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旅行編
69. 採取
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転移した先は、森の中だった。
てっきりあの枯れた大地に行くのかと思っていたから、周囲の緑に驚く。
「ふふ、せっかくだから、帰りは別のルートで帰ろうと思ってね」
なるほど。じゃあ、ここはどこなのだろうか?まさか、もう最果ての森に着いたんじゃないよね?
「ここは、ウィオラウス神聖国の北西側にある森だよ」
確かウィオラウス神聖国って、最果ての森の西側にある国だったよね。ということは、ここは別の森なのか。
「この森は、最果ての森とは違って人の出入りがあるんだ。この森には強い魔物はほとんど出ないし、薬草の群生地がいくつもあるんだよ」
ライから説明を受けながら歩いていると、森の中の開けた場所に出た。そこには、草が青々と茂っていた。
生えている草をよく見ると、薬草図鑑に載っていたものと似ているものがある。
「りゃい、やくしょう?」
「ふふ、正解だよ」
見つけた草が薬草かどうかライに確認すると、合っていたようだ。ライが頭を撫でてくれた。
「せっかく見つけたから、採取してみようか。採取の仕方は分かるかい?」
薬草図鑑の記憶を呼び起こす。この薬草は、根っこは残して茎の根本部分を切断するんだったっけ?
「あう?」
茎を切るジェスチャーをすると、ライが「正解だよ」とまた頭を撫でてくれた。
でも、どうやって切ろう?
ウィンドカッターが頭をよぎったが、広範囲を刈り取ってしまう未来しか浮かばない。
「ふふ、魔力制御で威力を完璧にコントロールできるなら、ウィンドカッターでもいいんだよ。···制御が完璧ならね」
ライが念を押す。···やってみたくないこともないが、自信はない。失敗して別の薬草まで茎を切ってしまったらいけないし、別の方法がいいだろう。
「薬草採取のときは、採取に使う道具を持っておくといいよ。ナイフとか紐とか、袋とかね」
あ、そうか。つい魔法でどうにかしようと思っていたけど、道具を使えばいいのか。
「でもウィル君はまだ道具を扱いづらいだろうから、今回は私が代わりに採取するよ。···ふふ、そのうち魔法でやってもらうけどね」
それはつまり、完璧にコントロールできるようになれとおっしゃってます?
久々に、ライの笑顔に迫力を感じた。
その後も、色んな種類の薬草を見つけては、採取の仕方を確認しながら集めていった。
「ねえねえ、お昼ごはん食べよー」
「オレ、腹減ったぜー」
どこかで遊んでいたテムとファムが戻って来た。
「あ、そうだね。今回はここまでにしようか。ウィル君、お疲れさま」
薬草採取が思っていたよりも面白くて、つい熱中してしまった。採取していたのはライだが。
またジルがシートをサッと広げてテキパキと準備をしてくれる。
今日のお昼は、フランクさんのお店で買ったおにぎりだ。相変わらずお米が美味しくて、もりもり食べる。
そしてジルが、ファーティスの街で買った果物を切ってくれた。買って一週間ほど経つが、マジックバッグのおかげで瑞々しい。
「これから飛んで移動する予定だよ。ウィル君は眠くなったら我慢しなくていいからね」
お昼ごはんを終えて一息ついていたところで、ライがそう言った。
ジルが僕を抱えて背中を優しくトントンしてくれる。···ああ、これは眠くなるやつだ。
僕は、すぐにお昼寝タイムに突入した。
「ふふ、もう寝ちゃったね。可愛いなあ」
「そうだな」
心地良い深い眠りへと誘われながら、そんな会話が聞こえたような気がした。
僕が目を覚ましたとき、視界の下の方に木が見えたことに一瞬混乱する。ジルが僕を抱えて森の上を飛んでいる最中だったのだ。
「起きたか?」
ジルが気づいてくれた。
「まだそれほど時間は経っていないが···」
そうなのか。僕は目覚めスッキリな気分なので、しっかり熟睡できたのかもしれない。
「あ、ウィルくん起きたー?」
「どうした?腹でも減ってんのか?」
お昼寝時間が短かったようで、テムに少し心配された。でも、『腹でも減ってんのか』って···。僕、そんなに食いしん坊キャラだったっけ?
「ウィル君、おはよう。もうお昼寝はいいのかい?」
ライからも聞かれ、僕はコクコクと頷く。
「それならいいんだけど、我慢しなくていいからね?」
なんだか大事にされてるなあと思う。みんなの気遣いに思わずニマニマしてしまうくらい嬉しい。
「ぼくたちね、飛びながら鬼ごっこしてたんだよー!」
「楽しいぜ!」
僕のニマニマ顔が固まる。
ま、まさか、また雑草取りの感覚でゴブリンを狩っているのかな?
「ふふ、飛びながらね、視界に入ったゴブリンを討伐しているんだ」
やっぱりそうなのか!
しかも飛びながらって。通るついでに命を狩られるゴブリンに憐れみを感じる。
「ふふ、ウィル君もやってみるかい?サンドワームを倒せたんだから、今なら簡単にできるかもよ?」
爽やかな笑顔に圧を感じるのは気のせいだろうか。
前回はテムとファムの蹂躙を見ているだけだったが、ついに僕も命を刈り取る鬼ごっこに参加するときが来たようだ。
てっきりあの枯れた大地に行くのかと思っていたから、周囲の緑に驚く。
「ふふ、せっかくだから、帰りは別のルートで帰ろうと思ってね」
なるほど。じゃあ、ここはどこなのだろうか?まさか、もう最果ての森に着いたんじゃないよね?
「ここは、ウィオラウス神聖国の北西側にある森だよ」
確かウィオラウス神聖国って、最果ての森の西側にある国だったよね。ということは、ここは別の森なのか。
「この森は、最果ての森とは違って人の出入りがあるんだ。この森には強い魔物はほとんど出ないし、薬草の群生地がいくつもあるんだよ」
ライから説明を受けながら歩いていると、森の中の開けた場所に出た。そこには、草が青々と茂っていた。
生えている草をよく見ると、薬草図鑑に載っていたものと似ているものがある。
「りゃい、やくしょう?」
「ふふ、正解だよ」
見つけた草が薬草かどうかライに確認すると、合っていたようだ。ライが頭を撫でてくれた。
「せっかく見つけたから、採取してみようか。採取の仕方は分かるかい?」
薬草図鑑の記憶を呼び起こす。この薬草は、根っこは残して茎の根本部分を切断するんだったっけ?
「あう?」
茎を切るジェスチャーをすると、ライが「正解だよ」とまた頭を撫でてくれた。
でも、どうやって切ろう?
ウィンドカッターが頭をよぎったが、広範囲を刈り取ってしまう未来しか浮かばない。
「ふふ、魔力制御で威力を完璧にコントロールできるなら、ウィンドカッターでもいいんだよ。···制御が完璧ならね」
ライが念を押す。···やってみたくないこともないが、自信はない。失敗して別の薬草まで茎を切ってしまったらいけないし、別の方法がいいだろう。
「薬草採取のときは、採取に使う道具を持っておくといいよ。ナイフとか紐とか、袋とかね」
あ、そうか。つい魔法でどうにかしようと思っていたけど、道具を使えばいいのか。
「でもウィル君はまだ道具を扱いづらいだろうから、今回は私が代わりに採取するよ。···ふふ、そのうち魔法でやってもらうけどね」
それはつまり、完璧にコントロールできるようになれとおっしゃってます?
久々に、ライの笑顔に迫力を感じた。
その後も、色んな種類の薬草を見つけては、採取の仕方を確認しながら集めていった。
「ねえねえ、お昼ごはん食べよー」
「オレ、腹減ったぜー」
どこかで遊んでいたテムとファムが戻って来た。
「あ、そうだね。今回はここまでにしようか。ウィル君、お疲れさま」
薬草採取が思っていたよりも面白くて、つい熱中してしまった。採取していたのはライだが。
またジルがシートをサッと広げてテキパキと準備をしてくれる。
今日のお昼は、フランクさんのお店で買ったおにぎりだ。相変わらずお米が美味しくて、もりもり食べる。
そしてジルが、ファーティスの街で買った果物を切ってくれた。買って一週間ほど経つが、マジックバッグのおかげで瑞々しい。
「これから飛んで移動する予定だよ。ウィル君は眠くなったら我慢しなくていいからね」
お昼ごはんを終えて一息ついていたところで、ライがそう言った。
ジルが僕を抱えて背中を優しくトントンしてくれる。···ああ、これは眠くなるやつだ。
僕は、すぐにお昼寝タイムに突入した。
「ふふ、もう寝ちゃったね。可愛いなあ」
「そうだな」
心地良い深い眠りへと誘われながら、そんな会話が聞こえたような気がした。
僕が目を覚ましたとき、視界の下の方に木が見えたことに一瞬混乱する。ジルが僕を抱えて森の上を飛んでいる最中だったのだ。
「起きたか?」
ジルが気づいてくれた。
「まだそれほど時間は経っていないが···」
そうなのか。僕は目覚めスッキリな気分なので、しっかり熟睡できたのかもしれない。
「あ、ウィルくん起きたー?」
「どうした?腹でも減ってんのか?」
お昼寝時間が短かったようで、テムに少し心配された。でも、『腹でも減ってんのか』って···。僕、そんなに食いしん坊キャラだったっけ?
「ウィル君、おはよう。もうお昼寝はいいのかい?」
ライからも聞かれ、僕はコクコクと頷く。
「それならいいんだけど、我慢しなくていいからね?」
なんだか大事にされてるなあと思う。みんなの気遣いに思わずニマニマしてしまうくらい嬉しい。
「ぼくたちね、飛びながら鬼ごっこしてたんだよー!」
「楽しいぜ!」
僕のニマニマ顔が固まる。
ま、まさか、また雑草取りの感覚でゴブリンを狩っているのかな?
「ふふ、飛びながらね、視界に入ったゴブリンを討伐しているんだ」
やっぱりそうなのか!
しかも飛びながらって。通るついでに命を狩られるゴブリンに憐れみを感じる。
「ふふ、ウィル君もやってみるかい?サンドワームを倒せたんだから、今なら簡単にできるかもよ?」
爽やかな笑顔に圧を感じるのは気のせいだろうか。
前回はテムとファムの蹂躙を見ているだけだったが、ついに僕も命を刈り取る鬼ごっこに参加するときが来たようだ。
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