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こちらに非は一切ございません。

あちらからの一方的な解消。

ならこちらは慰謝料を頂いてご縁を切るだけのこと。

ですが、一方的なあの態度。

何か嫌がらせのひとつもしてやりたくなるのが人情じゃございません?

何かないかしら?

「ローザ様、お悩みでしょうか?」

侍女のサンドラが尋ねてきました。

「そうね、大いに悩んでるわ」

「……本日の件でございますか?」

「そうよ、あのおバカさんの相手に疲れたの」

「……お言葉を」

「ごめん遊ばせ?」

叱れても懲りません。

あれを、馬鹿と言う以外表す言葉はありませんもの。

「解消したいのでしたらご自身でお父様達に申し上げればいいのよ。それを私に押し付けて」

根性なし。

へたれ。

甲斐性なし。

婚約半年でこれでは結婚しても先が思いやられます。

解消なら私個人として歓迎ですけどね。

あの方が一方的に解消を望んでるのに、なぜ私が小間使いの真似をしなくてはならないのかしら?

女にこんなことを押し付けるなんて本当にみっともない。

「私が動くのは癪だわ」

「と、言いますと?」

「なぜ私が言う通りに働かねばならないの?あちらの希望なんだから自分でお支度なさればよろしいのよ」

「手続きはよろしいのですか?」

「私からはしないわ。放っときなさい。……あ、でもあなた達はお父様への報告の義務はあるわね?それは万事と滞りなく、ね?」

「かしこまりました」

舐められるのが嫌いな父が娘を小間使いと勘違いした婚約者をどう扱うか興味はあった。

「面白そうだわ。お父様は何と仰るかしら?」

「想像もつきません。お喜びにならないことだけは確実でこざいますね」

「婚約者様は現実が見えてらっしゃらないのよね。我が家をたかが伯爵家と侮っていらっしゃる。格上の公爵であってもあちらは我が家の援助なしには没落寸前だというのに、ほほほ」

本当におバカさん。

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