転生したらドラゴンに拾われた

hiro

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最果ての森・成長編

75. 予感

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 あの場での念話の習得は難しそうだと判断して、とりあえず朝ごはんを食べようという話になった。

「そいつ···ティアは何を食べるんだ?」

『そうだ!ワレの名はティアだ!ご主人がくれた名なのだからな!ワレは何でも食べるぞ!』

 ティアの尻尾がブンブン振られていて、可愛い。

「てぃあ、なんでも」

「何でも食べるということか?なら大丈夫か」

 ジルがテキパキと朝食の準備をしてくれる。ちゃんとティアの分まで用意してくれていたようだ。

『黒いバケモノ、なかなかやるのだな。いい匂いがするぞ』

「てぃあ、じる」

 ジルもティアのことをちゃんと名前で呼んでいたし、ティアもそうしてほしい。

 ティアの尻尾のフリフリがピタリと止まる。

『···ジ、ジル』

 非常に言いづらそうだ。でも、何度か呼んでいたらきっと慣れるだろう。

 ちゃんと呼べたので、よしよしする。

『ご主人!ワレは頑張るのだ!この黒いバ···んん!ジルに恐怖するのではなく、恐怖させるほど強くなるのだ!』

 やっぱりジルが怖いんだね。一緒に過ごせば、本当は優しいってことに気づいてくれるはずだ。

「うーん、ティアはジルのことをジルって呼んでなかったのかなー?」

 ファム、やはり君は気づいてしまったか···!
 どことなく面白がっている空気が伝わってくる。

「···ほう」

 あああ!ジル、気にしないで!ほんとに!気にしちゃだめだよ!

「何て呼んでたんだー?」

 テム!聞かないであげて!純粋に質問されると誤魔化しづらくなるから!

『ジル、ジル、ジル、ジル、ジル···』

 あああ!ティアが前足ガクガクしながら練習してるよ!

 僕はどうしたらいいんだ!?
 
 カオスな事態にパニクっていると、突然グゥ~と大きな音が聞こえた。
 途端にみんなが僕に注目する。

「···早く食べるか」

「あはは!そうだねー!ぼく、お腹ぺこぺこー」

「ほら、ウィルも早く食わねーとまた腹が鳴るぜ?ブハハ!」

 いい、いいんだ、笑われても!
 いつもは空気を読まないお腹とか言っていたが、今日ばかりは盛大に鳴った僕のお腹に愛しさすら感じる。

 僕の定位置、つまりジルの膝の上に座って愛らしいフォルムを撫でる。早くごはんを食べてあげないとね。僕のわがままボディは我慢が苦手なのだ。

 今日の朝ごはんは、サラダとパン、オニオンスープ、それからふわとろのスクランブルエッグだった。最後はファーティスの街で買った果物も出してくれて、ホテルの朝食って感じだなと思った。


「あう~」

 より丸みを増したお腹を撫で、満腹の幸せに浸る。

「果物まで食べられて幸せー」

「だな!やっぱファージュルム王国の果物は美味いぜ!」

『満腹なのだ!美味かったぞ!ジル!』

 ティアが床をご機嫌に歩き回っている。
 先ほどの練習の成果だろうか。随分とスムーズにジルと呼べている。

「てぃあ、おいちかった」

 ティアの言葉をジルに伝える。

「そうか」

 簡素な返事だが、ティアへの視線がこれまでより柔らかい。
 もう二人は大丈夫だろう。
 きっと仲良くなれる。そんな予感がした。
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