離は縮まった。
 お互いの存在を確かめるように手を絡ませ、何度もお互いの名を呼び、その夜も色々な話をした。

 蕩けるような時間。恋い焦がれる男が近くにいて、自分の髪を優しく撫でている。限られた者にしか呼ぶことを許さないであろう愛称を、自分は呼ぶことができる。嬉しい。嬉しい……。もしかしたら自分は、あの夢の続きでも見ているのだろうか?

(私、今とても甘い生活を過ごしてるわ。まるで蜂蜜みたいな……)

 ゼル、と彼の名を舌に乗せる度に、リアは確かな甘さを感じた。とろけるような刺激が心を優しく包んだ。幸せだった。本当に幸せだった。叶うのならば、この蜂蜜のような時間に浸かり、ずっとこうしてゼルドリックと過ごしていきたいと思った。


 ――――――――――


「ふ、あっ……ああ、あっ……」

「リア、リア……! 可愛いな……」

「ああっ……気持ちいい……いいよぉ……」

 リアは、今日も淫らな夢を見ていた。天井に這う赤いつる薔薇の花びらが雨の様に降り注ぐ中、自室の大きなベッドの上に横たえられ、黒の王子様と睦み合う。秋の寒い夜、暖を取る様にお互いの身体をぴたりとくっつけ合い、快楽に浸る。

「はっ……ゼルドリック様……そこ、駄目っ……あああああっ……」

 尖りきって張り詰めた肉芽を擦られ、リアは悲鳴を上げた。悲鳴を上げるリアを尚更責め立てるように、ゼルドリックは指で肉の芽を優しく上下に擦り上げた。鋭い刺激に、リアは涙を流して身体を捩らせる。

「悪い子だ……あれだけ教えたのに。俺のことは何と呼ぶのだ? リア……」

 じゅくじゅくと、粘り気のある水音が響く。一番弱いところを責め立てられ、達した後もなお擦り上げられる被虐に身を震わせながら、リアは必死に彼の名を呼んだ。

「ああ、ああああっ……ごめんなさっ……ぜる、ぜるぅ……!」

「そう、出来るじゃないか。これから俺のことはそうやって呼ぶのだ。君だけに許した呼び方なのだから……たくさん呼んでくれよ?」

「ふ、ううううっ……お願いっ……もう、もうっ……!」

「ああ、今かせてやる。……リア、好きだ……」

「うん、わたし、もっ……すき、すきっ、ふ、ああああああああっ……」

 リアはゼルドリックへの恋情に溺れながら甘い極みを迎えた。夢の中のゼルドリックから好きだと言って欲しいと言われてから、リアは頻繁にゼルドリックへ愛を囁いた。夢の中の彼が喜ぶようで、自分もまた気持ちが良くて。愛を囁きあいながらの交わりは、癖になる良さがあった。

「あ、あ……ゼル、ゼル……」

「リア……?」

 リアは絶頂の余韻に身体を痙攣させながらも、ゼルドリックの身体に手を伸ばした。彼の耳に舌を這わせ、柔らかく息を吹き込めば、ゼルドリックは色の籠もった、震えた息を吐き出した。

 潤んだ目を合わせながら、リアはゼルドリックの陰茎に手を伸ばした。媚肉と肉芽を執拗に擦られ達したことは数多くあれど、未だにうつろに迎え入れたことのないそれ。リアも、彼の気持ちいいところを探りたかった。

(ゼルにも、気持ちよくなってほしい)

 リアは太い血管が走る黒いそれにゆっくりと顔を近づけ、柔らかく口付けをした。ゼルドリックの身体がぴくりと震える。リアはゼルドリックがしたように舌を伸ばし、今から彼の陰茎を犯すことを示した。

「あ、あっ? ……リア、君は何を……」

「あむ……れろっ……んっふ……ぜるぅ……」

 そして、彼の男根を下から上へ、ねっとりとなぞりあげた。ゼルドリックのぬるついた先走りがじわりと溢れ、リアの顔を汚していく。慣れない味だとリアは思ったが、愛しくて堪らないゼルドリックの大事な部分だと思えば、いくらでも舐められる気がした。彼に、もっと気持ちよくなってほしいと思った。

「は、あっ……ん、んんっ……」

「はあっ……ああ、あ……リア、そんな……君が、俺のそこを……信じられない……」

「ちゅ……ふう……ん……」

「ああ……」

 上目遣いでゼルドリックを見れば、眉を寄せ、絶えず荒い息を吐いている。黒く尖った耳がひくり、ひくりと動いて、撫で付けられた髪は乱れ、前に垂れ下がっている。リアは快楽に耐えるゼルドリックを見て、心が満たされた。この美しく強いダークエルフを乱れさせているのが自分だと思うと、独占欲が満たされた。

 手を添え、ゼルドリックの陰茎に刺激を与えるように擦る。すると彼は、大きな身体を小刻みに震えさせ始めた。

「あっ……リア、リア……もう放してくれ、…このままでは……」

「んっ……ちゅ、んむっ……は、あっ……ゼル、気持ちよさそうね……」

「く、う……リア、もう限界だ……頼む、本当に放してくれっ……」

「ふふっ……あむっ……」

 リアは彼の願いを無視した。自分がいつもされているように、自分の手で彼を絶頂に導いてしまいたかった。唾液をたっぷりと舌に纏わせ彼の陰茎を口の中に含む。舌を這わせ、唇をすぼめて刺激を与えると、彼はリアの頭を掴み、呆気なく絶頂した。

「ああっ……う…うう……! だめ、だ……リア……リア……!」

「……んぐっ……んんっ……」

 リアの口の中から顔にまで、ゼルドリックの白濁が放たれる。生暖かく独特の臭いのするそれを味わって、リアは唇を歪めた。

「はあっ……はあっ……リア、君は……」

「ふふっ……ゼル、いつも私の言うこと聞いてくれないから、おしおき……」

 リアが白濁を豊かな胸に垂らして笑うと、ゼルドリックは呆けた様にリアを見た。リアはその顔を見て胸が空くような心地がした。高慢な役人の皮を剥いで絶頂に導いたのが自分だと思うと、彼の中に自分という存在を強く刻みつけることが出来た気がした。

(私の中にも、こんな感情があったのね)

 支配欲。独占欲。嗜虐欲。征服欲。
 ゼルドリックを自分のものにしたい。

「ゼル……好きよ、乱れたあなたは……とっても綺麗……」

「リ、ア……」

 頬を上気させ、自分の欲に塗れながらも唇を歪める目の前の女に、ゼルドリックは興奮から強い目眩を覚えた。

「君が、もっと欲しい……リア、リア……好きだ、大好きだ……」

「うん、私も、大好き……」

(ああ、彼が本当に、私の恋人だったらいいのに……)

 絶頂を迎えたばかりだというのに、ゼルドリック再び男根をいきり勃たせた。黒く大きなそれを腹に擦り付けられながら、リアはゼルドリックの逆襲を受けた。胸を嬲られ、股を執拗に擦られ、耳や首筋を舌で犯され、何度も何度も絶頂に追いやられる。甘く、身体がばらばらになってしまいそうな程の快楽に浸りながら、リアは切ない願いに目を閉じた。


 ――――――――――


 ある日の夜、夕食を終えリアが自室で寛いでいると、扉が叩かれた。

「リア、今日もお疲れ」

 リアが扉を開けると、ゼルドリックが紅茶を持って入ってきた。彼は風呂を済ませてきたのか、柔らかい石鹸の香りを漂わせていた。

 自分と同じ石鹸、自分と同じ香り。胸がとくりと跳ねる。何だか照れくさくて、リアは誤魔化すように微笑んだ。

「あなたも疲れたでしょう、ゼル」

 慣れるのは早いもので、リアはゼルドリックに対して普通に話せるようになった。彼から紅茶を受け取り、テーブルに座るよう促せば、彼はベッドに座りたいと申し出た。リアはベッド脇のサイドテーブルに紅茶を置いて、そしてゼルドリックの横にそっと座った。

「君も随分と俺に打ち解けてくれたな」

 ゼルドリックはリアの肩をそっと抱き、己の身体に引き寄せた。ダークエルフからの接触に、リアはびくりと身体を跳ねさせた。

「っ!? ゼル、ち、近いわ!」

「君に触れていると一日の疲れが解けていく。癒される」

 リアの髪に顔を埋め、うっとりと目を閉じながらゼルドリックはそう溢した。彼から漂う石鹸の香りが濃くなる。リアはばくばくと跳ねる胸を抑えた。しばらく抱きしめられたり、髪の香りを嗅がれたりして、やっとゼルドリックの腕から解放されたリアの顔は真っ赤だった。ゼルドリックは揶揄うように笑い、リアの低く可愛らしい鼻をちょんとつついた。

「すぐに顔が赤くなるのは相変わらずだ」

「あ、あなたがっ……あなたが私にすぐ触ってくるからよ……」

「俺は君ともっと仲良くなりたいだけだ。だからそう逃げるな」

「ううっ……」

(エルフって……皆こんな風に真っ直ぐなの? それともゼルが特別なだけ? 恥ずかしいっ……)

 このダークエルフは打ち解けてからというもの、情熱的な言葉でリアを惑わせる。思わず勘違いしてしまいそうな言葉を受け流して、リアは必死に平静を保った。

「ところで……。リア、君に贈りたいものがあるのだ。これを着けて欲しい」

 ゼルドリックは持っていた包を開け、そこから黒いチョーカーを取り出した。薔薇のレース模様に、きらきらとした青い貴石が付いたチョーカー。石の輝きから、リアは一目でそれが高級なものだと見抜いた。

「ゼル……これって、すごくお高いものなんじゃ……」

「そう高いものでもない」

「でも、これサファイアでしょう? 複雑なカット。この色でこの大きさなら、相当の値段がする筈だわ」

 リアは戸惑った。

 ゼルドリックは、頻繁に物を渡してくる。菓子や茶なら素直に受け取れるが、高級と分かる服や化粧品、装身具、身体に塗る香油等を手渡されると怯んでしまう。自分は彼に何も返せていないのに……。

「私、あなたからたくさん素晴らしいものを受け取ったわ。でも私は、あなたに何も返せていない……だから」

 リアが思わず断るように手を挙げると、ゼルドリックはひしっとリアの手を掴んだ。強さのある青い瞳が、リアを真っ直ぐに見つめる。

「何を言う? 俺は君の手料理を何度もご馳走になった。はずれの村にいた時もそうだ、君の大事な朝食に手をつけた。屋敷だって直してくれているだろう」

「でも、そんなことはあなたが贈ってくれたものに比べれば……些細なことだわ」

「違う、俺にとっては何より嬉しいことだ。リア、君が俺の傍にいること……それこそが、俺への褒美なのだ、一番嬉しいことなのだ……」

 青い瞳が複雑に煌めく。リアはそれ以上何も言えずに口を噤んだ。ゼルドリックはリアの首筋にそっと手を添え、黒いチョーカーを着けた。

 柔らかく、負担の掛からない素材であるのに、少しだけ首が絞まるような感覚する。リアはどういう訳か、背筋が震えるのを感じた。

「ああ……いい。よく似合っている。君の白い首に……黒いそれはよく映える」

 恍惚が滲む声音。シャンデリアの光に照らされて、陰になったゼルドリックの顔。青い瞳だけがリアの前で爛々と輝いて、だがその輝く瞳の中に少しの昏さを感じ取ったリアは、思わず彼から目を逸らすように俯いた。首に手を当てると、硬い石に手が当たる。リアは自分の首で強く輝いているであろうサファイアを、そっとなぞった。

(黒と青。まるで、あなたの色ね。ゼル……)

 チョーカーなど、今まで着けたことがない。僅かに違和感を覚えるのはそのせいなのだとリアは自分に言い聞かせたが、頭の奥底で、僅かに警鐘が鳴るのを感じた。

(……チョーカーを贈るのは、独占欲の表れだと本で読んだことがあるけれど、本当なのかしら。ゼルは、私のことをどう思っているのだろう……)

 首に手を添えられ、何かに絡め取られるような心地がする。ぞわぞわと背筋が震え続けているのは何故だろうかと、リアは思った。

(嬉しい? 恥ずかしい? ……それも、そうだけど。……少し、怖い気もする……。どうして? どうしてこんなことを思ってしまうの? 彼は私のために、こんな高いチョーカーを贈ってくれたのよ。失礼よ、こんなことを思うだなんて……)

(でも……彼は。彼はどうして私に贈り物をし続けるのだろう。ただの友人にしては、混ざり血に対する気遣いにしては、過剰な気もする……私は、彼の傍にいて何をすればいい? いるだけでいいと言ったけど、私はそう思えない。彼はもしかしたら……何かを、私に求めている?)

「リア? どうした?」

 ゼルドリックが俯いたリアの顔を覗き込む。リアははっとした。そして微笑み、自分の戸惑いを誤魔化した。

「あ、いいえ……。あのね、このチョーカー、あなたの色みたいだと思ったの。黒と青。特にサファイアなんて、あなたの瞳の色によく似ているわ」

「っ……」

 ゼルドリックが息を呑み、リアから勢い良く顔を逸らした。耳をひくひくとさせ、何やら悶えるゼルドリックを前に、リアは首を傾げた。

「あ、ああっ……そうだ、そうだな……俺の色だ」

 ゼルドリックは嬉しそうに笑った。

「リア、君にはいつもこのチョーカーを着けて欲しい。外に出る時は、必ず着けるのだぞ……」

 うっとりとした声音を聞いた後、リアはゼルドリックに抱き締められた。秋の寒さを感じさせない位、彼の胸は温かい。自分を見上げるリアの唇に、ゼルドリックは黒く長い己の指を添え、労るように撫でた。

「ふ、うっ……」

「リア、可哀想に。君の唇は少し乾燥している……」

 ゼルドリックは紅茶の横に置かれた瓶から、匙で薔薇の蜜を掬い上げた。リアの手入れの甲斐あってなお美しく咲き誇るようになった大量の薔薇たちを、彼は器用にも香油や蜜に加工した。芳しい、頭がくらくらとするような甘い香りの蜜を、匙から指に落とす。ゼルドリックは蜜を纏わせた己の指で、リアの少し乾いた唇をじっくりとなぞった。

「あ、ゼル……」

 慄くリアの唇に、薔薇の蜜が流れ込んでくる。粘り付くような甘さ。恥ずかしくて堪らないのに、リアはゼルドリックから目が離せなかった。長く黒い睫毛、深く青い瞳。敏感な唇から伝わる指の温度と、快楽。それは毎夜見る「黒の王子様」と睦み合う夢を想起させた。身体がどんどんと熱くなり、リアは頬を赤らめた。

「リア……君のお陰で、薔薇の香油も蜜もたっぷりとある。これは肌に塗ると良いんだ。王都の冬は厳しく長い。君が肌を痛めることがないように、今度は唇だけではなく、肌にも塗ってやろうな……」

「あっ……」

「大事にしてやる……リア。俺の手元で、誰からも、何からも傷付けられることのないように、ずっと……」

 ゼルドリックの声は、絡みつくような、粘り付くような感じがした。好きな男からの甘い言葉。それを、リアは手放しで喜ぶことが出来なかった。

 僅かだが、確かに感じた恐怖と鳴り響く警鐘が、リアの心に刻みつけられる。首に着けられたチョーカーから、ねっとりとした熱が伝わってくるようだった。

 痺れるほどに甘い蜜が、また流れ込んでくる。くらくらとした甘さに、リアはそっと目を閉じた。
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