パチンカスだった男、ダンジョンの出現によりダンジョン依存症になる。

蜂谷

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第十一話 10層を抜けたらそこは雪国でした

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 キングレッドリザードマンを舞に倒してもらってから数日、俺は相変わらず10層で戦っていた。
 キングと対した時の興奮が忘れられなかったからだ。
 あれ以来キングと会うことはないが、レッドリザードマンを徹底的に倒していく。出てくるドロップはRまでしか出なかった。しかしガチャでいい装備が出た。

 SR水の皮鎧

 火山地域を涼しく過ごすには打ってつけの装備だ。リザードマンの皮鎧も暑さ耐性はついているが、SR水の皮鎧はさらに冷却効果も持っているため常に涼しい、バッテリーいらずの空調服のようなものだ。

 更に快適になった俺はリザードマンを倒しまくった。そしてSRリザードマンの盾をついにドロップした。これでキングと相対してもいけると思い、キングを探す日々が始まった。
 この数日でたくさん探索したおかげだろうか、意外とすぐ見つけることができ、探索を開始して3時間ほどでキングを発見した。
 奇襲をかけてもよかったが正面から倒したかったので、剣を床に叩いてこちらの存在を知らせる。振り向いた相手を見据えまっすぐ行って右から上段に切りかかる。もちろん盾で防御されるが、反撃してきた相手の攻撃をSR盾で防ぐ。前回と違い防御力のあがった盾と鎧のおかげで安定して相手の攻撃を受け止め、むしろ少し相手を押し込むことが出来た。
 
 余裕だなと思った。
 装備差はないが身体能力、剣術の差を実感して相手に連撃をしかける。右、左、右と見せかけて左からと相手を翻弄して攻撃を繰り返す。何回か攻撃するうちにキングはその場に倒れた。
 ドロップはRキングレッドリザードマンの鎧だった。

「ここはSRドロップだろうがよ!」

 俺はSRが出なかったことに肩を落とし、キングとの対戦はこれくらいでいいかと考えた。

 続いて更に下層へと向かおうと11層へと降りた。ここからはまた迷宮のような石壁の空間になる。どうやら5の倍数の階層が広大な空間を有しているようだ。15層に向けて降りていくと、コボルトのようなモンスターや装備のしっかりしたオーク、赤い色したスライムなど多様な種類の敵と遭遇した。

 中々敵が強くなっており、ポーションを使うようになった。回復魔法もあるらしいが、専用の武器が必要でそういう人を総称してヒーラーと呼ぶ。そういった者は需要が高く、俺のようなソロ冒険者には縁のない存在だ。
 俺は苦々しい思いをしながら、上にある店でポーションの購入している。タラーで支払う場合1割引きになるため、入金を含めて単純計算で2割お得になるのだ。

「ポーションうめぇ、エナジードリンクみたいな味たまんねぇな」

 コボルトとの戦闘で負った傷をポーションで癒す。ケガをした患部に直接振りかけると瞬間的に回復するがその効果は少し落ちる。時間に余裕があるときは飲んだ方が、通常の効果が得られるのだ。

 あと薄々思っていたのだが、俺強くなってないか?レベル的なものが見れればレベル30とかそれくらいありそうな感じ。装備による攻撃力や防御力の上昇は感じているが、それ以外にも自分の俊敏性や体幹の強さを感じることがある。

 ダンジョンから出ると、そういった感覚が抜けてしまうのでダンジョン内限定のようだが、レイスを狩り続けた日々は無駄じゃなかったと思えた。
 さらにレッドリザードマンとの戦いによって体は少し引き締まり、現実でもなかなかいい肉体になっている。

 今後は装備の更新と共に、目に映るモンスターを出来るだけ倒し、よくわからない力を吸収して強くなることを目標とした。
 10層のキングをソロで倒せる程度の装備で15層にたどり着くまで、危機という危機はなかった。
 もちろんケガを負うことや苦戦することもあったが、命の危険まで感じるほどではなかった。いい戦いだったぜ、と心の中でモンスターに感謝を述べれる位には余裕があった。

 15層に降りると、凍えるような風が吹き付けてきた。豪雪地帯のように雪が積もっており、足が取られるくらいの深さだ。何故か通り道だけは除雪車で雪をどかしたように平坦な道となっており、恐らくこのまま進んでいけば出口へと進めるのだろう。

 一旦出口までいこうと道に沿って進んでいく。すると白い毛並みの狼が遠くから走ってくる。雪をものともせず走ってくるモンスターに盾を構えて衝撃に備える。大きな口を開けて襲い掛かってくるそれを盾で防いで、右手に持つ剣で切りつける。
 防刃効果のある毛皮なのか、大した傷もつかず再び襲い掛かってくる。今度は剣を右手から離し、顔面に拳をぶちこむ、これは効いたようで仰向けに倒れる。俺はその隙を見逃さず、アイテムボックスから咄嗟にR剣を取り出し心臓に向かって突き刺す。狼の急所だったのかその一撃で倒すことが出来た。しかしR剣は砕けてしまい、予備の剣がSSR雷の剣だけとなった。

「あー壊れたか、他の装備もそろそろ限界かもな」

 10層で酷使していた装備をアイテムボックスから確認する。どの装備品もくすんでいてかなりボロボロだ。よく今までこんな装備で10層で戦っていたなと思った。途中からSR武器、SR鎧をつけていたので鎧の痛みは少ないが、15層で使うには危険だと判断した。ドロップしたRホワイトウルフの皮をアイテムボックスにいれる。こういった素材が何に使われているかは謎だ。装備品としてドロップすれば装着できるが、素材を加工して武具にしているとは聞いたことがない。

 まぁ俺には関係ないことだからいいか。そのまま道に沿って出口と思われるところを目指す。途中ゴーレムと遭遇したが、いい装備品がドロップしなさそうだったし、物理攻撃が効かなそうだったので逃亡した。ゴーレムは足が遅く、俺にはついてこれなかったみたいだ。

 道の果ては予想通り出口へと繋がっていた。道中相手にしたウルフとゴーレム以外にも道を外れれば遭遇することができるだろう。ただ、この雪の中を順調に行軍するにはいい装備がなかったので16層に降りワープゲートを使って1層へと戻った。

 お店にいいものがないか商店を訪ねる。ポーションを買うのに何度も足を運んでいるが装備を見ることはなかったのでこれを機にずらっと一覧を見る。どうやら15層に適した装備は見当たらない。そもそも雪に適した装備ってなんだろう。やっぱりあの雪の上を歩けるかんじきかな。11~14層の間を探索してドロップしそうなモンスターを探してみよう。
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