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王都
146.好きなので……
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「運命………」
ローケンは雷に打たれたかのようにびっくりしていた。
「偶然など、そこら中にいくつもある。だが、それが重なる時……大きな運命が抗えない速さで流れているのだ。見たところ君は、運命論者ではないようだが」
「いえ……そうでもありません。冥府や地獄を興味深いと思いますから。私も神秘が好きな人間でございますよ」
ローケンと父は顔を見合わせて笑った。
はっきりいって、2人の言うことは私にはどうでもいいことだ。
偶然や運命なんて目に見えないものを論じられても、腹の足しにもならないわ。
そんな思いが顔に出ていたのか……2人は私を見て、呆れたように笑っていた。
「……さて、私もお遊びが過ぎたか……冥府の王が、娘と交わした約束を反故にするわけにもいかぬ」
「お父様……」
父は杖にした剣を腰に差し直し、少し悲しそうに私を見た。
「シルベーヌ。お前は本当にラシュカの王妃になるのか?」
その言葉を後ろで聞いていたディランは一歩前に出て、私の肩を強く抱いた。
誇らしげに煌めく騎士団長は、今はもうラシュカ国王である。
でも、彼が騎士団長であっても、ラシュカ国王であっても……そして、死人であっても。
どんな存在であったとしても、きっと私はこう言うのよ。
「はい。でも、ラシュカの王妃というか……ディランのお嫁さんになるんです。ディランのことが……好きなので」
私の声は最後の方、消え入りそうになったけど、それをディランが絶対聞き逃さないことはわかっているのよ!
「シルベーヌ様っ………」
感極まった声が頭上から聞こえた。
そしてすぐ、駄々漏れてくる狂気の愛が私を包み、ぎゅうぎゅう締め付けて離さない!!
ぐぇぇぇー………今日は一際力が強いー!
ディランは、父の前だろうが、誰の前だろうがきっと関係ない。
恥ずかしくもなんともないのよね。
でも、私は違うから!
羞恥というものが人並み以上にあるんだからね!
「ディランっ!ごめん、後に、後に……して……」
「イヤだ」
ディランはぶんっと首を振った。
こ、子供かーー!?
「き、君は……自由だな……うん、まぁ、シルベーヌのことを大事にしてくれるのは良いことなのだがな……」
心なしか父の頬がほんのり赤い。
この狂気の愛にあてられたのかしらっ?
まだまだ、こんなものじゃないって教えた方がいい?
「しかしなー………ああ、困ったぞ……」
父は頬を染めたまま、いきなり頭を抱えた。
「こ、困った?何がですか?」
ディランの腕の中で、私は顔だけをなんとか父に向けた。
「うん。実はな……」
『ルーマンドさまぁ?なんかぁー今度は内線がぁー入ってますよぉ?』
突然、スピークラムが間延びした声で父の言葉を遮った。
『コイツ、全く空気を読まねぇな?ルーマンド様も大変だなぁ、オイ!』
黒スピーはこっそりと言った。
だけどその時私は「口調が違うだけであなた達ソックリよ?」と思ってしまっていた……。
魂呼びの鏡、個性があるように見えて実は基本一緒なんじゃない?
妙に納得してしまった私の前で、スピークラムの中から、ハーミットが喋り始めた。
「王様?あのさぁー……今、ここに王妃…………え!あ、あの、ちょっと……そんな乱暴に……壊れ……待ってくだ………」
ハーミットの声が途絶えた途端、キュイーーーーーン!と不快な音がスピークラムから響き、思わず皆耳を塞いだ。
一体何なの!?
違うわよ!?私は歌っていないわよー?
ローケンは雷に打たれたかのようにびっくりしていた。
「偶然など、そこら中にいくつもある。だが、それが重なる時……大きな運命が抗えない速さで流れているのだ。見たところ君は、運命論者ではないようだが」
「いえ……そうでもありません。冥府や地獄を興味深いと思いますから。私も神秘が好きな人間でございますよ」
ローケンと父は顔を見合わせて笑った。
はっきりいって、2人の言うことは私にはどうでもいいことだ。
偶然や運命なんて目に見えないものを論じられても、腹の足しにもならないわ。
そんな思いが顔に出ていたのか……2人は私を見て、呆れたように笑っていた。
「……さて、私もお遊びが過ぎたか……冥府の王が、娘と交わした約束を反故にするわけにもいかぬ」
「お父様……」
父は杖にした剣を腰に差し直し、少し悲しそうに私を見た。
「シルベーヌ。お前は本当にラシュカの王妃になるのか?」
その言葉を後ろで聞いていたディランは一歩前に出て、私の肩を強く抱いた。
誇らしげに煌めく騎士団長は、今はもうラシュカ国王である。
でも、彼が騎士団長であっても、ラシュカ国王であっても……そして、死人であっても。
どんな存在であったとしても、きっと私はこう言うのよ。
「はい。でも、ラシュカの王妃というか……ディランのお嫁さんになるんです。ディランのことが……好きなので」
私の声は最後の方、消え入りそうになったけど、それをディランが絶対聞き逃さないことはわかっているのよ!
「シルベーヌ様っ………」
感極まった声が頭上から聞こえた。
そしてすぐ、駄々漏れてくる狂気の愛が私を包み、ぎゅうぎゅう締め付けて離さない!!
ぐぇぇぇー………今日は一際力が強いー!
ディランは、父の前だろうが、誰の前だろうがきっと関係ない。
恥ずかしくもなんともないのよね。
でも、私は違うから!
羞恥というものが人並み以上にあるんだからね!
「ディランっ!ごめん、後に、後に……して……」
「イヤだ」
ディランはぶんっと首を振った。
こ、子供かーー!?
「き、君は……自由だな……うん、まぁ、シルベーヌのことを大事にしてくれるのは良いことなのだがな……」
心なしか父の頬がほんのり赤い。
この狂気の愛にあてられたのかしらっ?
まだまだ、こんなものじゃないって教えた方がいい?
「しかしなー………ああ、困ったぞ……」
父は頬を染めたまま、いきなり頭を抱えた。
「こ、困った?何がですか?」
ディランの腕の中で、私は顔だけをなんとか父に向けた。
「うん。実はな……」
『ルーマンドさまぁ?なんかぁー今度は内線がぁー入ってますよぉ?』
突然、スピークラムが間延びした声で父の言葉を遮った。
『コイツ、全く空気を読まねぇな?ルーマンド様も大変だなぁ、オイ!』
黒スピーはこっそりと言った。
だけどその時私は「口調が違うだけであなた達ソックリよ?」と思ってしまっていた……。
魂呼びの鏡、個性があるように見えて実は基本一緒なんじゃない?
妙に納得してしまった私の前で、スピークラムの中から、ハーミットが喋り始めた。
「王様?あのさぁー……今、ここに王妃…………え!あ、あの、ちょっと……そんな乱暴に……壊れ……待ってくだ………」
ハーミットの声が途絶えた途端、キュイーーーーーン!と不快な音がスピークラムから響き、思わず皆耳を塞いだ。
一体何なの!?
違うわよ!?私は歌っていないわよー?
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