転生したらドラゴンに拾われた

hiro

文字の大きさ
83 / 115
最果ての森・成長編

80. テイムスキル

しおりを挟む
「そういえば、ウィル君にだけティアの声が聞こえるんだって?」

 少し落ち着いたライが僕に訊ねる。

「あう」
 
 僕が頷くと、ライの目が輝く。

「ウィル君、ちょっと鑑定させてもらうね。···あ、やっぱり!『テイム』スキルを取得しているよ!」

 おや。そういえば最近、ステータスの確認をしていなかった。
 ライはこのスキルを予想していたようだ。やはり、博識なライは頼りになる。

「ティアがウィル君の従魔になったということだよ。魔物をテイムするとね、その魔物の感情が伝わってくるんだ。主従の繋がりができるためだと言われているよ」

 なるほど。いつの間にか僕はティアをテイムしていたのか。

「テイムは、もともとテイムスキルを持っている人が自分よりレベルの低い魔物に名前を付けて、魔物がそれを受け入れると成立すると言われているんだ」

 ほうほう。ティアは生まれてからそんなに日数が経っていないようだし、僕の方がレベルが高かったのだろう。···マンティコアを倒して、随分レベルが上がったしね。

「でもウィル君の場合は、ティアの方からそう望んだことで、ウィル君にテイムスキルが芽生えたのかな?もしくは名付けのときにウィル君が自力で取得したのかもしれないね」

 ふむふむ。その辺りは今となっては分からないが、いずれにしてもティアのおかげでテイムスキルを取得できたんだ。

「あと、通常の場合、従魔から伝わってくるのは感情なんだ。でもティアの場合は声が聞こえるんだよね?これはおそらく、ティアの知力が高くてこちらの言葉を完全に理解しているからだと思うよ」

 おお!ティア、すごい!

「従魔のレベルが上がると会話ができるようになる個体もいるけど、もともとの知力にもよるからね。前世の記憶を持っているからかもしれないけど、最初から会話ができるティアはすごいよ!」

 ティアを褒められると僕も嬉しい。
 隣を見ると、期待に満ちた視線が送られてきた。

 よしよし。よしよし。
 ティア、すごいぞ。

 期待に応えて、ティアを撫でる。
 ティアの満足気な表情に、僕の頬も緩む。

「ふふ、もうすっかり仲良しになったね」

 そう、僕達は仲良し家族なのだ。

『ワレはご主人の家族だからな!当然なのだ!』

 あ、ティアも同じことを考えていたみたいだ。考えがシンクロすると、なんだか嬉しくなる。

「ふふ、本当は今すぐにでも念話の練習をしたいけど、そろそろ寝る時間かな?また明日来るから、明日から始めようね」

 ライが微笑んで、僕とティアの頭を撫でる。

 もうそんな時間か。そう言われると、なんだか眠たくなってくる。

「ぼくも、今日は帰ろうかなー。またいつかお泊りしてもいい?」

「オレもまた泊まりたいぜ!」

 テムとファムなら、僕はいつでも大歓迎だ。
 ジルを見ると、ちょっと頷いて僕の頭を撫でる。

「ああ、いつでも泊まりに来てくれ」

「わーい!ありがとー!」

「やったぜ!」

 喜んでもらえて、僕も嬉しい。

「ふふ、それじゃあ私はそろそろ帰るよ。みんな、おやすみ」

「ああ、忙しいのに来てもらって助かった」

 ジルがお礼を言うと、ライが爽やかな笑顔を見せる。

「ふふ、私の大事な弟子に関することだからね。何かあればいつでも飛んで来るよ」

 か、かっこいい···!
 そろそろ慣れたと思っていたが、やはりイケメンはイケメンだ。
『何かあればいつでも飛んで来るよ』は、僕の将来カッコよく決めたいセリフ集に追加するとしよう。

「りゃい、あいあと。おあしゅみ」

「ふふ、おやすみ」

 最後にライが僕の頭を撫でて、家を出る。

「オレらも帰るか!んじゃ、またな!」

「おやすみー!」

 ライに続いて、テムとファムも帰る。

「おあしゅみ!」

 ばいばいと手を振って、テムとファムを見送る。


「お前達も、もう寝るか?」

 やはり人が減ると、寂しくなるものだ。三人になった部屋で、ジルが僕達に訊ねる。
 僕は眠いけど、ティアはどうなのだろうか。

『ご主人が寝るなら、ワレも一緒に寝るぞ!』

 尻尾をフリフリしているティアを、思わず抱きしめてそのまま抱っこする。
 
「てぃあと、ねる」

「そうか」

 ティアを抱えた僕を、ジルが抱える。そのまま僕の部屋に連れて行ってくれて、寝る準備をする。

「じる、あいあと。おあしゅみ」

 パジャマへのお着替えを手伝ってくれたジルにお礼を言って、おやすみの挨拶をする。

『おやすみなのだ!』

 ティアも尻尾をパタパタさせながら言う。もうジルに対する怖い気持ちはないのかな?

「おやすみ」

 ジルが僕とティアの頭を撫でて、部屋を出る。


 ティアにもおやすみの挨拶をしようと思ったら、ティアから声が聞こえた。

『ご主人、改めて、ワレを受け入れてくれてありがとう。ご主人の仲間も、みんないい奴なのだ。ワレはご主人と出会えて幸せなのだ』

 こうやって自分の気持ちをきちんと相手に伝えられるのは、ティアの美点だと思う。

「ぼくも、しあわちぇ」

 ティアをぎゅっと抱きしめる。
 僕も、ティアと出会えて良かったと思っているよ。

 僕達はそのまま、幸せな気持ちで眠りに落ちた。


 このとき僕は、明日、ライによる事情聴取が行われることをすっかり忘れていた。
 そのおかげか、この日見た夢はとても平和で幸せだった。
 
しおりを挟む
感想 380

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...