魔の森の奥深く

咲木乃律

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第三章 好きなのかもしれない

激震

「室長。終わりました」

 ペアーノ室長に頼まれていた書類を棚に整理し終わり報告に行くと、席についていた室長が顔を上げた。

「ご苦労様。今日はもうあがっていいよ」

「はい、お疲れさまでした」

 ロザリアは頭を下げると周りの同僚にも言葉をかけて魔事室を出た。

 一角獣狩りへの出発が、一週間後に迫っていた。
 結局ロザリアは、セストの補佐役についたものの、仕事らしい仕事と言えば乙女選びの書類不備のチェックくらいで、時折狩りに伴う儀式や式典へ参加するだけで、あとはほとんど今まで通り魔事室で仕事を続けていた。

 そして相変わらず火石関連の事故報告は多く、先日ついに死者が出た。暴発した火石の炎が着衣に燃え移り、亡くなったのだ。まだ年若い被害者の年齢に、ロザリアはやるせない思いでいっぱいになった。
 死者まで出たとあっては、火石暴発事故が多発している現状は王都の市井にも広がる。この間事故報告書を取りに王都にある屯所へ行った折には、火石でやけどを負った、王都で商店を開いているという男がちょうど屯所に来ていて、一体魔収室のチェックはどうなっているんだと怒鳴り込んでいる現場に居合わせた。

「街のみんなが言ってるぞ。オリンド国王は何をしているんだってね。―――おっと、こんなとこで国王の悪口を言っちゃあ捕まっちまうな。でもな、ほんとになんとかしておくれよ。みんなが困ってるんだぜ」

 屯所の騎士は商店主を追い払っていたが、商店主の声は市井の声でもある。魔収室の、ひいてはその頂点に立つオリンド国王への不審の声が、波紋のように王都に住む人々の間に広まっている。

 ロザリアは中庭の花壇を通り抜けながら、高く聳える王城の尖塔を見上げた。ロザリアが思い煩うまでもなく、市井に広まりつつある国王への不審の声は、おそらくすでにオリンド国王の耳にも入っているだろう。どのような手が打たれるのかロザリアには想像もできないが、一角獣狩りが終わると、その成功を祝すと同時に、オリンド国王の長男が王位継承者として指名される式典も行われることになっている。国王への求心力低下は、避けたい時期だ。
 議会の一員である父は、そんな政治的な話は家庭ではしないが、火石の取り扱いには特に注意するよう家内の者に言い渡している。火石の件は、国王派の父にとっても重大な関心事であるはずだ。

 こんな状況で一角獣狩りなんて大丈夫なのだろうか……。

 ロザリアの懸念はどうしてもそこへ帰結していく。一角獣狩りの拠点となる魔の森の砦には、件の魔収室がある。乙女たちは連日一角獣の扱い方について、過去の乙女からレクチャーを受け、その扱いについて日々訓練を受けている。同じ乙女であるベネデッタもそれは例外ではなく、セストの執務室前で待ち伏せされて以来、顔を合わせていない。こちらに嫌がらせにくる間もないほど忙しいようだ。
 それはそれでロザリアとしては助かるのだが、あと一週間もすれば魔の森の砦で一緒に過ごすことになるかと思うと憂鬱だ。まぁそこにはセストもいるのだけれど―――。

 はっとしてロザリアは無意識に唇をなぞった指先を握りこんだ。
 セストとも、ほとんど顔をあわせていない。相変わらずセストは激務のようで、訓練やら何やらと忙しそうだ。補佐役のロザリアの存在など忘れてしまったかのように。

「……はぁ…」

 自然とロザリアの口からため息が漏れた。








***








 一角獣狩りへの出発が五日後に迫った日の夕、トリエスタ王国の王宮に激震が走った。
 王都の郊外へ早駆けに出掛けていたオリンド国王の長男が魔鳥の群れに襲われ、失明したという。
 王宮内の医務室に運び込まれた時にはすでに手の施しようがなく、次期国王として後継者指名を受けるはずだったオリンド国王の長男は視力を失った。

 その報告をセストが受けたのは、王宮内の執務室だった。狩りの訓練のため同じく王都の郊外へ行っていて戻ったばかりだった。外套を脱ぐ間もなく小姓が駆け込んできた。
 はじめに報告をもたらした小姓からは、オリンドの長男が魔鳥に襲われた、との情報のみで詳しい状況はわからなかった。第二陣となる報告では、失明は免れないとの報告が伝わってきた。
 そこから更に小一時間ほどすると、手当てにあたったテオがセストの執務室にやってきて、そこで詳しい状況を聞いた。

 テオによると、オリンドの長男は早駆けに出掛け、途中魔鳥の群れに襲われ、鋭い嘴で目をつかれたらしい。腕の立つ魔法士数名を共に連れていたそうだが、あっという間の出来事で、防ぎきれないほど多くの魔鳥だったという。
 王宮内に運び込まれた時には処置の仕様もなく、解毒と出血を止めることくらいしかできなかった。

 オリンドの長男は今年王位継承権を継げる年齢に達し、近ごろ次期国王の後継者として指名される予定だった。現在はウバルド王弟が王位継承権第一位を保有しているが、オリンドの息子達が規定年齢に達した時点で順位が落ちていくことになっている。
 
「いかにもきな臭いな」

 テオは治療で疲れたのか、眉間を揉みながら苦々しげに吐き捨てた。
 視力を失ったオリンドの長男は、おそらく王位継承権の権利を失うだろう。魔鳥が人を襲うことはままあるが、それでもあまりにうまいタイミングでの事故だ。

「そんなに王位っていうのは価値があるもんかね」

 テオはちらりとセストを意味ありげに見上げたが、すぐに視線をそらせた。

「魔石の件といい、黒妖犬の件といい、今回の件といい、ウバルドの目的ははっきりしているじゃないか。なんでオリンド国王は奴を野放しにしているんだ?」

 全く理解できないとテオを吐き捨てた。

 テオの言うとおりだった。
 これらの事故はすべてウバルド王弟殿下によるものだ。黒妖犬の件を調べた際、セストは魔法防衛局付きの魔法士で、魔獣の扱いに長けた者の関与をまっ先に疑った。その者の周辺を調べると、彼の母がウバルドの母と姉妹にあたり、昔から懇意にしていることがわかった。ちなみにオリンドとウバルドは異母兄弟だ。どちらも先王の側妃の子だ。
 その魔法士の関与は疑いないとセストは考えたが、乙女達を襲った黒妖犬の群れは既に散り散りになっており、その者が関与した痕跡を見つけることは不可能だった。
 ウバルドの目的は明確だった。
 国の威信をかけて行われる一角獣狩り。そのスタートを切る神殿での禊で、狩りの重要なファクターである乙女達が黒妖犬に襲われ命を落とすようなことがあれば、現国王オリンドの威信は地に落ちる。
 魔石の件も、国が管理している魔石に不具合が頻発すればその管理体制を批難されかねない。
 実際、市井では乙女達の襲撃された件や、度々起こる魔石の事故に対する不安が広まっている。現政権を不安視する声も皆無ではない。
 そうやってオリンドへの否定的な感情を植え付け、オリンド国王の弱体化を狙っているのだろう。

「しかしどちらも証拠がないからな。オリンドには報告済みだが、証拠がない状態で王族を追及することはできなかったんだろう」

「けっ。その弱腰が今回の件を招いたんだ。まさかまた証拠不十分で追及できないなんてことはないんだろうな」

「おそらく無理だろうな」

 魔鳥の移動速度は速い。今回もオリンドの子息を襲った魔鳥をとらえ、その痕跡を見つけることは不可能だろう。
 オリンドへの不満を噴出させ、次は王位継承権を継ぐはずだったオリンドの子息を狙い、ウバルドが王位を狙っていることは明白だ。
 だが現段階ではどうすることもできない。セストがそう言うと、テオはソファにふんぞり返った。

「そんなものは後からでっち上げればいいんだ。とりあえずウバルドを抑えないと、被害者は増える一方だぜ」

「おまえにしては声を荒らげて珍しいな。こちらのことはどうでもいいんじゃなかったのか?」

 セストがロザリアのため、トリエスタ王国の魔法士になった時、一緒についてきたテオはトリエスタ王国の事情などどうでもいい、我関せずといった態度だった。
 変われば変わるものだなとセストが言うと、テオは、

「歯痒いだけだよ。仕掛けられる前に対処しないと、やられる一方だろう。もちろん、俺はオリンドがどうなろうと知ったことではないけどね。セストが巻き込まれるんじゃないかとこれでも心配してやっているんだ」

「お気遣いどうも。しかしな、テオ。この俺がただの人間どもにやられると思うのか?」

「……失言だった…」

 テオは鼻で笑い、セストと同じ銀髪をむしった。

「もうさ、面倒だ。前にも言ったけど、とっととロザリア掻っ攫って帰ろうぜ。この調子だと、一角獣狩りだって必ず問題が起こるぞ。巻き込まれるのはごめんだ」

「そうは言ってもな……。あいつには優しい家族があり、仕事がある。それら全部を切り離し、あいつを自分の国へ連れ帰ることはできない。ロザリアが悲しむことはしたくない……」

 ほろりと本音が漏れる。それを聞いたテオはぎょっとしたように目を見開いた。

「なんだ、セストよ。おまえロザリアのこと、ディーナのことを抜きにして、本当に好きなんじゃないのか?」

「俺が……?」

 そうなのだろうか。
 あれはディーナだ。ディーナであってディーナではないが、ディーナの魂を持つ者だ。ロザリアと接するたび、そう思ってきた。
 でも、セストの唇にたどたどしく応えるロザリアのキスはディーナとは似ても似つかず、そのくせそれがとてつもなくかわいいと思ったのも確かだ。絡められる舌に必死に応えようと顔を真っ赤にしていたことを思い出すと、また触れたいと願った。心がこちらに向けばいいと欲望を抱いた……。
 ディーナとの違いに気づくたび、苛立ちを感じていたが、あの唇に触れた時から不思議と苛立ちは感じなくなった。恥ずかしそうに顔をそむける姿も、視線をそらす姿もロザリアらしく、何事にも自信なさげなロザリアに相応しい仕草だとも思うようになった。
 ふと心に思い浮かぶのは、ディーナではなくロザリアだった。

「まぁな、いいんじゃないのか。それで。好きなら好きで、ちゃんとあのお嬢さんのこと見てやれよ。誰かと比べられることほど嫌なことはないからな。で、もっとちゃんと好きになってやれ」

「……好きかどうかは、わからない」

 正直な気持ちだった。あれほど手に入れたいと願っていたのに、その唇に触れた時から怯えのようなものが芽生えた。ディーナを忘れてしまうのではないかという怯えだ。
 セストは銀髪をかきあげ、天を仰いだ。その様子をテオは冷静に眺め、「あ、そうだ」とぽんと手を打った。

「言うのを忘れていたが、あの黒妖犬の襲撃の時、おまえロザリアが魔力もないのに黒妖犬に立ち向かって怪我をしたようだって言っていただろう」

「そう言えばそんなふうに言ったな」

 状況を見てセストはそう判断した。ロザリアの怪我を見せた時、テオにそう言った覚えもある。

「あれさ、間違いだぞ。ロザリアは一緒にいた女の魔法士がやられたんで、助けを呼びに行こうとお前たちのいる部屋へ行こうとしていたらしい。でもベネデッタがあいつのこと引っ掴んで黒妖犬の前に突き飛ばしたそうだぞ。乙女の何人かが目撃していたが、ベネデッタに口止めされた乙女がいて、皆んな怖くて口を噤んだみたいだ。俺は薬師という立場上、乙女の治療にあたっているとき、さり気なく聞き出したんだけどな」

「そうなのか?」

 だとしたら馬鹿かお前はとあの時ロザリアに辛辣な言葉を浴びせたセストの方が馬鹿者だ。

「あいつには、悪いことをした。あの時馬鹿とののしった」

「ありゃりゃ。可哀想にロザリアちゃん。きっと傷ついてるぜ。それとお前は知らんだろうが、ベネデッタは事あるごとにロザリアに嫌がらせをしているって噂だぜ」

「なんだそれは?」

 ベネデッタとロザリアは仲が悪いのかと聞けば、テオはやれやれと肩をすくめる。

「なんだよセスト、気がついていないのかよ。ベネデッタはお前のことをそれはそれはお気に召しておられるんだ。だからお前が誘いをかけているロザリアのことが気に入らない。床にワックスをこぼしてこけさせたり、ロザリアは淫乱だって根も葉もない妙な噂を撒き散らしたり、頭から水をぶっかけたり、とまぁ俺が聞いただけでも色々あるな」

 ベネデッタのことは眼中にはなかった。好意を寄せられていることなど気づきもしなかった。

「くだらないいたずらだな。それでロザリアはどうしていたんだ?」

 セストが原因なら、セストに文句の一つでも吐き、何とかしてほしいと助けを求めてもよさそうなものだ。けれどロザリアからは一度も言われたことはなかった。

「それがな、ベネデッタがどれだけ嫌がらせしても、あのお嬢ちゃんは澄ました顔して受け止めていたらしいぞ。見かけによらず、かなりのつわ者だ。でもま、それがかえってベネデッタの気持ちを逆撫でしていたんだろうけど。お前の知らないところで、ロザリアちゃんはお前のせいで苦労していたってことさ。挙句の果てに馬鹿者呼ばわりされたんじゃあ、それはお前のこと、好きにはなれないよなぁ、な? セストよ」

 テオはにやにやしてセストを見上げた。
 悔しいが、テオの言うことは全くその通りだ。

「……謝ってくる」

 セストは転移の渦を出現させた。無性にロザリアの顔を見たくなった。










***









「……お兄様…」

 ベネデッタは目を厚い包帯で巻かれた兄の手を握っていた。周りにはオリンド国王やウバルド、他の兄達もいて、皆一様に沈痛な顔をしていた。
 兄が早駆けに出かけるのはいつものことだった。それなのにこんな無惨な姿になって戻ってくるなんて。まさか魔鳥の群れに襲われて失明するなんて……。
 長兄は優しい兄だった。いつもベネデッタのことを、優しい目で見てくれた。もう二度とそんな兄の目を見られない。ベネデッタのことを見てくれることもない。
 護衛の魔法士は一体何をしていたというのだろう。
 魔法士達は、あっという間の出来事で、防ぎきれなかったと言うけれど。
 教会での黒妖犬の襲撃といい、なんだかおかしい。
 
 ベネデッタはそこでふと、黒妖犬に襲われた時のことを思い出した。

 そういえぱあの子の血を見た途端、黒妖犬が大人しくなった。あの時は考えてもわからないからと頭の隅に追いやったけれど―――。

 こうも立て続けに魔獣による襲撃があると、誰か手引しているのではと疑いたくなる。
 もしかしたらあの子には何かそんな力があって、同じセストを狙っている自分に、痛い目を見せようとしているのではないか。
 いくらセストに近づくなと嫌がらせをして警告しても、あの子は怯まなかった。その復讐が魔獣による襲撃だったとしたら。

 ベネデッタは居ても立っても居られなくなり、兄の手を離すと立ち上がった。
 
 だとしたら決して許すまい。何もかもあの子のせいだ。あの女が悪いんだ。
 


 

 

 

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