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40章 戦いの中心に俺がいる?

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40章 戦いの中心に俺がいる?



 城の正面入り口の前で降りた。

「おい! どこに行くんだ? まさかこのまま牢屋にいれられるなんてことはないよな」

 マルケスが俺の服を引っ張り、小声で聞いてくるので、教えてあげる。

「心配するな。 王様が俺たちに会いたいそうだ」
「「えぇ~~~~~っ!」」

 マルケスとフィンは冷汗が噴き出す。 スーガは平気そうだ。 こういう経験があるのか?


 入り口で待ち受けていた兵士に連れられて中に入っていくが、何もない場所でスーガがつまずいてこけそうになった。 


 もしかしてスーガも緊張してる?


 お城など初めて入る。

 一つ一つの規模がデカい。 エントランスだけで俺の広い部屋の5倍はあるだろう。

 入り口を入ると目の前には左右に分かれる広い階段が、ハート形を縁取るように登っていくようになっている。

 ただ、思ったより装飾が少ない。 全てがピカピカに磨き上げられていて、大きなフラワースタンドや燭台なども沢山あるように見えるのに、もちろん花は飾られておらず、燭台にロウソクを飾る代わりに所々にランプが置いてあるだけだった。

 長い廊下を連れられて歩いている間にも、壁には大きな絵画が飾られていたであろう白く四角い跡が残っているのがいくつも見えた。



 しかし、案内された部屋には何人もの執事やメイドが壁際に控えていて、テーブルの上には豪勢な食事が並んでいた。

 そして廊下とは違い、この部屋の装飾は豪華で、背の丈ほどの大きな壺には美しくアレンジされた花が盛られ、高価そうな絵画が飾られ、カーテン一つとっても重厚感あふれる豪華さだ。


 この落差に違和感を感じながら中に入った。


 俺たちが入ると同時に反対側の部屋から40~50歳くらいの、小柄で小太りの優しそうな王様ともう一人、プラチナの美しい髪の男性が入って来た。

 どう見ても人竜族で、もちろん20歳くらいで美しい顔をしている。 黒地で襟の所に赤いラインが入ったローブで、文官によく見る服装を着ているのだった。


 国王は迷わず俺の所に駆け寄る。

「シーク殿ですか。 お会いできて光栄です。 アンドゥイ国王のシュッツベルクです」
 


 国王様に光栄ですなどと言われて逆に恐縮だった。



「初めまして。 シークです。 そしてレイとフェンリルです」

 その後、アッシュがマルケスたち3人とキリルを紹介する。

 スーガはスマートに挨拶を返したが、マルケスとフィンは、笑えるほどガチガチに緊張していた。


 ここは、笑っちゃいけない!


「よくおいで下さいました。 あぁ、彼は宰相のネビル・セルカーンとエクスです」

 紹介されたネビルは優雅に挨拶をし、真っ白なドラゴンのエクスも頭を下げる。

「え?···セルカーンって······」
「私の父です」と、アッシュが言う。


 この国にいる2人の竜生神って、この2人なのね。

 アッシュの肩からアルがパタパタと飛んでエクスの所へ行き、挨拶をしあっている。

 二人きりのドラゴンなうえに、竜生神が親子なのだから当然なのかもしれない。 ドラゴン同士も仲が良さそうで、微笑ましい。



 みんなが席に着く。

 にこやかな国王様から、とにかく召し上がってくださいと言われ、真っ先にレイが食べ始めていた。


 少しは遠慮しろよ!


「ガドル殿からの書簡を読ませていただきました。 我々もレンドール国の事は調べておりますが、どうやらまずいことになっていますな」

 シュッツベルク国王は食べながら話しかけてきた。 話せば話すほど、気が弱そうに見えてくる。


「ここから以西には小国しかありませんが、竜生神もそれなりにおりますし、各国で協力すれば必ずや勝てるかと思っています」

 そう言ったのはネビルだ。

「いやいや! 油断は禁物と言っているだろう」

 シュッツベルク国王はネビルをたしなめてから俺に向き直る。


「わが国では200年前の大戦の事を代々言い伝えられております」



 大戦の話を要約するとこうだ。

 200年前、このアンドゥイ国があった辺り一帯は、世界の中心になるほどの大国だった。

 しかし、ある時ブラックドラゴンと竜生神が現れ、王家の血族を皆殺しにし、逆らう家臣まで全て殺してこの国を手に入れた。

 そして黒魔法を使って魔物を操り、人間までも魔物に変貌させて次々に他国を滅ぼしていった。

 そんな時、レインボードラゴンとその竜生神が現れ、生き残った人間と精霊や妖精、そして一部の魔物たちをも一つに纏め上げ、協力して戦い、ブラックドラゴンとその竜生神を倒すことができたという。



「戦いが終わったときには、この辺りの国は全て灰と化していたそうです。
 そして、レインボードラゴンと竜生神もブラックドラゴンとその竜生神と刺し違えて事切れたと聞いています。
 それだけ激しい戦いだったです。
 すでに動きだしたレンドール国の魔の手が山脈を越えてこちらに向く前に、何としても万全の準備を整えておかねばなりません。 時間はないのです。
 我がアンドゥイ国は西側諸国とできる限りの対策を練るつもりにしています。 
 シーク殿も、かの国が事を起こす前に動き出してください。 おねがいします。」

 話し終わったときには先ほど気が弱そうに思えたシュッツベルク国王の印象は変わっていた。


 でも、現実の事ではなくて物語を聞いているようだった。 



 俺にお願いしますと言ったのか?


 その戦いの中心に天龍とその竜生神がいる? いや、俺がいる?



 以前、ガドルが俺に言った言葉。



――― この世界を救って下され ―――

 

 本当に俺に言った言葉だったんだ。





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