婚約者の命令で外れない仮面を着けた私は婚約破棄を受けたから、仮面を外すことにしました

天宮有

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第3話

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 バルターから婚約破棄を受けた翌日、魔法学園で新学期がはじまる。

 始業式が終わって解散になったけど……今日、私を蔑む人はいつも以上に多かった。

 昨日のパーティで話題になっていたこともあり、私は仮面の見た目で避けられ、蔑みの目を向けてくる。
 今までで一番酷いと考えていると、私の前に侯爵令嬢ダリアが現れる。

 バルターは別クラスだけど、ダリアは同じクラスだった。
 教室に残っている人は少なくて、ダリアの取り巻きの生徒達が私の周りに集まってくる。

「シエル様、本日はよく登校する気になりましたね」

「……それは、どうしてですか?」

 ダリアの取り巻きをしている生徒達が私を囲み、この場から離れさせないようにしていた。
 私の味方は誰もいない……理由を尋ねると、ダリアが楽しそうに笑みを浮かべる。

「昨日のシエル様はとても惨めでした。醜く外れない仮面をつけ、婚約者だったバルター様に捨てられる……新たな婚約者の方が遙かに魅力的なのですから、当然の結果ですわね」

 そう言って、周囲の取り巻きも私を小馬鹿にしたように笑い出す。
 敵視している私を精神的に追い詰めたいようで、お母様とお父様の危惧していた通りになっていた。

 衝動的に魔法で倒してしまいそうになるけど、それがダリアの狙いでもある。
 ダリアは攻撃を受け止めて、攻撃を理由にトスラス伯爵家を潰そうと行動するに違いない。

「……そうですね」

 ここは話を聞き、去っていくのを待つしかない。
 そう考えていたけれど……ダリアの発言は更に酷くなっていく。

「昨日バルター様から……シエル様の家族が、娘に醜い仮面を着けるよう命令したと聞いています」

「なんですって?」

 どうやらバルターは、私に仮面を着けさせた相手を自分から私の家族にしたいようだ。
 家族を原因にしてきたことに怒りを露わにしてしまうと、嬉しそうにダリアが話す。

「醜い仮面を娘につけた醜い家族。そんな家の令嬢、婚約破棄を受けるのも当然ですわね」

 その発言を聞いて、私は魔力を手に込めてしまう。
 魔法を使おうとしたけど……咄嗟に魔法を使わなかったのは、ダリアの隣で声が聞こえたからだ。 

「――俺からすれば、ダリアが醜い」

「えっ……ロラン!? どうしてここに!?」

 ダリアに声をかけたのは、伯爵令息のロランだった。
 ロランは短い赤髪、穏やかそうな大きい金色の瞳をした美少年で……周囲の生徒達は、ロランに恐怖している。

 一学年上だけど、ロランは学園で最も有名な生徒だった。
 世界最高峰の魔法使いと呼ばれるほどの実力があり、王家から頼られているらしい。

 伯爵令息だけど……この国で一番怒らせてはいけないと言われている人で、そのロランが不機嫌だから周囲が畏縮していた。

 ロランは私を恐れていなかった珍しい人で、ダリアを眺めて話す。

「ダリアとは話をする気はないし、目障りでもある――不愉快だ」

「ひぃっ!? しっ、失礼いたします!」

 ダリアは恐怖で叫び、取り巻き達と一緒に急いで教室の外に逃げ去っていく。

 ロランは普段は温厚な性格だと聞いているけど、敵には容赦しないと聞いていた。
 どうして一学年下の教室に来たのか気になりながら、私は頭を下げてお礼を伝える。

「ロラン様、ありがとうございます」

「気にしなくていいし、俺のことはロランでいい」

 ロランはさっきまでの表情から一変して、微笑みながら私に優しく話してくれる。
 その反応に嬉しくなりながら、私はロランに話す。

「いえ、ロラン様と呼ばせてください」

「そうか。俺は呼び捨てでいいかな?」

「はい……あの、教室にはもう私しかいませんけど、大丈夫ですか?」
 
 ロランに不快だと思われることを避けてか、生徒達は急いで教室から出ていた。
 何か用事があったのなら私と話していて大丈夫なのか気になると、ロランは笑顔を浮かべる。

「むしろこの方が好都合だ……君が着けている仮面の外し方を、俺は知っている」

「……えっ?」

 どうやらロランは、私に用があったらしい。
 ロランとの出会いによって――私の人生は、大きく変わろうとしていた。
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