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天界革命

アマ・デトワール 星屑たち

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今更知った事だけど、このバーはちょっとした婚活?的なバーだった。
一夜限りの出会い系ではなくて、結構真剣にパートナー探しをしてる人の仲介をしたりしていた。
ちゃんと素性が分かるものを提示しないといけないシステムで、やみくもに公開はしていなかった。

オーナーが俺にその管理をするように言ってきたのは、働き始めてから1週間後だった。

「え?
 パートナーのマッチングはできないですよ?」

天界でだって、その役はキューピッドって決まってるんだし、そんな要素とか全く分からないよ。
大体、自分の感情だってうまく表現できなけりゃ、誰かの好意になんて鈍いくらいなのに!

「パートナーが欲しいって気持ちが真剣な人しか仲介しないようにしてるから大丈夫だよ。
 それに、ノエだって仲介して欲しかったら言っていいんだからね」

オーナー兼マスターがいかにも良い事言ってます的などや顔をした。

「俺、たった一人だけ好きになった人がいて、その人が生涯でただ一人の人なんで、仲介は大丈夫ですよ」

口角を上げるだけの表情で答えた。

「ノエはもう少し甘えることを覚えてもいいんじゃないかな?
 その人は、今いないんでしょ?
 なら、生涯1人だけなんて言わずに、若いんだから人生を謳歌しなさい。
 親が分からないってシマダさんに言ってたけど、そう言うのも関係あるのかい?」

神様がお父さん的なら、正解なんだけど。

「はい、分からないんです。
 日本に来る前は北欧に住んでました。
 小さい頃の記憶もあいまいで、良く分からないんです。
 でも、生きてればいいこともありますよ。
 誰かに愛されたいって希望を持てば、俺はそれだけで生きていけますしね」

誰かじゃない、ウリエルに愛されていたい。
それは、きっと叶わない個tだと思うけど、あの瞬間の痛みと快楽を俺はこの先も忘れないから。

「なら余計に、パートナーはいた方がいいよ!
 遠慮なんかしなくていいからね」

「遠慮なんかしてませんよ
 ただ、うまく人と付き合えないから
 苦手なんですよ、人が」

この店アマ・デトワールに集う客たちを幸せにするキューピッドになるには難しいかもしれないけど、幸せな二人を見るのはきっと心が満たされると思うから頑張ってみることにした。

これ、自分に白羽の矢が立たなけれな、ヨカッタネ、だったんだけど。

マスターが一人の王子様を待つ一途な子だと触れ回ってくれたお陰で、俺はやたら庇護欲を誘ったらしく、仲介の申し込みで仕事にならない、いや、その申し込みを捌くのが仕事みたいになっていた。

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