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第55話

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ジェノス視点
 
 時間は少し前に遡り――俺は、城の侵入者と対峙していた。
 謎の侵入者は手をかざすだけで強固な城門を破壊して、一直線に玉座の部屋に向かっている。

 侵入者の青年はカオスと名乗り、立ち向かった兵士達は魔法の一撃で倒れていく。
 俺は目の前から膨大な魔力を感じ取り、ローノック国を出ず残って正解だった。

 ――この存在はまずローノック国を支配し、必ず他国も支配しようと目論むだろう。
 ローノック国がどうなろうと国王と王子が愚かな末路だが、他国は絶対に巻き込みたくない。

「俺が思考を読めぬだけで、貴様は世界でもトップクラスの力を備えているだろう」

 強さに感心している様子のカオスを前にして、俺は捨て身で突撃する気でいた。

 最善でも相打ち。回復魔法でも治せないほどの怪我を与えるのが次善。
 何をしても俺の命はここまでだと考えながらも、止まる気は一切ない。

「……勝てる気はしないが、足掻かせてもらうぜ」

「勇敢だが、命を捨てたくないと眼が訴えておる……貴様と戦えば、俺もただでは済まんだろう」

 どうやら敵は、俺と戦うことを避けたいようだ。
 負傷することを恐れているようで、カオスは告げる。
 
「従うか戦うか、選ばせてやろう」

 先に従うという選択を持ってきた時点で、戦いを避けたいのがわかる。
 それならまず、目の前にいる青年カオスの正体を知るべきだ。

「……その選択は、お前の正体を知ってからだ」 

「そうか。なら俺に着いて来い……国王と王子にも話すつもりだから、一緒に聞け」

 同じことを何度も話したくないようで、カオスはローノック王や王子達を集めるつもりのようだ。
 兵士達の死体が転がり、戦意を失った者は従うようで城の者を大広間に集めている。

 俺がカオスに立ち向かわなかったのは――ひとつだけ、勝算があるからだ。

 ここまで化物を倒せる可能性があるのは、フィーレ様と護衛のリカルドだけしかいない。
 俺はカオスと名乗った青年が何者なのか、倒すため知る必要があった。
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