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第三章
65.愛するあなたに、赤い薔薇を贈る
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夕暮れの美しい日だった。夏の暖かい空気を含んだ風が、ゼルドリックの頬を撫でる。強い夕日に目を眇め、ゼルドリックは役場前の噴水に目を向けた。かつて己の屋敷にあったそれはどこまでも村に似合わなかったが、ここが栄えていくにつれ、豪華なその噴水も悪目立ちすることはなくなった。
その噴水を見てリアとの思い出が蘇り、ゼルドリックは目を潤ませた。
(近頃、特に涙脆くて仕方がない)
ゼルドリックは込み上げる悲しみを振り払うように首を横に振った後、自分の家に向けて歩き始めた。向日葵と夏薔薇が咲く道を歩み、高台の方へと進んでいく。道すがらリアとの思い出が次々に蘇ってきて、ゼルドリックは胸を押さえながら、苦しみの中一歩一歩進んだ。
(苦しい。生きることが辛い)
生きる、と約束を交わしたというのに、ゼルドリックはリアの後を追いたくて堪らなかった。
心から愛していた女の欠落は、日々大きくなる。自分を飲み込むような冥闇にゼルドリックは悶え苦しんだ。
苦しみに耐えながら歩き、そしてゼルドリックは自分の家の扉に手を掛けた。
ふと、一陣の風が吹く。ゼルドリックが強い風に振り向くと、庭に誰かが立っているのが見えた。
(誰、だ? ……奇妙だ。全く気配がしなかった。いつから庭にいた?)
中央政府の役人らしからぬ、明るさと朗らかさを持った水色の髪の男。
彼は鍛冶場と、赤いつる薔薇に囲われた墓石をぼんやりと見ている。ゼルドリックは彼に駆け寄り声を掛けた。
「何か用か」
「……!」
エルフの男は急いで振り返り、そしてゼルドリックを見て元気に挨拶をした。
「町長、こんにちは! いえ、この時間はこんばんはと言ったほうがいいのでしょうか」
「ああ、どうも。ところでなぜここにいる? 視察の日は来月の筈だが?」
「ええ! もちろん来月です。今日はこの町に遊びに来たのですよ」
青い目を細め、男は屈託のない笑みを浮かべた。
「前回の視察で、山一面にパルシファーが植わっているとお聞きしまして。ぜひ近くで見てみたいと思ったのです! 町の人に聞いてここまで来たのはいいんですけど、立派なお屋敷と、綺麗な薔薇を見つけたものですから、つい見入ってしまって……あ、別に見てただけで、怪しいことをしようとしている訳ではないですよ!」
焦って手を振る男を見て、ゼルドリックは薄く笑った。
「そうか、そういうことなら別にいい。客人は歓迎だ」
「良かった、怪しまれたらどうしようかと……。そうだ、ここは町長の家なんですよね?」
「ああ」
「この鍛冶場、とっても立派ですね。鍛冶屋、リローラン……」
エルフは青銅製の看板に目を向けた。鎚と宝石の意匠が施された可愛らしい看板。磨かれた看板と墓石を見て、彼は何かを察した様だった。
「……大切にされているのですね」
慈愛の込められた、優しい声音だった。その声はゼルドリックの心を揺さぶり、リアの欠落を強く意識させる。心を襲う鋭い痛みにゼルドリックは思わず俯いた。
「マイム殿、と言ったか」
「はい町長。マイム=ブラッドスターです」
己とよく似た青い目のマイムは、はきはきと答えた。
「君は良い役人だ。年若くも立派に仕事をこなしている。この町を実際に巡り、熱心に視察を行ったのはこの数十年、君しかいなかったよ。礼を言いたい」
「ああ、ご丁寧に! こちらこそありがとうございます」
マイムが握手を求めようと、朗らかな笑みを浮かべゼルドリックに手を伸ばす。
ゼルドリックはその手を握り込み、彼の青い瞳を見据えた。
「……町長?」
強く握り込まれたままの手に、マイムは困惑を露わにした顔を向けた。
「握手からは、様々な情報を得られる」
マイムの青い目をじっと見据えたまま、ゼルドリックは低く硬い声を出した。
「心理状況。職業。使う得物。相手への感情。場合によっては握手ひとつが命取りとなる場合がある。戦闘に優れた者ほど利き手での握手はしないものだ。なあマイム、お前の利き手は右だな? なのにわざわざ左手を出すとは、俺に何か隠し事をしているのではないか?」
ゼルドリックの纏う雰囲気が敵対的なものに変わる。ぎりぎりと握り込まれる己の手。マイムは自分を強く見据えたまま微動だにしないゼルドリックに、曖昧な笑みを浮かべた。
「や、やだなあ町長。僕の利き手は左ですよ。本当です」
「まだ誤魔化すか? 右手の方が指が太いだろうに。利き手の指にはたこもあるようだが」
「……よく観察してますね」
彼の一挙一動を見逃さないとでもいうように、ゼルドリックは脅すように彼に顔を近づけた。
「今の俺は魔法を使えない。だが魔法を使えない状況でも、敵の不意打ちに対抗できるように中央政府でそれなりの戦闘訓練を積んできた。相手の気配を察知することにも長けている。お前は静かだ。静かすぎる。まるで気配がしなかった。おそらく、気配を消すために遮蔽魔術を施しているな? ……何のために?」
「……」
「俺が気が付けなかったということは、お前は相当の手練だ。仕事に慣れていない若いエルフというのは見せかけの姿だろう。なあ、マイム。魔法が使えなくても、俺はそれなりにお前を手こずらせると思うぞ?」
ゼルドリックの言葉に彼はサファイアの如き美しい青い目を細め、唇を歪めた。
「素晴らしいですね、ゼルドリック様。筋骨隆々の身体は細くなってしまったけれど、鋭い眼光と感の良さ、洞察力は今も全く衰えていない」
青年はくすくすと笑った。わざと酷薄さを滲ませたような声だった。
「ふふっ、本当に怖ろしいエルフだったのですね、あなたは……。敵わないなあ、こんなにすぐ怪しまれちゃうなんて嫌になりますね」
「何のためにここに来た? 円卓の差し金か?」
「上層部? いいえ? ゼルドリック様を円卓に関わらせる訳がない」
マイムは悪戯そうな笑みを浮かべた。
「奇妙な言い方をしおって。なら何だ? なぜ俺の元にやって来た?」
「さあ、何だと思います?」
マイムは身を委ねるように目を瞑り、ゼルドリックの手に右手を重ねた。
「握手から、相手への感情を読み取ることもできるのだと言いましたね。あなたに対する敵意が、僕の手から感じられますか?」
「……」
ゼルドリックはマイムの右手を見た。自分の手に温かな掌がぴとりとくっつけられている。青年の手からは刺々しい雰囲気や殺気のようなものを一切感じなかった。
(……むしろ)
打ち解けた、親しみのような感情が伝わってくる。
ゼルドリックはその奇妙さに、マイムの顔をじっと見つめた。
「……お前は一体?」
「ふふ、驚かせたかったんです。あなたがあんぐりと口を開けるところを一回くらいは見たいなって、そう思ったんですよね。……はあ、もうバレてしまったしこの喋り方も止めようかな」
青年は再び、優しく慈愛の込められた声を出した。
不意に、目の前のマイムに妻の微笑みが重なる。
ゼルドリックは強い夕日が幻覚を見せたのかと思い、眩しさに目を眇めた。
「嘘。全部が嘘。騙してごめんなさい」
「……何がだ?」
「本当は南部じゃないの。私は北部の出身よ。男でもないし、髪も目も青くはないわ」
エルフは己の身に掛けた遮蔽魔術と化け術を解き始めた。
薔薇のつぼみが綻ぶように、一枚一枚遮蔽魔術が剥がれ落ちる。
ゼルドリックは大きく目を見開き、目の前のエルフを食い入るように見つめた。
「あなたのサファイアのような目が恋しかったから真似てみたの。中々そっくりだったでしょう?」
(……まさか)
「青い髪と青い目の、背丈の高い男のエルフ。私と正反対の姿を演じるのは中々楽しかったわ」
水色の髪と青い目が、赤い夕日に染まる。
パルシファーの綿毛の如くふわふわとした長い髪が、風に美しく靡く。
「はあ。ミーミス様に遮蔽魔術を教えてもらって、メルローちゃんに化け術を教えてもらって、オリヴァー様の弟子にもなって、きつい任務も必死でこなして……。今まであなたを驚かそうと必死に頑張ってきたのに。まさか握手で見抜かれるなんて無念だわ」
(この声は……)
背の高い男の姿が砂のように消えていく。光の粒子が去った後、背の低い女が現れた。
愛おしい背丈。大斧を片腕で振り回していたとは思えないほどの小さな身体。
「私はオフィーリア=オルフィアン。リア、と呼んでね」
赤い髪の姫君が、微笑んでいる。
パルシファーの綿毛を思わせるふわふわとした長い髪。赤い大きな目。低い背。豊満な体つき。低い鼻。そばかす。高く柔らかな声。優しげな目元。
オフィーリアと名乗ったその女は、記憶の中の姫君とそっくりだった。
ただひとつ異なるのは、その耳が長いこと。
白く長い耳が、赤い髪から可愛らしく突き出ている。耳をひとつひくつかせ、彼女は慈愛の込められた目でゼルドリックを見た。
「リア……?」
ゼルドリックの見開かれた目から涙が溢れ、ぼたぼたと滴り落ちる。彼は目の前に現れたエルフに釘付けになり、瞬きも忘れ彼女の姿を見つめた。
色褪せた世界が色を取り戻していく。欠落に苦しんでいた心に、暖かな灯火が宿る。
「ふふっ……。少しは驚いてくれたかしら? 子供たちもね、皆私を見て驚いたわ。当然よね、ハーフドワーフの母親がエルフに生まれ変わって戻ってきたんだから」
「……リ、ア……なのか? 本当に? 戻ってきて、くれたのか……」
ゼルドリックは震える声で尋ねた。掌の中の小さな手を強く握り込む。
夢だとしても、決して彼女を放したくなかった。
「ええ、あなたのリアよ。ゼル」
リアはにっこりと笑った。ゼルドリックの宝物である満面の笑みを向けた。
「夢じゃないよな? そうだって言ってくれ! 夢だったら、俺は耐えられない……」
顔をくしゃりと歪めて尋ねるゼルドリックの手を、リアはぎゅっと握り込んだ。
「夢じゃない。私はここに戻ってきたの。感じるでしょう? 私の温かさを」
小さな白い手。柔らかい掌の感触。己の手に優しい温かさが伝わってくる。
ゼルドリックの中にリアとの思い出が一気に蘇り、彼は溢れる想いのまま腕を伸ばした。
「ああっ……リア、リア、……リア!」
リアの身体が強く抱き締められる。ゼルドリックはリアの体温を確かめるように掻き抱き、そして声を上げて泣き始めた。リアは夫の背を優しく摩り、震える彼を慰めるように腕を回した。
「会いたかった! 会いたかったんだ、ずっと、ずっと、ずっと……! 俺がどれほど寂しかったか、君のいない世界がどれほど色褪せて見えたか……! 戻ってきてくれ、どうかもう一度会わせてくれと、毎日祈りを捧げていたんだっ……リア、リアっ……」
「……うん。ずっと、ゼルの感情は伝わっていたわよ……。苦しいって、寂しいって……。」
リアもまたぽろぽろと涙を溢れさせながら、ゼルドリックを強く抱き締めた。ゼルドリックの着ける罪人の枷に、リアの右手が伸ばされる。彼女はそれをゆっくりとなぞった。
「百二十七年よ、ゼル。本当に長かったわ。私ね、あなたが私と出逢った年齢まで鍛錬をして、強くなってから会いに行こうって決めてたの。すぐにでも会いに行きたかったんだけど、あなたはまだ上層部から狙われている。だからゼルを守れるような力を身に着けたかったの。一人のエルフとして、強大な力をもつあなたに追いつきたかった……」
「リア……君も、俺に会えなくて寂しいと思ってくれていたのか……?」
「当然よ……。毎日死にたいって考えている夫のことが気がかりで仕方なかった。私の墓石を抱いて啜り泣くあなたが、痛ましくて仕方なかった。ずっと心から血を流していたわ。……ああ、ゼル。私のゼルドリック……。遂にこの時が来たのね。……こうして抱き締めることができて、本当に嬉しい」
健気なリアの言葉に、ゼルドリックは心をまた大きく震わせた。
そして彼女にずっと言いたいと思っていた言葉を、大きな感動を込めて囁いた。
「……リア」
「ん?」
「おかえり。おかえり……リア」
ゼルドリックは頬を涙で濡らしながらも、柔らかく笑んだ。リアは顔を紅潮させ、夫の笑みを見つめた。甘やかな黒の王子様の微笑みが、リアの心に安らぎを与える。
「……ただいま、ゼル」
風が吹く。
山に植えられたパルシファーの真っ赤な綿毛が、風に乗ってふわふわと漂う。
ゼルドリックとリアは空を見上げ、夕焼け空の下、風に流れていく赤い綿毛を見た。
「奇跡」
ゼルドリックがそう呟くと、リアはそうねと笑った。
「ねえゼル。神様って本当にいるのね」
「ああ。女神はもう一度、俺たちに奇跡を起こしてくれたのだな」
リアは夕焼けに目を眇めながら、飛んでいく綿毛をきらきらとした目で見つめた。梯子のように見える赤い光芒が、天と地を夕焼け色に染めていく。
「夏日の、こんな強い夕焼け空の日だったわね。あなたは私をいきなり抱き込んで、髪の匂いを嗅いで、髪と顔の境目が分からないくらい真っ赤だって言ったの」
「よく覚えているな」
「覚えているわ。私だってあなたを心の底から愛している。あなたにかかわる思い出は、全て胸に留めておきたい。……ねえ、ゼル。こっちを向いて」
リアは光を受けて黄金色に輝くゼルドリックの頬に手を添えた。
「薔薇を贈ってくれてありがとう。ゼルのくれた薔薇は、私の拠り所だった。どんなに辛くても、どんなに苦しくても、あなたが私を大切だって思ってくれるから頑張れたの。この薔薇が、私をゼルの元へ呼び戻してくれた」
自分の胸に白い手を差し込み、リアは青い契りの薔薇を取り出した。
光り輝く粒子を纏う、美しく咲き誇る薔薇を。
「ゼルは私を愛してくれている、魂を削って契りの薔薇を創り出すほどに。私も、同じよ。私もあなたを深く深く愛している。ねえ、贈りたいものがあるの。受け取ってくれる?」
「何だ?」
ゼルドリックが優しく尋ねると、リアは潤んだ赤い瞳をゆっくりと閉じた。
万感の想いを込め、胸奥から紡ぎ続けた恋情の結晶を取り出す。
「それは……!」
「ええ、私も創ってきたわ。禁呪だからね、バレないようにこっそりと……」
リアが取り出したのは契りの薔薇だった。赤い赤い花びらを持つ、美しい薔薇だった。つぼみのままの薔薇がゼルドリックに差し出される。リアはうっとりとした目をゼルドリックに向け、愛の言葉を囁いた。
「ゼル。私の王子様。あなたを愛しているわ。また私と契ってくれる?」
「リア……勿論だ」
ゼルドリックは赤い薔薇を持ち、そして胸元に抱いた。
「リア。君を心から愛している」
赤い薔薇が綻び、咲いていく。
そして眩い光に包まれた後、契りの薔薇は何よりも美しく咲き誇った。
薔薇から魔法の蔓が伸び、ゼルドリックの魂を縛り付けていく。胸に伝わる甘やかな拘束に、ゼルドリックは歓喜の深い息を吐いた。リアの感情が流れ込んで来る。優しく穏やかな恋情。きらめき。感動。そして己が心に宿すのと同じ、身を焼き焦がす程の愛。
(ああ……君も)
ゼルドリックの胸に、咲き誇る赤い薔薇が飲み込まれていく。
(君もこんな感情を抱いてくれていたのだな……。俺と同じだ。こんなに、深く愛してくれている……)
「……魂を捧げるというのは、甘いものだな」
「ええ……ゼル。魂を縛り付けるというのも、甘いものだわ」
「こんなに君が俺を愛してくれているなんてな」
「ふふっ! 言ったでしょう。私も狂ってるって。何を賭してもゼルの傍にいたいって思っているわ。あなたのことが大好きで仕方ないの」
「ああ……幸せだ。姫君に深く深く愛される。こんな幸せがあるなんてな……」
お互いの愛が、お互いを優しく深く包み込む。
深い愛に溺れる心地のまま二人は微笑み合い、そしてゆっくりと口付けを交わした。
パルシファーの真っ赤な綿毛が、二人を祝福するように風に乗って流れ続けた。
その噴水を見てリアとの思い出が蘇り、ゼルドリックは目を潤ませた。
(近頃、特に涙脆くて仕方がない)
ゼルドリックは込み上げる悲しみを振り払うように首を横に振った後、自分の家に向けて歩き始めた。向日葵と夏薔薇が咲く道を歩み、高台の方へと進んでいく。道すがらリアとの思い出が次々に蘇ってきて、ゼルドリックは胸を押さえながら、苦しみの中一歩一歩進んだ。
(苦しい。生きることが辛い)
生きる、と約束を交わしたというのに、ゼルドリックはリアの後を追いたくて堪らなかった。
心から愛していた女の欠落は、日々大きくなる。自分を飲み込むような冥闇にゼルドリックは悶え苦しんだ。
苦しみに耐えながら歩き、そしてゼルドリックは自分の家の扉に手を掛けた。
ふと、一陣の風が吹く。ゼルドリックが強い風に振り向くと、庭に誰かが立っているのが見えた。
(誰、だ? ……奇妙だ。全く気配がしなかった。いつから庭にいた?)
中央政府の役人らしからぬ、明るさと朗らかさを持った水色の髪の男。
彼は鍛冶場と、赤いつる薔薇に囲われた墓石をぼんやりと見ている。ゼルドリックは彼に駆け寄り声を掛けた。
「何か用か」
「……!」
エルフの男は急いで振り返り、そしてゼルドリックを見て元気に挨拶をした。
「町長、こんにちは! いえ、この時間はこんばんはと言ったほうがいいのでしょうか」
「ああ、どうも。ところでなぜここにいる? 視察の日は来月の筈だが?」
「ええ! もちろん来月です。今日はこの町に遊びに来たのですよ」
青い目を細め、男は屈託のない笑みを浮かべた。
「前回の視察で、山一面にパルシファーが植わっているとお聞きしまして。ぜひ近くで見てみたいと思ったのです! 町の人に聞いてここまで来たのはいいんですけど、立派なお屋敷と、綺麗な薔薇を見つけたものですから、つい見入ってしまって……あ、別に見てただけで、怪しいことをしようとしている訳ではないですよ!」
焦って手を振る男を見て、ゼルドリックは薄く笑った。
「そうか、そういうことなら別にいい。客人は歓迎だ」
「良かった、怪しまれたらどうしようかと……。そうだ、ここは町長の家なんですよね?」
「ああ」
「この鍛冶場、とっても立派ですね。鍛冶屋、リローラン……」
エルフは青銅製の看板に目を向けた。鎚と宝石の意匠が施された可愛らしい看板。磨かれた看板と墓石を見て、彼は何かを察した様だった。
「……大切にされているのですね」
慈愛の込められた、優しい声音だった。その声はゼルドリックの心を揺さぶり、リアの欠落を強く意識させる。心を襲う鋭い痛みにゼルドリックは思わず俯いた。
「マイム殿、と言ったか」
「はい町長。マイム=ブラッドスターです」
己とよく似た青い目のマイムは、はきはきと答えた。
「君は良い役人だ。年若くも立派に仕事をこなしている。この町を実際に巡り、熱心に視察を行ったのはこの数十年、君しかいなかったよ。礼を言いたい」
「ああ、ご丁寧に! こちらこそありがとうございます」
マイムが握手を求めようと、朗らかな笑みを浮かべゼルドリックに手を伸ばす。
ゼルドリックはその手を握り込み、彼の青い瞳を見据えた。
「……町長?」
強く握り込まれたままの手に、マイムは困惑を露わにした顔を向けた。
「握手からは、様々な情報を得られる」
マイムの青い目をじっと見据えたまま、ゼルドリックは低く硬い声を出した。
「心理状況。職業。使う得物。相手への感情。場合によっては握手ひとつが命取りとなる場合がある。戦闘に優れた者ほど利き手での握手はしないものだ。なあマイム、お前の利き手は右だな? なのにわざわざ左手を出すとは、俺に何か隠し事をしているのではないか?」
ゼルドリックの纏う雰囲気が敵対的なものに変わる。ぎりぎりと握り込まれる己の手。マイムは自分を強く見据えたまま微動だにしないゼルドリックに、曖昧な笑みを浮かべた。
「や、やだなあ町長。僕の利き手は左ですよ。本当です」
「まだ誤魔化すか? 右手の方が指が太いだろうに。利き手の指にはたこもあるようだが」
「……よく観察してますね」
彼の一挙一動を見逃さないとでもいうように、ゼルドリックは脅すように彼に顔を近づけた。
「今の俺は魔法を使えない。だが魔法を使えない状況でも、敵の不意打ちに対抗できるように中央政府でそれなりの戦闘訓練を積んできた。相手の気配を察知することにも長けている。お前は静かだ。静かすぎる。まるで気配がしなかった。おそらく、気配を消すために遮蔽魔術を施しているな? ……何のために?」
「……」
「俺が気が付けなかったということは、お前は相当の手練だ。仕事に慣れていない若いエルフというのは見せかけの姿だろう。なあ、マイム。魔法が使えなくても、俺はそれなりにお前を手こずらせると思うぞ?」
ゼルドリックの言葉に彼はサファイアの如き美しい青い目を細め、唇を歪めた。
「素晴らしいですね、ゼルドリック様。筋骨隆々の身体は細くなってしまったけれど、鋭い眼光と感の良さ、洞察力は今も全く衰えていない」
青年はくすくすと笑った。わざと酷薄さを滲ませたような声だった。
「ふふっ、本当に怖ろしいエルフだったのですね、あなたは……。敵わないなあ、こんなにすぐ怪しまれちゃうなんて嫌になりますね」
「何のためにここに来た? 円卓の差し金か?」
「上層部? いいえ? ゼルドリック様を円卓に関わらせる訳がない」
マイムは悪戯そうな笑みを浮かべた。
「奇妙な言い方をしおって。なら何だ? なぜ俺の元にやって来た?」
「さあ、何だと思います?」
マイムは身を委ねるように目を瞑り、ゼルドリックの手に右手を重ねた。
「握手から、相手への感情を読み取ることもできるのだと言いましたね。あなたに対する敵意が、僕の手から感じられますか?」
「……」
ゼルドリックはマイムの右手を見た。自分の手に温かな掌がぴとりとくっつけられている。青年の手からは刺々しい雰囲気や殺気のようなものを一切感じなかった。
(……むしろ)
打ち解けた、親しみのような感情が伝わってくる。
ゼルドリックはその奇妙さに、マイムの顔をじっと見つめた。
「……お前は一体?」
「ふふ、驚かせたかったんです。あなたがあんぐりと口を開けるところを一回くらいは見たいなって、そう思ったんですよね。……はあ、もうバレてしまったしこの喋り方も止めようかな」
青年は再び、優しく慈愛の込められた声を出した。
不意に、目の前のマイムに妻の微笑みが重なる。
ゼルドリックは強い夕日が幻覚を見せたのかと思い、眩しさに目を眇めた。
「嘘。全部が嘘。騙してごめんなさい」
「……何がだ?」
「本当は南部じゃないの。私は北部の出身よ。男でもないし、髪も目も青くはないわ」
エルフは己の身に掛けた遮蔽魔術と化け術を解き始めた。
薔薇のつぼみが綻ぶように、一枚一枚遮蔽魔術が剥がれ落ちる。
ゼルドリックは大きく目を見開き、目の前のエルフを食い入るように見つめた。
「あなたのサファイアのような目が恋しかったから真似てみたの。中々そっくりだったでしょう?」
(……まさか)
「青い髪と青い目の、背丈の高い男のエルフ。私と正反対の姿を演じるのは中々楽しかったわ」
水色の髪と青い目が、赤い夕日に染まる。
パルシファーの綿毛の如くふわふわとした長い髪が、風に美しく靡く。
「はあ。ミーミス様に遮蔽魔術を教えてもらって、メルローちゃんに化け術を教えてもらって、オリヴァー様の弟子にもなって、きつい任務も必死でこなして……。今まであなたを驚かそうと必死に頑張ってきたのに。まさか握手で見抜かれるなんて無念だわ」
(この声は……)
背の高い男の姿が砂のように消えていく。光の粒子が去った後、背の低い女が現れた。
愛おしい背丈。大斧を片腕で振り回していたとは思えないほどの小さな身体。
「私はオフィーリア=オルフィアン。リア、と呼んでね」
赤い髪の姫君が、微笑んでいる。
パルシファーの綿毛を思わせるふわふわとした長い髪。赤い大きな目。低い背。豊満な体つき。低い鼻。そばかす。高く柔らかな声。優しげな目元。
オフィーリアと名乗ったその女は、記憶の中の姫君とそっくりだった。
ただひとつ異なるのは、その耳が長いこと。
白く長い耳が、赤い髪から可愛らしく突き出ている。耳をひとつひくつかせ、彼女は慈愛の込められた目でゼルドリックを見た。
「リア……?」
ゼルドリックの見開かれた目から涙が溢れ、ぼたぼたと滴り落ちる。彼は目の前に現れたエルフに釘付けになり、瞬きも忘れ彼女の姿を見つめた。
色褪せた世界が色を取り戻していく。欠落に苦しんでいた心に、暖かな灯火が宿る。
「ふふっ……。少しは驚いてくれたかしら? 子供たちもね、皆私を見て驚いたわ。当然よね、ハーフドワーフの母親がエルフに生まれ変わって戻ってきたんだから」
「……リ、ア……なのか? 本当に? 戻ってきて、くれたのか……」
ゼルドリックは震える声で尋ねた。掌の中の小さな手を強く握り込む。
夢だとしても、決して彼女を放したくなかった。
「ええ、あなたのリアよ。ゼル」
リアはにっこりと笑った。ゼルドリックの宝物である満面の笑みを向けた。
「夢じゃないよな? そうだって言ってくれ! 夢だったら、俺は耐えられない……」
顔をくしゃりと歪めて尋ねるゼルドリックの手を、リアはぎゅっと握り込んだ。
「夢じゃない。私はここに戻ってきたの。感じるでしょう? 私の温かさを」
小さな白い手。柔らかい掌の感触。己の手に優しい温かさが伝わってくる。
ゼルドリックの中にリアとの思い出が一気に蘇り、彼は溢れる想いのまま腕を伸ばした。
「ああっ……リア、リア、……リア!」
リアの身体が強く抱き締められる。ゼルドリックはリアの体温を確かめるように掻き抱き、そして声を上げて泣き始めた。リアは夫の背を優しく摩り、震える彼を慰めるように腕を回した。
「会いたかった! 会いたかったんだ、ずっと、ずっと、ずっと……! 俺がどれほど寂しかったか、君のいない世界がどれほど色褪せて見えたか……! 戻ってきてくれ、どうかもう一度会わせてくれと、毎日祈りを捧げていたんだっ……リア、リアっ……」
「……うん。ずっと、ゼルの感情は伝わっていたわよ……。苦しいって、寂しいって……。」
リアもまたぽろぽろと涙を溢れさせながら、ゼルドリックを強く抱き締めた。ゼルドリックの着ける罪人の枷に、リアの右手が伸ばされる。彼女はそれをゆっくりとなぞった。
「百二十七年よ、ゼル。本当に長かったわ。私ね、あなたが私と出逢った年齢まで鍛錬をして、強くなってから会いに行こうって決めてたの。すぐにでも会いに行きたかったんだけど、あなたはまだ上層部から狙われている。だからゼルを守れるような力を身に着けたかったの。一人のエルフとして、強大な力をもつあなたに追いつきたかった……」
「リア……君も、俺に会えなくて寂しいと思ってくれていたのか……?」
「当然よ……。毎日死にたいって考えている夫のことが気がかりで仕方なかった。私の墓石を抱いて啜り泣くあなたが、痛ましくて仕方なかった。ずっと心から血を流していたわ。……ああ、ゼル。私のゼルドリック……。遂にこの時が来たのね。……こうして抱き締めることができて、本当に嬉しい」
健気なリアの言葉に、ゼルドリックは心をまた大きく震わせた。
そして彼女にずっと言いたいと思っていた言葉を、大きな感動を込めて囁いた。
「……リア」
「ん?」
「おかえり。おかえり……リア」
ゼルドリックは頬を涙で濡らしながらも、柔らかく笑んだ。リアは顔を紅潮させ、夫の笑みを見つめた。甘やかな黒の王子様の微笑みが、リアの心に安らぎを与える。
「……ただいま、ゼル」
風が吹く。
山に植えられたパルシファーの真っ赤な綿毛が、風に乗ってふわふわと漂う。
ゼルドリックとリアは空を見上げ、夕焼け空の下、風に流れていく赤い綿毛を見た。
「奇跡」
ゼルドリックがそう呟くと、リアはそうねと笑った。
「ねえゼル。神様って本当にいるのね」
「ああ。女神はもう一度、俺たちに奇跡を起こしてくれたのだな」
リアは夕焼けに目を眇めながら、飛んでいく綿毛をきらきらとした目で見つめた。梯子のように見える赤い光芒が、天と地を夕焼け色に染めていく。
「夏日の、こんな強い夕焼け空の日だったわね。あなたは私をいきなり抱き込んで、髪の匂いを嗅いで、髪と顔の境目が分からないくらい真っ赤だって言ったの」
「よく覚えているな」
「覚えているわ。私だってあなたを心の底から愛している。あなたにかかわる思い出は、全て胸に留めておきたい。……ねえ、ゼル。こっちを向いて」
リアは光を受けて黄金色に輝くゼルドリックの頬に手を添えた。
「薔薇を贈ってくれてありがとう。ゼルのくれた薔薇は、私の拠り所だった。どんなに辛くても、どんなに苦しくても、あなたが私を大切だって思ってくれるから頑張れたの。この薔薇が、私をゼルの元へ呼び戻してくれた」
自分の胸に白い手を差し込み、リアは青い契りの薔薇を取り出した。
光り輝く粒子を纏う、美しく咲き誇る薔薇を。
「ゼルは私を愛してくれている、魂を削って契りの薔薇を創り出すほどに。私も、同じよ。私もあなたを深く深く愛している。ねえ、贈りたいものがあるの。受け取ってくれる?」
「何だ?」
ゼルドリックが優しく尋ねると、リアは潤んだ赤い瞳をゆっくりと閉じた。
万感の想いを込め、胸奥から紡ぎ続けた恋情の結晶を取り出す。
「それは……!」
「ええ、私も創ってきたわ。禁呪だからね、バレないようにこっそりと……」
リアが取り出したのは契りの薔薇だった。赤い赤い花びらを持つ、美しい薔薇だった。つぼみのままの薔薇がゼルドリックに差し出される。リアはうっとりとした目をゼルドリックに向け、愛の言葉を囁いた。
「ゼル。私の王子様。あなたを愛しているわ。また私と契ってくれる?」
「リア……勿論だ」
ゼルドリックは赤い薔薇を持ち、そして胸元に抱いた。
「リア。君を心から愛している」
赤い薔薇が綻び、咲いていく。
そして眩い光に包まれた後、契りの薔薇は何よりも美しく咲き誇った。
薔薇から魔法の蔓が伸び、ゼルドリックの魂を縛り付けていく。胸に伝わる甘やかな拘束に、ゼルドリックは歓喜の深い息を吐いた。リアの感情が流れ込んで来る。優しく穏やかな恋情。きらめき。感動。そして己が心に宿すのと同じ、身を焼き焦がす程の愛。
(ああ……君も)
ゼルドリックの胸に、咲き誇る赤い薔薇が飲み込まれていく。
(君もこんな感情を抱いてくれていたのだな……。俺と同じだ。こんなに、深く愛してくれている……)
「……魂を捧げるというのは、甘いものだな」
「ええ……ゼル。魂を縛り付けるというのも、甘いものだわ」
「こんなに君が俺を愛してくれているなんてな」
「ふふっ! 言ったでしょう。私も狂ってるって。何を賭してもゼルの傍にいたいって思っているわ。あなたのことが大好きで仕方ないの」
「ああ……幸せだ。姫君に深く深く愛される。こんな幸せがあるなんてな……」
お互いの愛が、お互いを優しく深く包み込む。
深い愛に溺れる心地のまま二人は微笑み合い、そしてゆっくりと口付けを交わした。
パルシファーの真っ赤な綿毛が、二人を祝福するように風に乗って流れ続けた。
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