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Extra Ausgabe

クリスタ・ルイスはかく語れり① クリスマスSS

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「お義母様!?どうか何もなさらず、座ってらして下さい!」

「………そんな、クリスタまで……酷いっ!!」

目の前でワナワナ震えるお義母様に私は少しキツめに言い放った!

だって当たり前でしょ!
お義母様が食材に触ると、何故かとてつもなく変化(劣化)するんですから!
どういう化学変化なのか、まだ解明出来ないのよね。
だから解毒剤のない、たちの悪い毒物のようでもう本当に手に負えな……。

あ、失礼しました。皆様お久しぶりでございます。
クリスタ・ルイス・ハインミュラーです。
今、我がハインミュラー家では祝祭日の準備でお忙し。
年に一度のこの祝祭にクライムシュミットの町も大いに賑わっているわ。
だけどね、この祝祭日、実はザナリア独自の祝祭ではなく、南東の方から伝わったものらしいの。
どうやら当時の皇帝陛下がいたく気に入ったらしくて、祝祭として認定してしまったとかでね。
文献によると超常現象を多々起こし、神認定された人の誕生日なのだとか?
石をパンに変え、パンをケーキに変えケーキをフォンダンショコラに……は変えないと思うけど、まぁそんな感じなんですって。
知っての通り非科学的なことには全く興味のない私にとって、これは特に意味のない、そう、御馳走が食べられるだけのイベントでしかないけど。
あっ、でも、キラキラした町の様子はとても好きよ。
今日帰ってくるローラントと駅で待ち合わせをして、少し町をぶらつくのをとても楽しみにしてるの。
おっと、その前にお義母様をなんとかしなくてはね。

「お腹が大きくて大変だから手伝おうと思ったのよぅ!!それなのに皆酷いじゃないの!!」

お義母様は私のお腹をスリスリしながら、ため息をつき肩を落として椅子に腰かけた。

「まぁ、大奥様のその気持ちはわかりますが……。クリスタ様のお体が心配でしょう?もし、大奥様の作ったものを口にでもされたら……」

と、ガブリエラは腕を抱えブルッと体を震わせた。
うん……ガブリエラ、私も同じ気持ちだけど、お義母様を見て!!
泣いているわよ!

「ううっ……何故なの何故なの!?何故私の作るものは全部、毒物になるの!?」

それは私が知りたいです。
そして、その才能が少し羨ましかったりもするわ。
あらゆる食材を使って、毒物を作りたい放題。
そしてそれを分析して、解毒剤を作るという作業が永遠に出来るんですから。
世の中のそういった裏組織がこぞって勧誘に来ますよ。
と、まぁそんな冗談はどうでもいいけど。

「お義母様。もう!何を仰るのかしら。料理なんて出来なくてもいいんです。私を心配してくれるのは嬉しいのですが、少し動いた方が安産になりやすいんですよ」

「そうなの?…………ふぅーん、そう、そうなのね!わかったわ」

さすがお義母様!
ローラントと同じで単純で扱い易い!
やれやれ、これで漸く作業に戻れるわー、と、包丁を持った時、

「ガチョウが届きましたよー!」

と、イーリスがキッチンルームにやって来たの。
その手には麻袋に押し込められたガチョウ。
彼(彼女)は悲痛な声をあげながら助けを求めていたわ。
祝祭日のメイン料理は主にガチョウの丸焼き。
この日ばかりはガチョウに同情をするわね。
一体ザナリアで何羽のガチョウが犠牲になっているのやら……。
でも、それとこれとは話が別ですよ。

「ふふっ、じゃあ、ヤる?」

鮮度は大事よね?

「へ?」

あら?お義母様、ガブリエラ、イーリスがおかしな声を出しましたけど。
キッチンルームには、今、奇妙な雰囲気が漂っています。

「待ってください……その、クリスタ様、何で包丁を持って近付いて来るんです?」

イーリスは顔を青くして、ガチョウを後ろに隠したわ。
そして、何を感じ取ったのかガチョウも断末魔のような悲鳴を上げたの。

「何故って……うふふ、それはね、そのガチョウを捌くためよ」

私は包丁の刃をツーッと人差し指で撫でて見せてやったわ。
……いえ、猟奇殺人鬼ではないわよ!!

「それは!いけません!!クリスタ様!」

ガブリエラに包丁を持った手を止められてしまったわ。

「え?何故??」

「祝祭日は妊婦が殺生をしてはいけないことになっています!もしかしてご存知なかったのですか?」

そんな迷信知らないに決まっているわっ!!
大体ね、そんなこと言ってたら、市井の妊婦のお母さんなんてどうするのよ!
旦那がやれるわけじゃなし、結局は自分がやらなきゃダメなんでしょうがっ!
とは思うものの、お義母様やガブリエラ、イーリスの非難の目がとても痛くて。

「わかったわ……これはお任せします……」

私は泣く泣くガブリエラに包丁を渡したの。
でもハッキリと言っておきますが、この中で解体が一番上手いのは絶対に私なんです!
CCAでも、解剖の授業は教授の代わりにやったもの。
私はため息をつき、同じようにため息をついていたお義母様の横の椅子に腰かけた。

「それで、ローラントのお迎えは何時頃??」

手持無沙汰になったお義母様が言った。

「えーと、列車の到着が午後3時だったと思いますよ。あ、そろそろ出ないといけませんね」

「そう。あ、町に行くんならついでに酒屋によって頼んでいたものを貰ってきてもらえる?あ、あとね、ワインの注文もしてきてくれない?いつものやつを10本くらい、あとで届けてねって」

もう樽で注文すればいいんじゃない!?

「ええ。わかりました」

と、そつなく答えておいたわよ。
大人な私は波風を立てないのです、オホホホ。
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