6 / 12
【1章】幼女に復讐は難しい〜ピュアすぎる兄ができました〜
6.五年前の真実
しおりを挟む
それから数日後、ゼリックは早速王宮へ行くことになった。
「わたしもお兄様と一緒にお城に行く!」
「ごめんね、リビー。いい子でお留守番しておいてね」
……わかっちゃいたけど、わたしは一緒に連れて行ってもらえなかった。当然だ。五歳の女の子なんてなにをやらかすかわからないし、お城って用もないのにホイホイ行けるような場所じゃない。わたしが王太子と顔見知りになる道のりはまだまだ遠く険しかった。
とはいえ、まったく先へ進んでないわけではない。ゼリックを通じて王太子の情報を聞き出せるからだ。
それに、ゼリックと離れることでわたしの行動の自由が広がるというメリットもある。
過保護なゼリックは、自分なしではわたしを家の外に出したがらないし、わたしにふさわしくない書物は全部取り上げてしまう。そんなわけでこの五年間、祖国サウジェリアンナ王国の情報をちっとも集められていなかった。だけど、文字もある程度読めるようになった今のわたしならきっとできる。
ゼリックを乗せた馬車が屋敷を出ると同時に、わたしは侍女と連れ立って街の図書館へと出かけた。
図書館に着くと、五年前の新聞記事と辞書を用意してもらい、早速読みはじめる。
「お嬢様、どうして五年前の新聞をお読みになりたいのですか?」
おもり役の侍女は二年前に雇用された十七歳の女の子で、わたしが養女だっていうことを知らない。とはいえ、なにを調べようとしているかパパたちにバレたらまずいだろう。
「えっとね、わたしが生まれた年のことを知っておきたいなぁと思って」
「まあ……! 素晴らしいです」
あらかじめ用意しておいた言い訳を伝えると、侍女はいたく感動してくれた。まあ、普通の五歳の女の子は新聞なんて読まないし『生まれ年のこと』って伝えたら違和感なく受け入れてもらえると思ってはいたけど。
言い訳が立ったところで、わたしは新聞をあさりはじめた。
(国の襲撃なんて重大事件だから、絶対に一面に載っているはず)
正確な日付は覚えていないけれど、ゼリックがわたしに見せてくれたお花なんかを思い出すに、春先の出来事だった気がする。
捜索すること数分、わたしは目的の記事にたどり着いた。
「『サウジェリアンナ王国征服に成功、王家の人間は全員死亡したことを確認……』」
ショッキングな見出しにわたしは思わず目を見開く。
(お父様、お母様……)
やっぱり二人はあの時に亡くなっていたんだ。そして、わたしが予想していたとおり、襲撃者はこの国だった。
(ひどい)
どうしてそんなひどいことをしたんだろう? あの二人は、はじめてわたしに愛情をくれた人たちだったのに。他にも、罪のない人がたくさん亡くなっている。知らず知らずのうちに目頭が熱くなってきた。
「そちらの内容は、お嬢様にはまだ難しいかもしれません」
侍女がそう言って困ったように微笑む。単純に、一所懸命辞書を駆使して読んでいるわたしを気の毒に思ったのだろう。
「ねえ、どうしてサウジェリアンナ王国は征服されてしまったの?」
「え? そうですね……私は『国王が国民にとんでもない負担を強いていた』って習いました」
「負担って?」
「たとえば、税金っていうお金をたくさん課したり、兵役っていう訓練を義務づけたりとか……まあつまり、とっても大変な目にあっていたっていうことです。その癖、あの国は王族だけがいい暮らしをしていて、国民はすごく貧乏でしたからね。襲われて仕方がなかったんだと思います」
(え?)
仕方がなかった? 人がたくさん死んだのに? ――わたしのお父様とお母様が死んでしまったのに?
(――違う)
確かに、わたしが知らなかっただけで、お父様とお母様は悪いことをしていたのかもしれない。そのへんはきっと、調べたら情報がたくさん出てくるはずだ。
だけど、本当に殺す必要があったんだろうか? 話し合いで解決できなかったんだろうか? 他にいい方法があったんじゃないだろうか?
――やっぱり、いいはずがない。仕方がなかったなんて思われたくない。
わたしが復讐を成し遂げないと――。
(って、ちょっと待って)
わたしは急いで新聞記事をもう一度読む。
「『王家の人間は全員死亡』?」
おかしい。だってわたしは――あの国の姫君だったわたしは生きてここにいるんだもの。しかも、わざわざ『死亡を確認した』って書き方をしてある。どうして――?
「ああ、幼いお姫様はお気の毒ですよね。なんにも悪くないし、まだ赤ん坊だったっていうのに」
侍女がそう言って眉を下げる。わたしは「そうね」と返事をした。
(いったい誰が、なんのために情報を書き換えたのかしら?)
赤ん坊まで殺したなんて、自国の人間にすらいい印象を与えない。侍女の反応がいい例だろう。記者には正直に『所在・生死ともに不明』と書かせればよかったはずだ。それなのに、わざわざ亡くなったと発表をさせた。誰が、どんな目的でそんなことをしたんだろう?
(復讐相手ははっきりしたけど、わからないことが増えてしまったわ)
わたしはため息をつきつつ、新聞記事をもう一度読む。だけど、何度目を通したところで、ここにこたえはのっていなさそうだ。
(やっぱり、このままじゃダメだわ)
そう強く思った。
「わたしもお兄様と一緒にお城に行く!」
「ごめんね、リビー。いい子でお留守番しておいてね」
……わかっちゃいたけど、わたしは一緒に連れて行ってもらえなかった。当然だ。五歳の女の子なんてなにをやらかすかわからないし、お城って用もないのにホイホイ行けるような場所じゃない。わたしが王太子と顔見知りになる道のりはまだまだ遠く険しかった。
とはいえ、まったく先へ進んでないわけではない。ゼリックを通じて王太子の情報を聞き出せるからだ。
それに、ゼリックと離れることでわたしの行動の自由が広がるというメリットもある。
過保護なゼリックは、自分なしではわたしを家の外に出したがらないし、わたしにふさわしくない書物は全部取り上げてしまう。そんなわけでこの五年間、祖国サウジェリアンナ王国の情報をちっとも集められていなかった。だけど、文字もある程度読めるようになった今のわたしならきっとできる。
ゼリックを乗せた馬車が屋敷を出ると同時に、わたしは侍女と連れ立って街の図書館へと出かけた。
図書館に着くと、五年前の新聞記事と辞書を用意してもらい、早速読みはじめる。
「お嬢様、どうして五年前の新聞をお読みになりたいのですか?」
おもり役の侍女は二年前に雇用された十七歳の女の子で、わたしが養女だっていうことを知らない。とはいえ、なにを調べようとしているかパパたちにバレたらまずいだろう。
「えっとね、わたしが生まれた年のことを知っておきたいなぁと思って」
「まあ……! 素晴らしいです」
あらかじめ用意しておいた言い訳を伝えると、侍女はいたく感動してくれた。まあ、普通の五歳の女の子は新聞なんて読まないし『生まれ年のこと』って伝えたら違和感なく受け入れてもらえると思ってはいたけど。
言い訳が立ったところで、わたしは新聞をあさりはじめた。
(国の襲撃なんて重大事件だから、絶対に一面に載っているはず)
正確な日付は覚えていないけれど、ゼリックがわたしに見せてくれたお花なんかを思い出すに、春先の出来事だった気がする。
捜索すること数分、わたしは目的の記事にたどり着いた。
「『サウジェリアンナ王国征服に成功、王家の人間は全員死亡したことを確認……』」
ショッキングな見出しにわたしは思わず目を見開く。
(お父様、お母様……)
やっぱり二人はあの時に亡くなっていたんだ。そして、わたしが予想していたとおり、襲撃者はこの国だった。
(ひどい)
どうしてそんなひどいことをしたんだろう? あの二人は、はじめてわたしに愛情をくれた人たちだったのに。他にも、罪のない人がたくさん亡くなっている。知らず知らずのうちに目頭が熱くなってきた。
「そちらの内容は、お嬢様にはまだ難しいかもしれません」
侍女がそう言って困ったように微笑む。単純に、一所懸命辞書を駆使して読んでいるわたしを気の毒に思ったのだろう。
「ねえ、どうしてサウジェリアンナ王国は征服されてしまったの?」
「え? そうですね……私は『国王が国民にとんでもない負担を強いていた』って習いました」
「負担って?」
「たとえば、税金っていうお金をたくさん課したり、兵役っていう訓練を義務づけたりとか……まあつまり、とっても大変な目にあっていたっていうことです。その癖、あの国は王族だけがいい暮らしをしていて、国民はすごく貧乏でしたからね。襲われて仕方がなかったんだと思います」
(え?)
仕方がなかった? 人がたくさん死んだのに? ――わたしのお父様とお母様が死んでしまったのに?
(――違う)
確かに、わたしが知らなかっただけで、お父様とお母様は悪いことをしていたのかもしれない。そのへんはきっと、調べたら情報がたくさん出てくるはずだ。
だけど、本当に殺す必要があったんだろうか? 話し合いで解決できなかったんだろうか? 他にいい方法があったんじゃないだろうか?
――やっぱり、いいはずがない。仕方がなかったなんて思われたくない。
わたしが復讐を成し遂げないと――。
(って、ちょっと待って)
わたしは急いで新聞記事をもう一度読む。
「『王家の人間は全員死亡』?」
おかしい。だってわたしは――あの国の姫君だったわたしは生きてここにいるんだもの。しかも、わざわざ『死亡を確認した』って書き方をしてある。どうして――?
「ああ、幼いお姫様はお気の毒ですよね。なんにも悪くないし、まだ赤ん坊だったっていうのに」
侍女がそう言って眉を下げる。わたしは「そうね」と返事をした。
(いったい誰が、なんのために情報を書き換えたのかしら?)
赤ん坊まで殺したなんて、自国の人間にすらいい印象を与えない。侍女の反応がいい例だろう。記者には正直に『所在・生死ともに不明』と書かせればよかったはずだ。それなのに、わざわざ亡くなったと発表をさせた。誰が、どんな目的でそんなことをしたんだろう?
(復讐相手ははっきりしたけど、わからないことが増えてしまったわ)
わたしはため息をつきつつ、新聞記事をもう一度読む。だけど、何度目を通したところで、ここにこたえはのっていなさそうだ。
(やっぱり、このままじゃダメだわ)
そう強く思った。
25
あなたにおすすめの小説
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる