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8 消えた原因

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 王都の街を一晩中、王妃ユーフェミアを捜索した近衛騎士達は何の手がかりも見つけられなかった。

 怪しい馬車を片っ端から停めて捜索するも、駆け落ち中の若い令嬢と令息を見つけたくらいでユーフェミアは見つからず。

 とりあえず駆け落ち中の二人を保護した。

 もしや王妃ユーフェミアは拉致した犯人達に貴族街にある廃墟に囚われているのじゃないかと捜索に入ったが、そこは人身売買の組織の隠れ家だっただけで何も見つからず。

 とりあえず全員捕まえた。

 そして全ての国境を封鎖した国軍からは、あまり友好的ではない方の隣国カロストが奇襲攻撃の準備をしている所を見つけたくらいで。

 とりあえずカルストの兵を撃退し勝利を納め、大事には至らずに済んだ。

 と、アレクサンド宰相に報告した近衛騎士達は何の成果も得られなかったと。

 申し訳なさそう頭を下げる。

 その報告を聞かされて、ため息混じりでアレクサンド宰相は謁見の間から近衛騎士達を下がらせた。

 王妃ユーフェミアを見つけられなかったがその報告を聞いてしまったら近衛騎士達を怒るに怒れないし、何か褒美を与えなければと宰相付きの事務官にアレクサンドは指示を出した。

「っユーフェミア様……!」

 ユーフェミアの名を悲痛な面持ちで呼ぶアレクサンド宰相は、大事な人の無事を願う者にしか見えなくて。

 普段からこんなにわかりやすく態度に表してさえいれば、社交界で『王妃ユーフェミアと宰相は犬猿の仲』という噂は起きなかっただろう。

 それにユーフェミアにあそこまで毛嫌いされる事はなかっただろうにと、拗れて素直になれない不憫な友人を国王フェリクスは玉座から見下ろした。

「私の可愛い愛娘ユーフェミアちゃんが王宮からいなくなったとはいったいどういう事だ! 答え次第によってはその首、断頭台にかけてやるぞ! ほら答えろ、クソガキ共!」

 謁見の間の二枚扉を勢いよく開け放ち、荒々しく足音を立てて入ってきたのは、ユーフェミアの父シュバリエ公爵その人で。

 国王フェリクスと宰相アレクサンドの二人を相手に『クソガキ』と開口一番で罵り。

 唯一この大国ガーディンでこの二人を子ども扱いし、叱る事の出来る人物だ。

「昨夜晩餐に現れないユーフェミアを不審に思った王妃付きの侍女達二人が、彼女が部屋にいない事に気付きました。そして王宮内や街の捜索、並びに国境を封鎖しましたがその足取りは現在……全く掴めていません」

 簡潔に現在わかっている状況を説明したアレクサンド宰相を、シュバリエ公爵は胡乱な表情で観察し。

「……それって私の可愛いユーフェミアちゃんにアレクサンドお前、逃げられたんじゃないのか? 嫌味ばかり言って鬱陶しいお前と余程結婚するのが嫌なんだな、うちの愛娘は」

「え? 何の事ですか、それ」

「いや……昨日アレクサンドお前、私のユーフェミアちゃんに伝えたのだろう? 王宮を出て自分と結婚する、と!」

「いいえ? 私と結婚するとはまだ伝えていません、新しい屋敷にユーフェミア様が住まいを移されて、心身共に落ち着かれてから時期をみてお伝えしようかと思いまして」

「はあぁ!? お前何も、私の可愛いユーフェミアちゃんに話していないのか……?」

「いえ多少はユーフェミア様に話をしましたよ? フェリクスにお父上の後ろ楯はもう必要ないので貴女は廃妃になって城を出る、そして隣国ナサリアから王女が輿入れしてくる……と」 
 
「……実は馬鹿だろ、お前」

 
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