【R18】私も知らないわたし

佐伯 結

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それから、そして、これから。

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「ん・・・」

 目を覚ますと、部屋が暗い。
 宗一の胸と腕に包まれて、心地よい暖かさにまどろむ。

「あ、起きた?」

 寝惚けて、朦朧としたまま宗一を見上げる。

「由紀、あの後すぐ寝ちゃったんだよ。2回もいっちゃって、よっぽど身体が疲れたのかもね」

 由紀の柔らかな髪を撫でながら、宗一が微笑む。

 だんだんと意識がはっきりしてきて、先程のことが思い起こされ、由紀は口をパクパクさせた。

 その時、ベッドの方を向けたままの鏡が目に入り、そこに映っていた自分の姿が脳裏に蘇る。


 脚を鏡に向けて開きながら、オモチャで初めてイかされてしまったこと。

 慣れてなかったはずの騎乗位で、自分から激しく腰を振って止められなかったこと。


「ひ、ひゃああああ・・・」

 由紀は真っ赤になって、布団に潜り込んだ。
 すると宗一が由紀のあごを優しく持ち上げ、いじわるそうに笑いながら続ける。

「あんな積極的な由紀、初めてだったね。気持ち良かった?」
「う、うぅ・・・」
「自分からあんなに欲しがって。由紀は、エッチだね」
「・・・ひく、よね・・・」
「何で?乱れてる由紀、本当に綺麗だったよ。惚れ直した」

(なんか…エッチ終わったのに、まだ言葉攻めされてるような…)

「そ、宗一だって、なんか別の人みたいで・・・ちょっと怖かった・・・」
「ふ、どっちがw」
「あぅ・・・」
「怖がらせてごめんね。でも、元はと言えばあんなもの持ってる由紀がいけないんだよ?」

 由紀の乱れた髪を撫でて整えながら、宗一がまだ攻めてくる。

「ごめんごめん、でも、楽しかったな。 これからも、もっと色々してみような」
「た、楽しかったって・・・もぅ・・・」

 由紀は宗一の胸に頭をぐりぐり擦り付け、宗一はそんな由紀をさらにギュッと抱きしめた。



※※※※※



「はいっ!お土産ー!」
「わぁ、可愛い。ベネチアングラス?」

 新婚旅行帰りの彩美から会おうと言われ、由紀は千香とともにカフェダイニングに来ていた。
 ヨーロッパ周遊をしてきたという彩美は、新婚の幸せさを微塵も隠すことなく、なんだかツヤツヤしていた。

「そう言えばさ、ビンゴの景品・・・由紀、使ってみた?」

 千香が思い出したようにさらっと訊く。
 由紀は真っ赤になって無言で俯いてしまった。

「お?その反応は・・・試したなー?やるじゃん!」
「そっか、由紀にはアレ当たったんだもんね。まさか由紀みたいなタイプに行っちゃうとは・・・って思ったけど、あげて正解だったかな」

(2人とも、絶対面白がってる・・・)

「「で、どうだった?」」

 2人が身を乗り出して迫ってくるため、由紀は答えないわけにはいかなくなった。

「・・・うん、なんか・・・ちょっと関係が変わったかも・・・今までになかった面が出てきたっていうか・・・」

「へえええええ~」

 う、そんな目を輝かせて、見つめないで・・・

「前まではやっぱりお互い遠慮があったんだなってのがわかったし、踏み込んだ話もしやすくなったなって」

「ほぉー、2人の関係も一皮剥けたってやつ?」
「え、それ下ネタ?」
「いやいや、オッサンかw」

 由紀が頑張って答えたことを、千香と彩美が茶化す。

「もう・・・人が真面目に答えてるのにぃ」
「あはは、ごめんごめん。でも、もっと直接的な感想聞きたかったんだけど」
「直接・・・?」
「最高だった~とか、彼が興奮しちゃって・・・とかさ」

 今回はほぼ個室の店だからって、千香も彩美も発言に遠慮がない。

「もう、それは無理ぃ~勘弁してぇ」

 由紀は熱いままの顔を覆い隠すと、2人はそれ以上は突っ込んで来ず、また旅行や新婚生活の話題に戻った。



 あの日以来、宗一との雰囲気が少し変わったというのも本当だ。

 今までも本音で話せているつもりだったが、お互いに「相手はどう思ってるかな?」と考え、聞いて、満点の反応が返ってこなければ、そこで引いてしまうことが多々あった。だがあれ以降、「こういうの好きそうだな」「こんなの喜ぶかと思って」と、未知のものも積極的に挑戦してみることが増えたように思う。セックスについても、それ以外のことでも。
 良いことも悪いことも、本音を話しやすくなったし、もっと深いところで繋がれるようになったと由紀は思っている。

 あの時は突然の宗一の豹変にびっくりもしたけど、そのおかげで彼のいろんな面を知ることもできたし、何より自分自身があんな風になるなんて思いもしなかった。私も知らなかった私を、アレが引き出してくれたのだと思うと、不思議と暖かい気持ちになるのだった。

「・・・ありがと。」

 由紀は、飲みかけのグラスに口をつけ、2人に聞こえない程度の声で小さく呟いた。


-fin-
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