転生したらドラゴンに拾われた

hiro

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最果ての森・成長編

79. アースショット

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 口を開けたまま固まっているティアと目が合う。僕が首を傾げると、ハッとしたようにティアが動き始めた。

『ご主人···先ほどから···魔法、···なのか?』

 ティアはアイスウォールとボロボロになったアースウォールに恐る恐る近づき、鼻をヒクヒクさせている。
 あ、色々とアレンジしているから、初見だとびっくりするのかな?

「てぃあも、やる?」

 考え方とかは僕が教えるからと気軽な感じて聞いてみた。

『えっ、あれを···?ワレが···?ま、まさかご主人もこやつらと同類だったとは···』

 あ、あれ?なんか僕、引かれてない?
 こやつらって、テムとファムのことだよね?僕は決して感覚派でも天才でもないよ!誤解だよ!

「てぃあも、できる!ぼく、おちえる!」

 そう、理解すればできるはずなんだ!

『そうなのか···?それならば、ありがたく···』

 お、ティアがノッてくれた。
 よし、それならまずは、僕が最初に習った攻撃魔法を教えよう。

「てぃあ、あーしゅしょっと」

 僕は新しく作ったアースウォールにアースショットを撃ち込む。
 ライに解説したみたいに、地面に弾丸の構造や回転を描いて説明する。

『な、なんと恐ろしい魔法なのだ···。いや、それでこそ、ワレのご主人か···』

 なんだか変な納得をされているような気がするが、まあよしとしよう。

『これは、とてつもない速さで発射されるのだな。これでは避けることもままなら···あっ』

 あっ?

『そうか、なるほど···。これを習得することで、前世のワレから一回り成長できるということなのだな。···ご主人、ワレはご主人の期待に応えてみせるぞ!』

 何やら考え込んでいたティアが、バッと顔を上げて固い決意を示す。
 なんだか変な解釈をされているような気がするが、まあよしと···。

 ···あっ。
 そういえばアースショットって、不幸な事故でマンティコアを倒したときの魔法だった。

 な、なんだか申し訳ない。

 ティアを見ると、『アースショット!』と言いながら前足を上げてみたり、ぴょんっとジャンプしたりしている。···可愛い。

 ティアは僕がアースショットを教えたことを前向きに捉えてくれているようだ。なので深い意味はなかったとわざわざ訂正する必要はないだろう。

『ご主人···成長には多大な努力が必要なのだな』

 なかなか発動しないアースショットに、息を切らしながらティアが言う。···可愛い。
 前向きなのはいいことだと思うよ。

 でも発動しないのはなぜだろうか。
 ティアを魔力感知で見てみると、どうやら魔力にムラがあるようだ。魔力の操作が上手くできていないということだろうか。

 そうか、最初は魔力操作からやるべきだったんだ。

 もうちょっと、もうちょっとだけ可愛いティアを見てから教えることにしよう。


 魔力操作のことを指摘したときのティアは、『ガーン!』という文字が背景に見えそうなほどだった。
 ごめんね、僕が可愛いティアをもう少し見ていたいがために、ちょっと放置してしまったんだ。
 しかしティアはすぐに回復して魔力操作について聞きたがった。前向きなティア、可愛い。
 
 魔力操作についての説明はライにお願いすることにして、「昼食にするか」というジルの言葉で、お昼ごはんを食べることにした。

 
 ライが家に来たのは、お昼ごはんを終えてティアと一緒にお昼寝をして、テムとファムと、それからティアとお喋りをしながらのんびり過ごして、夜ごはんを食べた後だった。

「ティアがマンティコアだったって、本当かい!?」

 玄関をバーンと開けて開口一番、ライが言う。

「王宮にいるときにジルから念話が来て驚いたよ!急いで仕事を終わらせて来ちゃった!」

 ライがテンション高めで喋り続ける。

「ふふ、是非とも念話を習得してもらわないとね。ティア、頑張ろうね!ふふふ、マンティコアの生態はほとんど知られていないからね、色々話を聞かせてもらうよ」

 研究者の血が騒いでいるのだろうか。ライがものすごい迫力の笑顔でティアに迫る。

『ご、ご主人···!こやつ、様子がおかしいぞ!大丈夫なのか!?』

 それがね、大丈夫なんだよ。
 ちょっと、テンションが上がっているだけなんだ。

 ぷるぷる震えているティアには申し訳ないが、僕にはライを止めることはできないのだ。
 僕はひたすらティアをよしよしと撫でる。

 安心してと思いながらティアを撫でていると、ライの視線が上がり、空色の瞳が僕をとらえた。

「あ、そうそう。さっきここに着いたとき、庭の一部がすごく寒かったんだよね。暗くて分かりづらかったけど、よく見たら透明の冷たい壁ができていて驚いたよ。···あれは、どうしたのかな?」

 ···あの氷の壁、まだ残ってたんだ。

 ガラス玉みたいな瞳で見つめられ、どこまでも見透かされているような気分になる。
 というか、僕の仕業だと確信しているんだね。まあ、その通りなんだけど。

「あ、あいしゅうぉーる···」

 僕はティアをひたすら撫でる。
 ああ、安心する。

「ふふ、ふふふ。この感覚、久しぶりだよ。ウィル君、明日、絶対に、話を聞かせてもらうよ」

「あう···」

 よしよし。よしよし。
 ティアに癒やしを求めてひたすら撫でる。

 ライを止めることはできないのだ。
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