魔法が使えなかった令嬢は、婚約破棄によって魔法が使えるようになりました

天宮有

文字の大きさ
2 / 18

第2話

しおりを挟む
 私は婚約破棄を言い渡されて――その後の元婚約者ラドンの行動による怒りで、私は魔法が使えるようになっていた。

 私の魔法を受けて、ラドンの取り巻きは全員倒れていた。

 咄嗟の行動だったけど、命を奪っていなかったことに安堵する。

 意思で操作することはまだできそうにないけれど、威力を抑えることはできたようだ。

 私の魔法を眺めて、ラドンが叫ぶ。

「馬鹿な!? 婚約を破棄したばかりだぞ、どうして今になってルーナは魔法が使える!?」

「今まで使えなかっただけで、これから魔法が使えるようになると先生は話していました」

「なぁぁっっ!? まっ、まさか、こんなことになるとは……」

 私の発言を聞いて、ラドンは驚きながら憤る。

 現状に苦しんでいる様子だけど、私は今日の出来事が許せない。

「ラドン様達は先ほど、学園内では魔法による事故が起きやすいと言っていましたよね」

「確かに言ったが……まさか貴様は! 俺達を消すつもりなのか!?」

「消すとは言っていません。私を魔法で攻撃しようとしたのなら、同じことをしてもいいと考えただけです」

「まっ、待て! そうなれば俺達は貴様にやられたと報告してやる! 立場は俺達の方が上だ!!」

 そうなれば、結局私は魔法学園を退学になりそうだ。

 ラドンが報告されるのを阻止したいけど、方法が思いつかない。

 侯爵家の令息を消すわけにはいかず、どうするか考えていた時だった。

「――俺が見ていたから、そんなことはさせない」

 そう言って――同じ学年の生徒、侯爵令息のニコラスが私の隣に立っていた。

 ニコラスは短い銀色の髪をした穏やかそうな美少年で、優秀な魔法使いだ。

 どうやらラドンとニコラスの仲は悪いようで、ラドンが話す。

「ルーナは婚約破棄を言い渡されたショックで錯乱し、俺を攻撃しようとしていた……この場に倒れている生徒達が証拠だ!」

 発言を聞いて、呆れた様子でニコラスが話す。

「ラドンよ、貴様の考えはわかっていた……貴様の行動は魔法道具で記録させてもらった。発言も録音しているから、ルーナ様が処罰されることはない」

「なっっ……ニコラスは今まで、俺達を眺めていたというのか!?」

「何か企んでいるのは察していたからな。俺が対処するつもりでいたが、ルーナ様が魔法を使えるとは思わなかった」

 どうやら言い逃れできない状況まで待って、ラドン達が攻撃をした瞬間にニコラスは対処するつもりだったようだ。

 私が魔法の方が速かったけど、ラドンが脅してくるとニコラスは姿を見せている。

 人払いをしたと言っていたけど、ラドン達を怪しんでいたニコラスは、気づかれないよう行動していたようだ。

 ニコラスは、ラドンを眺めて話す。

「今日の出来事は報告するとしよう。退学にはならないと思うが、処罰を受けるのは間違いないだろう」

「なっっ……!?」

 ニコラスの発言を聞いて、驚愕したランドは何も言えなくなっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中

かしおり
恋愛
「君は退屈だ」と婚約を破棄された令嬢クラリス。社交界にも、実家にも居場所を失った彼女がたどり着いたのは、静かな田舎町アシュベリーの図書館でした。 本の声が聞こえるような不思議な感覚と、真面目で控えめな彼女の魅力は、少しずつ周囲の人々の心を癒していきます。 そんな中、図書館に通う謎めいた青年・リュカとの出会いが、クラリスの世界を大きく変えていく―― 身分も立場も異なるふたりの静かで知的な恋は、やがて王都をも巻き込む運命へ。 癒しと知性が紡ぐ、身分差ロマンス。図書館の窓辺から始まる、幸せな未来の物語。

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

「無能な妻」と蔑まれた令嬢は、離婚後に隣国の王子に溺愛されました。

腐ったバナナ
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、魔力を持たないという理由で、夫である侯爵エドガーから無能な妻と蔑まれる日々を送っていた。 魔力至上主義の貴族社会で価値を見いだされないことに絶望したアリアンナは、ついに離婚を決断。 多額の慰謝料と引き換えに、無能な妻という足枷を捨て、自由な平民として辺境へと旅立つ。

追放された悪役令嬢は、氷の辺境伯に何故か過保護に娶られました ~今更ですが、この温もりは手放せません!?~

放浪人
恋愛
公爵令嬢セラフィナは、異母妹イゾルデの策略により、婚約者である王子アラリックから「悪役令嬢」の汚名を着せられ、婚約破棄と同時に辺境への追放を宣告される。絶望の中、彼女を待ち受けていたのは、冷酷無比と噂される「氷の辺境伯」カシアンとの政略結婚だった。死をも覚悟するセラフィナだったが、カシアンは噂とは裏腹に、不器用ながらも彼女を大切に扱い始める。戸惑いながらも、カシアンの隠された優しさに触れ、凍てついた心が少しずつ溶かされていくセラフィナ。しかし、そんな彼女たちの穏やかな日々を、過去の陰謀が再び脅かそうとする。果たしてセラフィナは、降りかかる不遇を乗り越え、カシアンと共に真実の愛と幸福を掴むことができるのか? そして、彼女を陥れた者たちに訪れる運命とは――?

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

役立たずのお飾り令嬢だと婚約破棄されましたが、田舎で幼馴染領主様を支えて幸せに暮らします

水都 ミナト
恋愛
 伯爵令嬢であるクリスティーナは、婚約者であるフィリップに「役立たずなお飾り令嬢」と蔑まれ、婚約破棄されてしまう。  事業が波に乗り調子付いていたフィリップにうんざりしていたクリスティーヌは快く婚約解消を受け入れ、幼い頃に頻繁に遊びに行っていた田舎のリアス領を訪れることにする。  かつては緑溢れ、自然豊かなリアスの地は、土地が乾いてすっかり寂れた様子だった。  そこで再会したのは幼馴染のアルベルト。彼はリアスの領主となり、リアスのために奔走していた。  クリスティーナは、彼の力になるべくリアスの地に残ることにするのだが… ★全7話★ ※なろう様、カクヨム様でも公開中です。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

処理中です...