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【第一章】第一次セトラ村攻防戦
【第三話】集落での生活
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セトラ村に来て、あっという間に三ヶ月が経った。
この三ヶ月は、畑仕事の日々だった。
初めは慣れなかった畑仕事で身体を痛めることもあったが、今では身体が鍛えられて、筋力もだいぶ付いた。
スマホやテレビ、ゲームなどの娯楽はもちろん無かったが、意外にも苦痛は無い。
そんな事が気にならないくらい日々が忙しく、疲れて考える間もなく眠ってしまうからだ。
加えて、毎日畑仕事が終わってからの一時間、僕はカラバ村長に礼儀作法や学問を教わっていた。
そして分かったのが、ここが地球ではなく、異世界であるという事だ。
学問の一環で世界地図を見せてもらったことがあった。
その地図にはいくつかの大陸や小さな島々が載っていたが、地球のそれとは全く違っていたのだ。
もしかしたらそうかも知れないという思いはあったが、はっきりと分かると流石に戸惑った。
世界そのものが違ったら、帰る方法は無いのかもしれないのだ。
しかしそんな動揺も、日が経つにつれて薄れていった。
やはり畑仕事は忙しく大変なので、それに掻き消されてしまうのだった。
そんな三ヶ月を過ごし、季節は秋になった。
◆◆◆◆◆
「おーい、カイト居るか」
夕刻、自分の小屋で過ごしていると僕を呼ぶ声がした。
「この声は、テジムか」
テジムは、この村に住む同い歳の少年である。
畑仕事の合間に顔を合わせることが多かったので、僕たちはすぐに親しくなったのだ。
明るいが、お調子者だった。
高校生をしていた時には関わらなかったタイプなので、僕は共に過ごして新鮮な気分だった。
時には一緒にカラバ村長の学問を受けることもあり、かなりの頻度で食事も共にする。
「母が山で採れたキノコをくれたんだ。お前におすそ分けだってさ」
テジムは、籠いっぱいのキノコを抱えていた。
「おお、それは悪いな。いつもいつも」
「なに、気にすんな。俺の母はお節介なんだ」
その日の夕食は、二人で野菜とキノコの鍋になった。
キノコは二人でも食べ切れない量だったので、残りは干して保存するか、薬になる物は暇な日にすり潰したりする。
そういった事も、今では当たり前に出来るようになった。
「カイトがこの村に来て、もう三ヶ月か」
「夏が過ぎ、もう秋だな」
「秋になると刈り入れがある。それが終わると冬に向けての支度が始まるぞ」
「何をするんだ?」
「作物を長持ちさせるように加工する。それは女性達の仕事だが、男衆は山に狩りに出る」
狩りはまだした事がなかった。
「カシュカが、今年はカイトも狩りに連れて行くと言っていたな」
「そうなのか?」
「お前は何気にここの村人に気に入られている。近いうちに、自警団から声が掛かるかもしれんな」
テジムは、笑いながら言った。
まだまだ知らないことは多くある。
そう思い、僕は鍋の残りをかき込んだ。
この三ヶ月は、畑仕事の日々だった。
初めは慣れなかった畑仕事で身体を痛めることもあったが、今では身体が鍛えられて、筋力もだいぶ付いた。
スマホやテレビ、ゲームなどの娯楽はもちろん無かったが、意外にも苦痛は無い。
そんな事が気にならないくらい日々が忙しく、疲れて考える間もなく眠ってしまうからだ。
加えて、毎日畑仕事が終わってからの一時間、僕はカラバ村長に礼儀作法や学問を教わっていた。
そして分かったのが、ここが地球ではなく、異世界であるという事だ。
学問の一環で世界地図を見せてもらったことがあった。
その地図にはいくつかの大陸や小さな島々が載っていたが、地球のそれとは全く違っていたのだ。
もしかしたらそうかも知れないという思いはあったが、はっきりと分かると流石に戸惑った。
世界そのものが違ったら、帰る方法は無いのかもしれないのだ。
しかしそんな動揺も、日が経つにつれて薄れていった。
やはり畑仕事は忙しく大変なので、それに掻き消されてしまうのだった。
そんな三ヶ月を過ごし、季節は秋になった。
◆◆◆◆◆
「おーい、カイト居るか」
夕刻、自分の小屋で過ごしていると僕を呼ぶ声がした。
「この声は、テジムか」
テジムは、この村に住む同い歳の少年である。
畑仕事の合間に顔を合わせることが多かったので、僕たちはすぐに親しくなったのだ。
明るいが、お調子者だった。
高校生をしていた時には関わらなかったタイプなので、僕は共に過ごして新鮮な気分だった。
時には一緒にカラバ村長の学問を受けることもあり、かなりの頻度で食事も共にする。
「母が山で採れたキノコをくれたんだ。お前におすそ分けだってさ」
テジムは、籠いっぱいのキノコを抱えていた。
「おお、それは悪いな。いつもいつも」
「なに、気にすんな。俺の母はお節介なんだ」
その日の夕食は、二人で野菜とキノコの鍋になった。
キノコは二人でも食べ切れない量だったので、残りは干して保存するか、薬になる物は暇な日にすり潰したりする。
そういった事も、今では当たり前に出来るようになった。
「カイトがこの村に来て、もう三ヶ月か」
「夏が過ぎ、もう秋だな」
「秋になると刈り入れがある。それが終わると冬に向けての支度が始まるぞ」
「何をするんだ?」
「作物を長持ちさせるように加工する。それは女性達の仕事だが、男衆は山に狩りに出る」
狩りはまだした事がなかった。
「カシュカが、今年はカイトも狩りに連れて行くと言っていたな」
「そうなのか?」
「お前は何気にここの村人に気に入られている。近いうちに、自警団から声が掛かるかもしれんな」
テジムは、笑いながら言った。
まだまだ知らないことは多くある。
そう思い、僕は鍋の残りをかき込んだ。
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