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3.前途多難な石の日々

撮影①

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 約二週間のテスト期間が明け、今日から朝と放課後の部活動が解禁になった。

 夏梨ちゃんと私は、写真部に所属している。
 高校でも陸上を続けるつもりで見学に行ったけれど、男女合同の練習や合宿があることを知って入部を断念した。それなら一緒にと、夏梨ちゃんが写真部に誘ってくれた。
 もちろん写真部にも男の子はいる。でも、夏梨ちゃんが一緒なら心強い。何より見学の時に見た夕暮れの写真がとても素敵だったから、私は思い切って入部を決めた。

「北野さんと江口さん、今日は部長と二年生に同行して運動部の写真撮影お願いできる?」

 そう言って、副部長さんが夏梨ちゃんと私にプリントを手渡す。
 顧問の先生が写真部と新聞広報部を兼任していることから、写真部は春には各クラブの新入部員の集合写真や活動紹介の撮影、秋には体育祭や文化祭の撮影を担当している。

 今日の撮影は、陸上部、サッカー部、ラグビー部、水泳部の順に4つ。暗くなると撮影ができなくなるから、段取りが重要になる。
 まず、副部長さんから渡された予定表の時刻を手分けして各クラブに伝えて、その後に撮影場所のチェック。二年生の先輩に教えてもらいながら、夏梨ちゃんはサッカー部とラグビー部、私は陸上部と水泳部のマネージャーさんと打ち合わせを済ませた。
 写真撮影となれば、今度は部員の立ち位置の確認や誘導。男の子や先輩の部員さんに移動をお願いするのは緊張したけれど、なんとか仕事をこなせてちょっと嬉しくなった。

 撮影は順調に進み、最後は水泳部。
 水泳部は毎年全国大会に出場しているらしく、予定表に書かれている部員数も一番多い。最近改装されたという屋外プールはとても綺麗で、学校の期待の大きさが伝わってくる。この他に、観覧席つきの豪華な室内プールもあるというから驚きだ。

「すみません、入って少しだけ待ってもらえますか? 今タイム計ってて」

 マネージャーさんに促されてプールサイドに出ると、かすかに塩素の匂いが鼻先をくすぐる。
 短いホイッスルの音とかけ声が響き、それに重なる水音が心地よい。立ち上がる水しぶきが、太陽の日差しをうけてきらきらと輝いて見えた。
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