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4.ハードモードなハイキング
前途多難①
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遠足の日は、梅雨入り前の晴天だった。
朝の天気予報でも、ピカピカの晴れマーク。昨日の花さんの手紙に書いてあったとおりの遠足日和だ。
玄関の姿見の前で、おろしたての靴とリュックを身につけて、気持ちを奮い立たせる。けれど、鏡に映る笑顔は不安と緊張でぎこちなく見えた。
遠足の行動グループ3班のメンバーは、出席番号11番の由真ちゃん、12番の私、13番の黒崎くん、14番の近藤くん、15番の須川くんの五人。
席替え前の出席番号順の席が列の一番後ろだったから、自分の次が黒崎くんだということに、私はまったく気づいていなかった。
入学式で隣に座った人が、すごく大きくて怖かったことだけは覚えている。今思えば、あれは黒崎くんだったんだろう。
黒崎くんと同じ班……。
考えると、ずしりと気が重くなる。でも、一緒の班になったことをついてないと思ってるのはきっと彼の方だろう。
プールサイドで見た彼の笑顔が浮かんで、またチクリと胸が痛んだ。
学校に着くと、グラウンドにはすでにたくさんの生徒が集まっていた。10km歩くのは嫌でも、やはり遠足は楽しみらしく、みんな嬉しそうに騒いでいる。
私はクラスの集合場所に由真ちゃんを探した。
クラスの男の子に混じって、香奈ちゃんや悠里ちゃん、夏梨ちゃんがいるのが見える。だけど、そこに由真ちゃんの姿はなかった。
まだ来ていないのかな。
キョロキョロしていると、私に気づいた夏梨ちゃんが駆け寄ってきてくれた。
「おはよっ。あ、リュック似合ってる! やっぱり詩ちゃんは白にしてよかったね」
「夏梨ちゃん、おはよう。ありがとうっ。ピンクもすごく可愛い」
「でしょ! 私はピンクにして正解!」
くるん、と後ろを向いて背中のピンク色のリュックを見せてくれる。夏梨ちゃんのふんわりした雰囲気に似合っていて、とっても可愛い。
これは、遠足前に買った三人おそろいのリュックだ。由真ちゃんが水色、夏梨ちゃんがピンク色。汚れが目立っちゃうかな、と迷ったけれど、私は白色を選んだ。
「あーあ、私もふたりと同じ班がよかったなぁ」
夏梨ちゃんがちょっと唇をとがらせる。そうは言っても、夏梨ちゃんの班は男の子二人、女の子三人のグループで、もうすっかり打ち解けている。
「私、今日がんばっちゃうから。織田くんと進展があったら、報告するねっ」
夏梨ちゃんが、私に耳打ちしていたずらっぽく笑う。同じ班の織田くんのことが気になっているらしい。
ニマニマと口元をゆるませながら、私は張子の虎のように何度も頷いた。
自分にはかなり縁遠い恋の話でも、やっぱりドキドキしちゃうものだ。興味だってある。
ふたりできゃあきゃあ言い合っていると、校舎から出てきた先生がマイクで集合の号令をかけた。
グラウンドに散らばっていた生徒がぞろぞろと集まり出す。
あれ……?
その中に由真ちゃんはいなかった。
どうしたんだろう。何かあったのかな。心配と不安で心がざわめく。
「由真、どうしたのかな。まだ来てないよね」
夏梨ちゃんも気になったらしく、首をかしげている。
何か連絡が来ているかもしれない。私はリュックからスマホを取り出して、急いでメッセージ画面を開いた。
「え……」
思わず声がもれる。固まる私の隣から画面をのぞき込んだ夏梨ちゃんも同じように呟いた。
どうしよう……。
今日これからのことを考えて、一瞬くらりと目眩がした。
朝の天気予報でも、ピカピカの晴れマーク。昨日の花さんの手紙に書いてあったとおりの遠足日和だ。
玄関の姿見の前で、おろしたての靴とリュックを身につけて、気持ちを奮い立たせる。けれど、鏡に映る笑顔は不安と緊張でぎこちなく見えた。
遠足の行動グループ3班のメンバーは、出席番号11番の由真ちゃん、12番の私、13番の黒崎くん、14番の近藤くん、15番の須川くんの五人。
席替え前の出席番号順の席が列の一番後ろだったから、自分の次が黒崎くんだということに、私はまったく気づいていなかった。
入学式で隣に座った人が、すごく大きくて怖かったことだけは覚えている。今思えば、あれは黒崎くんだったんだろう。
黒崎くんと同じ班……。
考えると、ずしりと気が重くなる。でも、一緒の班になったことをついてないと思ってるのはきっと彼の方だろう。
プールサイドで見た彼の笑顔が浮かんで、またチクリと胸が痛んだ。
学校に着くと、グラウンドにはすでにたくさんの生徒が集まっていた。10km歩くのは嫌でも、やはり遠足は楽しみらしく、みんな嬉しそうに騒いでいる。
私はクラスの集合場所に由真ちゃんを探した。
クラスの男の子に混じって、香奈ちゃんや悠里ちゃん、夏梨ちゃんがいるのが見える。だけど、そこに由真ちゃんの姿はなかった。
まだ来ていないのかな。
キョロキョロしていると、私に気づいた夏梨ちゃんが駆け寄ってきてくれた。
「おはよっ。あ、リュック似合ってる! やっぱり詩ちゃんは白にしてよかったね」
「夏梨ちゃん、おはよう。ありがとうっ。ピンクもすごく可愛い」
「でしょ! 私はピンクにして正解!」
くるん、と後ろを向いて背中のピンク色のリュックを見せてくれる。夏梨ちゃんのふんわりした雰囲気に似合っていて、とっても可愛い。
これは、遠足前に買った三人おそろいのリュックだ。由真ちゃんが水色、夏梨ちゃんがピンク色。汚れが目立っちゃうかな、と迷ったけれど、私は白色を選んだ。
「あーあ、私もふたりと同じ班がよかったなぁ」
夏梨ちゃんがちょっと唇をとがらせる。そうは言っても、夏梨ちゃんの班は男の子二人、女の子三人のグループで、もうすっかり打ち解けている。
「私、今日がんばっちゃうから。織田くんと進展があったら、報告するねっ」
夏梨ちゃんが、私に耳打ちしていたずらっぽく笑う。同じ班の織田くんのことが気になっているらしい。
ニマニマと口元をゆるませながら、私は張子の虎のように何度も頷いた。
自分にはかなり縁遠い恋の話でも、やっぱりドキドキしちゃうものだ。興味だってある。
ふたりできゃあきゃあ言い合っていると、校舎から出てきた先生がマイクで集合の号令をかけた。
グラウンドに散らばっていた生徒がぞろぞろと集まり出す。
あれ……?
その中に由真ちゃんはいなかった。
どうしたんだろう。何かあったのかな。心配と不安で心がざわめく。
「由真、どうしたのかな。まだ来てないよね」
夏梨ちゃんも気になったらしく、首をかしげている。
何か連絡が来ているかもしれない。私はリュックからスマホを取り出して、急いでメッセージ画面を開いた。
「え……」
思わず声がもれる。固まる私の隣から画面をのぞき込んだ夏梨ちゃんも同じように呟いた。
どうしよう……。
今日これからのことを考えて、一瞬くらりと目眩がした。
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