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最果ての森・成長編
86. 念話
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ティアの得意属性が分かって数日。
僕達は庭で魔法の練習をしていた。
ティアは今日から魔力操作や魔力感知の練習に加えて、念話の特訓を始めることになった。
ライがティアにコツを伝授している。
「念話はね、思考を魔力に乗せて周囲に放つイメージだよ。声が音として伝わるみたいにね。だから実は、誰か一人に絞って伝えるよりも、周りにいるみんなに伝える方が簡単なんだ」
なるほど。特定の一人に対してだと、その人にだけ届くようにしなくちゃいけない。ただ周囲に放つよりも、制御が難しくなるということか。
『思考を魔力に乗せる···?うむむ、むむむむ···』
ティアが目を閉じて難しい顔をしながら首をひねっている。きっと一生懸命イメージをしているのだろう。
「うーん、最初から言葉を伝えるのは難しいかもしれないから、まずは『あ』という音を魔力によって伝えるイメージをしてみようか。『あ』という音を伝えたいと思いながら、魔力を放出するんだよ」
『おお、それなら出来るかもしれん!』
分かりやすかったのか、ティアが目をぱっちり開けて尻尾をフリフリしている。
伝えたいと思いながら魔力を出すってことは、『言いたいことを、届けーって思ったらいいんだよー』というファムの言葉が、間違いではなかったということだ。
ただ、ちょっと簡単に言い過ぎていたのだ。···まあ、ファムは本当にこの感覚でやっているのだろうけど。
あ、それなら、『強く思えば伝わるんだぜ!』と言っていたテムの言葉も、案外本当だったりするのだろうか。
「ウィル君には、火属性と闇属性の魔法を教えるね。今日で六属性の初級魔法をコンプリートしよう!」
ティアが練習に入ったのを見て、ライは僕の方に向き直る。
「まずは、闇属性のダークアローからやってみようか。ダークショットよりも、弱体化の効果が高いんだ。飛距離はショットの方が多少長いけどね」
ライはそう言ってアースウォールを作り、それに向かって『闇矢』と唱えた。
黒い矢が音もなく壁に刺さり、スッと消える。
壁に近づいて矢が刺さった部分を見てみると、ひび割れていて、ポロポロッと土の欠片が剥がれ落ちている。
「ウィル君、ダークショットはもう出来るから、イメージは簡単かな?」
ライがニコニコしながら言う。
僕もアースウォールを作って、闇の矢をイメージする。
弱体化の効果が高いということは、ダークショットのときよりも壁は脆くなるはずだ。ジルが以前見せてくれたみたいに壁全部をサラサラと崩すのは難しくても、それに近いことはしたい。
「『闇矢』」
漆黒の矢が放たれる。
黒くて重量感がありそうな矢なのに、スッと壁に溶け込むように刺さるから不思議だ。
そして矢が消えたと思ったら、サラサラと砂が落ちる。
矢が刺さった部分を中心に、壁が円錐形に大きく抉れている。
これは、結構いい感じに出来たのではないだろうか。
「ふふふ、分かっていたよ。ウィル君の魔法が見本を超えることくらい、分かっていたさ。想定内···。そう、これは想定内なんだ」
ライはニコニコしながらも、最後の方は自分に言い聞かせている感じになっている。
念話の練習をしながらもチラチラとこちらを気にしていたティアが、僕の壁を見てカッと目を見開く。
僕と目が合うと、ティアはハッとしたように念話の練習に戻った。
ライが僕に魔法を教え、僕が魔法を放ち、ティアが目を見開く。
この流れを何度か繰り返した。
「ふふ、これで初級魔法は一通り習得できたよ。ウィル君、おめでとう!」
「りゃい、あいあと!」
ライが爽やかな笑顔で僕に拍手を送る。
僕がお礼を言うと、ライがニコニコしながらこう言った。
「思っていたより早かったから、今日はもう一つ、魔法を覚えてみない?今度は火の上位属性である、炎の魔法だよ」
おお!
氷という水の上位属性があるんだから、他のも上位属性はあるだろうと思っていたんだ。
「炎は火よりも火力がグンと上がるんだ。もちろん魔力もその分消費するけどね。この庭でできそうなのは···フレイムかな。対象の足元から火柱を発生させる魔法だよ」
ライがニコニコしながら続ける。
「ふふ、火柱だったらイメージは簡単かな?ウィル君、あのアースウォールを火柱で包むイメージでやってみてごらん」
そう言って、これまでの魔法でちょっとボロッとなっている僕のアースウォールを指差した。
ライの見本を見ずに、やってみろということか。見本を見せてもらえるとよりイメージしやすくなるからありがたいんだけど···今回はそれに頼れない。僕は自力でイメージを固める。
火柱、火柱···。柱というからには、高さはあった方がいいよね。
ファイアウォールは地面にあまり影響なかったけど、今度は土の壁を燃やさなきゃいけない。火力高めで、その分魔力をマシマシで。
標的であるアースウォールからズレないように、魔法の起点をしっかりと見る。
ぎゅっと魔力を込めて、魔法名を唱える。
「『火柱』!」
次の瞬間、ドゴォンッという轟音を立てて、見上げるほど高い火柱が立ち昇った。
おお、なかなか火力がありそうだ。
「ふふ、ふふふ。そう、これでこそ、ウィル君だよ」
ライの声に振り返ると、その向こうでこちらを見ているティアが目に入った。
目をこぼれんばかりに広げて、ついでに口もパカッと開けている。
「な、なんじゃこりゃーーー!」
ティアの叫びが周囲に響き渡った。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:56
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知、テイム
魔法:火属性魔法(初級)
水属性魔法(初級)、氷属性魔法(初級)
土属性魔法(初級)
風属性魔法(初級)
光属性魔法(初級)
闇属性魔法(初級)
火柱
耐性:熱冷耐性
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
僕達は庭で魔法の練習をしていた。
ティアは今日から魔力操作や魔力感知の練習に加えて、念話の特訓を始めることになった。
ライがティアにコツを伝授している。
「念話はね、思考を魔力に乗せて周囲に放つイメージだよ。声が音として伝わるみたいにね。だから実は、誰か一人に絞って伝えるよりも、周りにいるみんなに伝える方が簡単なんだ」
なるほど。特定の一人に対してだと、その人にだけ届くようにしなくちゃいけない。ただ周囲に放つよりも、制御が難しくなるということか。
『思考を魔力に乗せる···?うむむ、むむむむ···』
ティアが目を閉じて難しい顔をしながら首をひねっている。きっと一生懸命イメージをしているのだろう。
「うーん、最初から言葉を伝えるのは難しいかもしれないから、まずは『あ』という音を魔力によって伝えるイメージをしてみようか。『あ』という音を伝えたいと思いながら、魔力を放出するんだよ」
『おお、それなら出来るかもしれん!』
分かりやすかったのか、ティアが目をぱっちり開けて尻尾をフリフリしている。
伝えたいと思いながら魔力を出すってことは、『言いたいことを、届けーって思ったらいいんだよー』というファムの言葉が、間違いではなかったということだ。
ただ、ちょっと簡単に言い過ぎていたのだ。···まあ、ファムは本当にこの感覚でやっているのだろうけど。
あ、それなら、『強く思えば伝わるんだぜ!』と言っていたテムの言葉も、案外本当だったりするのだろうか。
「ウィル君には、火属性と闇属性の魔法を教えるね。今日で六属性の初級魔法をコンプリートしよう!」
ティアが練習に入ったのを見て、ライは僕の方に向き直る。
「まずは、闇属性のダークアローからやってみようか。ダークショットよりも、弱体化の効果が高いんだ。飛距離はショットの方が多少長いけどね」
ライはそう言ってアースウォールを作り、それに向かって『闇矢』と唱えた。
黒い矢が音もなく壁に刺さり、スッと消える。
壁に近づいて矢が刺さった部分を見てみると、ひび割れていて、ポロポロッと土の欠片が剥がれ落ちている。
「ウィル君、ダークショットはもう出来るから、イメージは簡単かな?」
ライがニコニコしながら言う。
僕もアースウォールを作って、闇の矢をイメージする。
弱体化の効果が高いということは、ダークショットのときよりも壁は脆くなるはずだ。ジルが以前見せてくれたみたいに壁全部をサラサラと崩すのは難しくても、それに近いことはしたい。
「『闇矢』」
漆黒の矢が放たれる。
黒くて重量感がありそうな矢なのに、スッと壁に溶け込むように刺さるから不思議だ。
そして矢が消えたと思ったら、サラサラと砂が落ちる。
矢が刺さった部分を中心に、壁が円錐形に大きく抉れている。
これは、結構いい感じに出来たのではないだろうか。
「ふふふ、分かっていたよ。ウィル君の魔法が見本を超えることくらい、分かっていたさ。想定内···。そう、これは想定内なんだ」
ライはニコニコしながらも、最後の方は自分に言い聞かせている感じになっている。
念話の練習をしながらもチラチラとこちらを気にしていたティアが、僕の壁を見てカッと目を見開く。
僕と目が合うと、ティアはハッとしたように念話の練習に戻った。
ライが僕に魔法を教え、僕が魔法を放ち、ティアが目を見開く。
この流れを何度か繰り返した。
「ふふ、これで初級魔法は一通り習得できたよ。ウィル君、おめでとう!」
「りゃい、あいあと!」
ライが爽やかな笑顔で僕に拍手を送る。
僕がお礼を言うと、ライがニコニコしながらこう言った。
「思っていたより早かったから、今日はもう一つ、魔法を覚えてみない?今度は火の上位属性である、炎の魔法だよ」
おお!
氷という水の上位属性があるんだから、他のも上位属性はあるだろうと思っていたんだ。
「炎は火よりも火力がグンと上がるんだ。もちろん魔力もその分消費するけどね。この庭でできそうなのは···フレイムかな。対象の足元から火柱を発生させる魔法だよ」
ライがニコニコしながら続ける。
「ふふ、火柱だったらイメージは簡単かな?ウィル君、あのアースウォールを火柱で包むイメージでやってみてごらん」
そう言って、これまでの魔法でちょっとボロッとなっている僕のアースウォールを指差した。
ライの見本を見ずに、やってみろということか。見本を見せてもらえるとよりイメージしやすくなるからありがたいんだけど···今回はそれに頼れない。僕は自力でイメージを固める。
火柱、火柱···。柱というからには、高さはあった方がいいよね。
ファイアウォールは地面にあまり影響なかったけど、今度は土の壁を燃やさなきゃいけない。火力高めで、その分魔力をマシマシで。
標的であるアースウォールからズレないように、魔法の起点をしっかりと見る。
ぎゅっと魔力を込めて、魔法名を唱える。
「『火柱』!」
次の瞬間、ドゴォンッという轟音を立てて、見上げるほど高い火柱が立ち昇った。
おお、なかなか火力がありそうだ。
「ふふ、ふふふ。そう、これでこそ、ウィル君だよ」
ライの声に振り返ると、その向こうでこちらを見ているティアが目に入った。
目をこぼれんばかりに広げて、ついでに口もパカッと開けている。
「な、なんじゃこりゃーーー!」
ティアの叫びが周囲に響き渡った。
名前:ウィル
種族:人族
年齢:1
レベル:56
スキル:成長力促進、言語理解、魔力操作、魔力感知、テイム
魔法:火属性魔法(初級)
水属性魔法(初級)、氷属性魔法(初級)
土属性魔法(初級)
風属性魔法(初級)
光属性魔法(初級)
闇属性魔法(初級)
火柱
耐性:熱冷耐性
加護:リインの加護
称号:異世界からの転生者、黒龍帝の愛息子、雷帝の愛弟子
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