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*Weil es mein Herz schmilzt~氷(こころ)を溶かす炎(からだ)~

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翌朝、まだ暗い中寒くて目が覚めたクリスタは、隣にいるはずのローラントがいないことに気づいた。
いつもなら、起きても絶対離してもらえないのに今日はどうしたのだろう?
寝室には見当たらない。
水音もしないので、バスルームではないだろう。

クリスタは上着を羽織ると、そっとベッドを出てとりあえず暖炉に火を入れた。
暖かくなるまでにはまだ時間がかかる。

両手を擦り合わせ息を吹き掛けると、少しだけ脳が覚醒したような気がした。
あ、もしかしたら。
クリスタは思い立ったように寝室を出て、隣の書斎に向かう。
扉の前に立つと、静けさの中に微かに人の気配がする。
ノックを3回。

……………返事がない。

もう一回ノックを、と思っていたらいきなり扉が開いた。

「どうしたんだ?まだ早いぞ」

驚いた顔のローラントはクリスタを中に促しながらその額に口付けた。

「おはよう、今日は早いのね。起きたら隣にいないから……」

「淋しかった??」

ローラントはからかうように笑っている。

「……寒かった」

もともと体温の低いクリスタは彼の暖かい(むしろ熱いくらい)体がとても気に入っている。
最近はいつも側にいてくれるのでぽかぽかと心地よくて安心していた。

「ん、おいで」

書斎の椅子に座ったローラントの膝の上に乗り、足を抱えて小さくなった。
そうすると彼は、クリスタの冷たい体を後ろから包み、冷えた足の指から膝までをゆっくりと擦ってくれる。

「冷たいな……。大丈夫か?」

重低音が染みるように耳に馴染む。

「ええ。体温低いから……あの、ごめんね、冷たいのイヤよね?」

「そんなことない。オレは体温が高いから、ちょうどいい」

クリスタの冷たくなっていた耳に唇があたる。
最初は吐息がかかるだけだったが、次第にその口内に納めていく。
そして一番冷たさを感じる耳朶を含み舌で転がされる。

「ん…………もぅ、どうするつもり?」

「暖めてる」

ああ、耳元で囁かないで。
このゾクゾクするような重低音は脳から体の隅々まで直接響いて心と体を揺さぶられる。
囚われたら最後、何もかもを委ねてしまいたくなる。

「あ………ねぇ、こんなに早く何してたの?」

クリスタはありったけの理性で、誘惑に打ち勝ち彼を押し留めた。

「手紙を、書いてた。ザクセンの部下に」

「ザクセンに?どうして?」

「オレの銃器を持ってきてもらおうと思って。あと、遊撃部隊の何人かを呼び寄せる」

ローラントの指がクリスタの輪郭をなぞる。

「……ありがとう……それ、私の為よね……」

「礼なんて言うな。君の為でもあるが、オレの為でもある。オレは………君なしじゃ生きられないからな」

やや自嘲的に笑うと、輪郭をなぞっていた指でクリスタの顎を持ち自分の唇を重ねた。
ゆっくり味わうように口内全てを蹂躙してゆく。
彼は冷たい手を自分の首筋に導き、そのひんやりとした感触を堪能しているみたいに思えた。
指先から伝わる命の音と温かさ、舌先から感じる滑らかさと激しさ。
彼はクリスタの奥のさらに奥にある理性という氷塊を、その熱さで溶かしてゆく。

「これ以上はやめられなくなるな……」

「………やめなくても、いいのに」

ほとんど無意識に言ってしまった。

一昨日の夜、初めて彼に抱かれて昨日の夜も抱かれた。
そうすることが当たり前かのように自然にそうなってしまう。

クリスタは感情や感覚に身を任せることは今までなかった。
感情が揺さぶられることもこれまでなかった。

今は…………??

さっきも、淋しかった?と聞かれたとき本当は淋しかった。
隣にいなくて心細かった。
触れられると嬉しくて、囁かれると愛しくて堪らない。

「………ふっ、じゃあ、やめない」

突然体が宙に浮き広い胸に包まれる。
クリスタはローラントに抱えられたまま書斎を出、寝室の暖まったラグの上に優しく下ろされた。
そして真正面にいるローラントの膝に股がり、彼のシャツのボタンを1つずつ外していく。
唇は触れそうで触れない距離を保っていて、それが余計に想いを募らせる。
彼の露になった逞しい胸に、冷たい指先で触れると微かに切ないため息が聞こえた。
クリスタは唇を耳から、首筋、鎖骨へと、指は胸の小さな突起へとそれぞれ別の生き物のように動かしていった。

「はぁ…っ、クリスタ……それ、ヤバい………」

頭の上からローラントの掠れた声が響くが、クリスタは気にせず更に激しく体を弄る。

「っ…ぁ、下が、もぅ…キツい……」

ちょうど下腹部に当たっていたローラントのモノは存在感を増していて、ベルトを外し、ボタンを外し、それを解放すると、待ち構えていたように大きくしなり存在を誇示した。
それを指先で撫でるように上下させると、快感に身を震わせる美しく欲情した悪魔と目が合った。
彼自身と同じく、されるがままになりながら襲いかかる好機を伺ってギラギラしている瞳。

ダメよ、まだ主導権を渡すわけにはいかない。
もっともっと、彼を味わい尽くしてから……。

クリスタは彼の膝から降りて前屈みになると、邪魔な髪を掻き上げ、指で擦っていた彼のモノに唇を這わせた。
初めてする行為に恥ずかしさも少しあったが、それはぶるりと体を震わせ、声にもならない吐息を短く何度も吐き出すローラントの姿を見ると吹き飛んでしまった。

彼を、もっと、悶えさせてみたい……
そんな感情がクリスタに芽生えた。
私ってそう言う性質だったかしら?
新しく生まれる自分の感情に戸惑いながらも、クリスタは愉しくてしょうがなかった。

根本の方から裏の筋へゆっくり舌を這わせ、先端にきた所で円を描くように舐める上げ、中心部から滲み出る透明な液体を吸い上げるようにして口に含ませた。

「っ、…………うぅっ!………」

彼はクリスタの頭を両手で掴み、堪えきれなかったのか少し乱暴に髪を握る。

快感を耐えているローラントの表情はとても美しい。
見上げた時に目が合うと狂気を孕んだ瞳が、潤んで泣いているようだった。

そんなローラントに煽られて、クリスタの行動はどんどん過激になっていく。

先端を口に含み、舌を回転させ傘の部分をひとしきり舐めたあと、一気に喉元近くまで咥え込んだ。

「っ!……うっ……あぁ………」

その時、予想外のことが起こった……。
あまりに大きすぎローラントのモノは、喉の深いところまで入り込み、反射的にクリスタは嘔吐きそうになってしまった。
ローラントはとても気持ち良さそうに惚けた顔をしていたが、クリスタの苦悶の表情を見て慌てて掴んでいた頭を離した。

「だ、大丈夫か?」

ううっ……こんな時に心配されるなんて……。
悶えさせ作戦台無しだわ……。

「ごめん……大きすぎて………でも、もう一回するから、今度は………」

言い終わる前にクリスタの世界はひっくり返った。
いや、ローラントに押し倒されたのだ。

「気持ち良かったよ。あと、一瞬抜くのが遅かったらイッてたな」

チッ!と内心クリスタは舌打ちをした。

「ねぇ、もう一回……させて?」

可愛くおねだりをしてみるのだけど……。

「ダメ。今度はオレの番」

というと、クリスタのシャツを剥ぎ取り露になった胸元に勢いよく吸い付いた。

「きゃっ!………んぅ……ずるぃ……」

「ああ………いいね、もっと啼いて」

彼は手を緩めず胸を揉みしだき、唇を下に向かって這わせる。
片手でクリスタの両足を開かせ金色の茂みの中に頭を潜り込ませる。

「あ、濡れてるな」

「恥ずかしいから、言わないで…………は、あぁっん……」

ローラントの舌が敏感な部分に触れて、執拗にそれを責め、突然走る快感に体を捩らせ逃げようとするが、大きな手がそれを許さない。

「はあぁっ……!あ、……んぅっ」

快感に耐えきれず自然に仰け反る体を、背中に腕を回し支えているローラントが愛しそうに見下ろしている。

「可愛い、本当に……」

クリスタの顔にかかる髪を払い、額や両頬、鼻先、最後に唇に軽くキスをする。

「愛してる」

その言葉が終わらぬうちに、侵入してきた彼のモノがその最奥を穿つ。

「……あ、んぁっ!……んっ……奥、……当たって……」

「気持ちいい?もっと、動くからな……腰上げて?」

軽く腰を浮かせると彼の腕でグッと引き寄せられ中で角度の変わった彼のモノが何かゾクッとする部分に触れた。

「ここか?」

「……え?……な、に?」

クリスタの顔色が変わったのをローラントは見逃さず、気持ち良く感じる部分を何度も擦った。

「あ!……ダメ…そこ、………ダメだって……あ、あっ」

「うっ……はぁ……くっ!締まる!もたない………」

一段と大きくなったモノで執拗に責められてお腹の奥がきゅんと疼くと、その度に見上げたローラントの顔が切なく歪むのがわかった。
彼も同じように感じてる………。
そう思うと快感は更に感度を増し、背中や腰にゾクゾクするような帯電を感じ、怖くなって彼を呼んだ。

「ローラント……抱き締めて……」

彼はすぐに掴んでいた両足を離し、腕をクリスタの頭と腰に回した。

「ああっ、んっまた……さっきのっ……はあ…んっ…あああっ!」

「……イキそう?……オレも……」

少し律動が早まり、抱き締める両手にも熱がこもった。

「あ、…………イ、くっ!」

「はあっ、……んっっ!あ………」

緩やかに終息していく律動に呼吸を合わせながら、二人は口付けをする。

「……愛してる、ローラント……」

彼はクリスタに体重を預けて押し潰さんとする勢いで抱きしめた。
その重さはとても心地よかった。
安心して身を委ねられてる、そんな気がしたから。

「オレの方が、愛してる……」

不意討ちの重低音にドキッとすると、収まっていた鼓動がまたひとつ跳ねた。

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