パチンカスだった男、ダンジョンの出現によりダンジョン依存症になる。

蜂谷

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第二十八話 解散

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 部位欠損回復ポーションを紹介された次の日、俺は空いている時間を見計らってUR亀竜の甲羅を買取受付に渡した。

「……もう驚きませんよ。これも初ドロップなので査定が完了するまでお待ちください。」
「はーい」

 俺は軽く返事をして舞と合流した。昼過ぎだったので1層の休憩所で軽食を食べてから10層へと向かう手はずだ。

「という感じで……おい舞、聞いてるのか?」
「……ええ!聞いてるわよ、10層のキングを討伐したら終わりなんでしょ」
「まあそうなんだけど、しっかりしてくれよ、安心して送り出せないじゃねーか」

 なんとも上の空の舞に不安を覚えつつも10層へと向かう。
 キングはあまり見つからないので、二人で周囲を警戒しながら探索する。

「おい、もうちょっと集中しろよ」
「集中してるわよ、そっちこそさっさと見つけてよね」
「早々キングに出くわしてたらここ誰も寄り付かないだろ」

 ソロならばSR装備で全身を固めていないと多分キングの相手は厳しいだろ。
 二人なら割と余裕だったのでパーティならもっと難易度が下がるだろう。
 舞には20層の到達に驚かれたが、むしろなんでソロでやってる俺が到達出来る階層にパーティーを組んでいるやつらがまだなんだ?ほぼ毎日潜っていれば嫌でも強くなってドロップもするだろうに。

 キングを探してから5時間後、もうやめようかと探索を諦めていたところにキングレッドリザードマンを発見した。
 俺はSR水の装備セットに切り替え、万が一に備えて後ろで待機する。

「ほら、お望みの相手が出てきたぞ」
「そうね……それじゃあ行ってくるからしっかり見張ってなさいよ」

 舞はじりじりと敵に近づき、魔法の射程範囲と思える距離に入ると魔法を発動させた。

「ウォーターボール」

 水の魔法がキングへと直撃する。前回見たときと同様に攻撃を受けて相手は倒れ、体の動きが鈍くなっている。このまま遠距離で仕留めるだろうと俺は考えていたが、舞は相手との距離をつめ、ナイフ片手に向かっていた。
 危ないだろ!と思っていると、キングレッドリザードマンの尻尾が高速で振るわれる。予期していなかったのかその直撃をくらい飛ばされてしまう舞。
 助けにいかないと、と俺が行こうとすると舞がこちらに手を向けて制する。

「これくらい大丈夫よ、アンタはそこで見てなさい」

 よろよろと立ち上がるともう一度ウォーターボールを発射する。それを受けたキングがまた倒れ、動かなくなった。まだドロップがされないのを見るに倒せていない。そこに追撃のウォーターボールをぶつける。しかし何度撃ってもドロップアイテムに変わらない。

 しかし動く気配もないので効いているのは間違いない。恐らく魔法耐性が高いのだろう。水魔法が弱点のはずなのに倒せないのは相当だろう。
 それを舞も察知して、ウォーターボールを打ちながらキングへと近づいていく。そして手にしたナイフで心臓を一突きして相手を倒した。
 ドロップしたアイテムはSRキングレッドリザードマンの肉だった。
 膝を折ってそこ場に倒れこむ舞に近づいてポーションを渡す。

「なんとか倒せたって感じだな。ウォーターボールだけで封殺出来ると思ったけど違ったな、でもナイフで速攻攻撃いにいくなんてなんであんな危険なことしたんだ?」
「それは、アンタに私一人でも問題ないってことを見せたくて、これなら私一人でも近接も魔法も使えて、強いんだぞって」

 俺はその舞の言葉に戸惑いを覚えた。
 なに殊勝なこと言ってるんだ。こいつが俺に気遣うことなんてないはずなのに。

「これでアンタとの約束も終わり、半年もよく付き合ってくれたわね、ありがとう」

 終わり、そういわれて俺はドキンとした。
 初めは最悪だった。無理矢理結ばれた契約に、辟易することもあったし、敵を押し付けられたこともある。でもこいつとは俺は半年も一緒に過ごした。その全てが嫌なことばかりだったわけではない、帰りに飲みに行ったり、カジノで大負けを繰り返したり、ショッピングに連れて行かされることもあった。

 ああ、俺は寂しいんだ。
 また一人になることが。裏切られた心が癒えてきたのはこいつの存在が大きかったんだ。優菜ちゃんと別れた俺を慰めて、次こそいい出会いがあるわよ奢ってくれた日は涙も流した。
 何より、二人での冒険は楽しかった。気づいたら俺は喋っていた。

「なあ、お前がよければこのまま一緒に冒険続けないか?」
「え……?ほんと?……まあアンタがいうならしょうがないわね、続けてあげてもいいわよ」
「そうか、ありがとう。これからはドロップ品も折半だからな」
「そこは6:4くらいにしなさいよ、アンタから提案したんだから」

 軽口をたたきながら俺たちの臨時パーティは解散した。

 そして正式にパーティを組むこととなった。
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