パチンカスだった男、ダンジョンの出現によりダンジョン依存症になる。

蜂谷

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第二十四話 楽しい時間ってのは長く続かねぇもんなんだ

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 舞との探索は毎日とはいかなくなってきた。俺の都合で予定を変えているからだ。
 もちろん空いた時間は優菜ちゃんとのデートに使っている。

「私は9層なら一人でも出来るし、浮ついたあんたと一緒にやるよりは一人の方がいいから、少しはいちゃついて頭冷やしてきてね」

 とのことだ。

 優菜ちゃんも就活が本格的になってきており、空いてる時間はそうないが、会えない時間はダンジョンに潜っていればいいので時間が無駄になることもない。
 優菜ちゃんとは清い交際を続けており、キス止まりだけどよくキスをする。お部屋デートではそういう雰囲気になったけど、避妊具がなかったのでやめておいた。

 そんな日々を過ごして一か月、優菜ちゃんと話をした。

「誠さん、今度和人と杏と会うんですけど一緒にどうですか」
「ああ、そういえば二人も就活で忙しいんだっけ、順調なの?」
「二人は私と違ってもう最終選考まで何社か進んでいるらしいですよ」
「へぇ~すごいなあ」

 優菜ちゃんと付き合ってから、付き合う前のホテルに行ったとき以前から彼らとは会っていない。これは俺のこと自慢したいのかな?

「いいよ、久しぶりに二人にも会ってみたいしね」
「それじゃあ予定立てておくのでよろしくお願いします」

 こちらは時間のきく自由業なので相手の予定に合わせるのが楽だ。
 先にそちらに予定を立ててもらっている。
 いつも予定を立てるのは優菜ちゃんだ。

 新卒での就活ってどんなの、とか、SE対策どんな感じとか俺の知らない就活事情についての話をする。優菜ちゃんはあまりうまくいっていないようで、慰めて~って俺に寄りかかってくる。くぅ可愛いやつめ。


 3人と会う予定の日になり、待ち合わせのところに向かう。

「こんにちはっす」
「こんにちは、」
「あ、誠さんこっちです」

 俺は三人に呼び掛けられそちらを見ると、和人と杏が腕を組んでいるのが目についた。あれ?あの二人って付き合ってたっけ?そう思っているとこっちに優菜ちゃんが来て腕を組んで引っ張ってくる。

「というわけで、私も誠さんと付き合ってまーす」
「「知ってる~」」

 二人に自慢するかのように報告する優菜ちゃん、その顔はいつも見せる笑顔よりちょっとこわばっているように感じた。


 ストライク!
 俺の投げたボールが全てのピンを倒す。今更だが4人でボーリング場に遊びに来ている。今までは俺へのお礼という体だったのでこういったことはしていなかった。今度はカラオケなんかもいいかもしれないな。

 優菜ちゃんとハイタッチをしていると、和人達が隣でいちゃいちゃし始めた。

「こんなところで、やめてよ~」
「いいじゃん、誰も見てないって」
「私たちが見てるんだけど」

 微笑ましいやり取りを見つつ、ならこっちも、とちょっと優菜ちゃんにちょっかいを掛ける。それをやんわりと拒否される。いいじゃん、俺達もイチャイチャしようぜ。
 俺はそれでも構わずちょっと強引に腰に手を当てた。

「やめてって!」

 少し大きな声で優菜ちゃんが手を振りほどいた。

「ごめんなさい、ちょっと気分が悪いから飲み物買ってくるね」

 パタパタと走り去っていく彼女を俺は追いかけられずにいた。

「どうしたんっすかね、優菜のやつ、あんなに誠さんのこと自慢してたのに」
「なんだろうね~、今日あれの日かも、」

 杏ちゃんは何気に遠慮ないな。
 ここで追いかけないのもなんだなと思い、一度止まった俺はもう一度踏み出し彼女の後を追う。
 優菜ちゃんは追いかけた先のベンチに座っていた。その目には涙が浮かんでいた。

「大丈夫!?ごめん、そんなに嫌だったとは思わなくて」
「……いえ、大丈夫です、私が悪いんです」
「でも……」
「気にしないでください、ちょっと休んだらまた行くのでちょっと一人にさせてください」

 俺は気の利いたことも言えず、それ以上留まることも出来ずに和人達の元へと戻った。二人に事情を説明してしばらく待っていると、少し目を腫らした優菜ちゃんが戻ってきた?

「大丈夫、?優菜ちゃん」
「ごめんね、ちょっと具合よくならないから今日は帰るね」
「俺が送ってくるよ、二人ともごめんね」

 そう言って和人達と別れて彼女の自宅まで送り届ける。

「今日はすいませんでした。もう大丈夫なので」
「ほんとに?何か買ってこようか?」
「いえ、ほんとに後は横になりたいので、帰ってもらってもいいですか?」
「……うん」

 俺は訳も分からずに、そのまま帰宅した。
 次の日優菜ちゃんからメールが来た。

[私達もう別れましょう]

 俺はメールを二度見した。なんで!?昨日の対応がまずかったか?どうすればよかったんだ?

[俺の何が悪かったんだ?言ってくれ、直すから]

 返事は来ない。

[とにかく返事をくれ、くれないなら部屋に行くぞ]

 それでも返事は来ない。

 俺は部屋を飛び出して優菜ちゃんのいるアパートへ向かった。
 扉の前でインターホンを鳴らし、それでも出てこないのでドンドンと扉を叩く。

「優菜ちゃん!!開けてくれ、謝るから、ごめん、何か俺が悪いことしたんだろ?でも言ってくれないと分からないよ」

 しばらくしても何の反応もない。俺はしばらく立ち尽くし、出てくるまで待つ!と言い扉の前に座った。

 しばらくすると遠くからウゥーという音が聞こえる。パトカーかな、物騒だなあと思っていたら段々と音が近づいてくる。そして警官たちが階段を上がって俺のそばまで走ってくる。

「ちょっといいかな?今不審者の通報があって。話聞かせてもらっていいかな?」
「いえ、僕はいま彼女を待っているだけなので……」
「通報したのはこの部屋の子なんだよね、いいからちょっと下まで来てくれないかな」
「なんで!?優菜ちゃん!なんで警察に通報なんてしたの!!」

 俺は扉をガンガンと叩く。

「おい、やめろ、ストーカー規制法で逮捕するぞ」

 警官が俺に向かって羽交い絞めにしようとしてくる。俺はそれを振り届き、2階から飛び降りて逃げ出した。

「どうして……」

 必死に逃げる俺は何が何やらさっぱり分からなかった。
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