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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.1-70 フィギュアドール

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…時間を少々巻き戻し、あるモノをハルは受け取っていた。

「…小さいけど、黒き女神のフィギュア?」
【ハイ。神関係のスキルを所持した人がなる姿(第1形態)を模した試作製品『ゴッドアバタードール』となりマス。こちらが、仕様書デス】

 見た目は黒き女神の姿、サイズは原寸大ではなく手で持てる一般的なフィギュアサイズのドール。
 仕様書やその他説明を聞けば、どうやらモンスタードールに近い性能を持っているらしい。

「神系スキルで転じた姿は見麗しいものが多いから、許可ありきでのフィギュア販売、利益はアバター元のプレイヤーにこれだけの還元…ちゃっかり商売にも目を付けるか」

 リアルな身体データがあるからこそ、立体化もしやすいのだろう。
 勝手に販売されるのは困るがある程度人選を選んでおり、副収入としての還元やその他サービスの提供も行う予定があるようだ。
 実在する本人の姿を模しているフィギュアの販売…うーん、需要はあるのか。

【あるとは思いますネ。まぁ、それとはまた別ですが、そもそもこのドールが開発された目的の一つには、現実世界でも同様の肉体で動きたいというご要望がありまして、そちらをかなえる形でできないかなということで、まずは神スキルの所有者が転じる姿を模したものができたのデス。現実の肉体に近い人が、現実で勝手に大暴れをしたらどう考えてもおかしなことになりますからネ。現実の肉体と乖離した姿の人から、まずは試してもらおうってことになっているのデス】
「そういうものか…でも、モンスタードールと同様の性能が見込めるのは都合がいいか」

 仕様書を読んでみれば、このフィギュア…もといゴッドアバタードールを使用する部分は、どうやらアルケディア・オンラインの独自のものではなく、別のシステムを使用しているため、ネット環境未接続・メンテナンスによる停止状態の中でも、オンライン内でのものとほぼ同じ能力をふるえるようだ。
 ただし、起動時の絵面が…付属しているケーブルを、オンラインにログインするために使用する機器に刺して行うため、頭にブスっとさすのは、自分の女神化を模した姿の人形とは言え、ちょっと痛々しいところがあった。

「でも、実際に起動してみればいつもより目線がかなり低いが…オンラインで扱っているアバターと同じ感覚で動けるのは良いな」

 ためしにやってみれば、動作に支障はない。
 サイズがかなりダウンしているので、使用する技なんかも同じく規模が小さくなるだろうが…それでも、これが扱えるのは都合がいい。

【なお、お試しでボタン電池1つ入って4時間しか動けないので注意デス。どのように使用してもいいのですが、耐久性は生身の人間よりはあるとはいえ、無茶な使用はやめてくだサイ】
「…そうなのか?」
【ハイ。使用骨格フレームはメドメタル合金を使用しているので鉄骨よりは頑丈ですけれどネ】

 何その合金。ドラメタルに近いようなものなのだろうか。
 とにもかくにも、これは使えると思い、さっそく試験…いや、ミーちゃんを助けるために扱えると思い、動いてみて…





「…第1形態なのもあるけど、サイズが小さい分威力もスケールダウンしていたようだが、これはこれで都合が良かったか」

 女神の力で全力で駆け抜け、僕は今、黒き女神(フィギュアサイズ)で、このミーちゃんが囚われている現場に到着し、少々暴れさせてもらった。
 規模が小さくなるので、遠慮なく全力で振るったが、都合良い感じに収めることはできている。
 惑星全体を覆いそうなほどの毒の霧は周囲一帯だけ、超強力な電撃はスタンガン程度に、像も一撃で昏倒の麻酔薬レベルの眠り薬を装填した注射器は人間一人を何とか眠らせる程度、岩も破壊できそうなタイキックは脳震盪を起こすぐらい…どれもこれも、ゲーム内からスケールダウンはしている。
 だが、人を相手にするのであれば、このぐらいまで威力を落とせた方が何かと便利だろう。

 とはいえ、霧とこの小ささを生かして攻撃をしていたが…すべて隠せるわけでもなく、見つかってしまったけれどね。

「うぉぉぉい!!なんでこんなちっこい人形が動いているんだ!!」
「まさか、リーダーたちがやられたのはこいつの仕業か!!」
「しかも黒き女神に似ているような…こんなおもちゃが動いて暴れるってト〇ストーリーかよ!!

 その最後のツッコミ、客観的に見たらそれっぽい気がしなくもない。
 そんなことはさておき、まだ人数が残っている中で見つかったのはちょっと厳しいが…ああ、でもミーちゃんのほうを見れば、彼女はどうやら無事のようでこっちはよかっただろう。よく見たら手足の拘束されていたらしい部分が、既にほどけているが…うん、蛇締め付け伯母さんの蛇から逃れることもあった彼女だし、この程度の拘束は意味をなさなかったんだろうな。


 ハイジャック犯たちは、まさかこんな小さな人形たちが攻撃してきていたとは思いもしなかったようで、今はまだ驚愕しているようだが、もう少ししたらすぐに平静を取り戻されるだろう。
 そうなれば、こんなちっぽけな人形ひねりつぶされて終わるだろうが…その前に、全員をより素早く倒す必要がある。

「ミーちゃん!!動いて!!」
「っ、今の呼び方は…いや、そんなことよりもわかった!!」

 既に拘束が意味をなしていないのを知っているし、この際なりふり構ってはいられないだろう。
 僕が叫べば、ミーちゃんは何か察したのか一瞬驚いたようだが、素早く意図を察して動いてくれた。


「おい!!こっちの人質の奴が動いて…」
「そっちを見るよりもこっちを見ろ!!」

 ミーちゃんのほうに目を向けようとした犯人の一人の顔の前へ素早く回り込み、目を狙う。

「コユキの氷でつららからの、鼻フックアッパー!!」
「ふげぇぇぇ!?」

 さっと身を下にかがめ、作り上げたつららを相手の鼻の穴に突っ込み上へ打ち上げる。
 ゲーム内より威力は落ちるが、現実にできた冷たい氷の塊をいきなり突っ込まれて、顔が上のほうに向き行動を遅らせる。
 こうやって相手に隙を作ってしまえば…

「はぁっ!!」
 バズゥン!!
「ごべぇぇぇっ!?」

 ひるんだ相手の肉体めがけて、距離を瞬時に詰めたミーちゃんが手をかざし、吹っ飛ばした。
 触れずに吹っ飛ばしたように見えるが、また何か変な武術でも身に着けたのだろうか。漫画やアニメにありがちの架空の武術を、なぜか会得したりできていたからなぁ。

「うぉい!!またやられたんだが!!」
「落ち着け!!こうなれば全員無傷は無理だが、こいつらを銃で撃てぇぇ!!」

 そう、相手は確かに武器をまだ持った状態。
 攻撃が届く前に、遠距離から射撃して、命を奪うかもしくは手足を打ち抜いて動けないようにすることこそが彼らの勝ち筋につながっただろうが…そんなことはもうとっくの前に予想済みだ。

「こういう銃って、発射口をふさいで暴発させるのも王道の方法かな!!もうとっくの前に使えないようにしておいたんだよ!!」
ボォン!!バァン!!
「「「ぬわにぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」」」

 いつの間にか使えなくなっていたことに驚いているようだが、やったのは単純な方法。
 コユキの氷やネアの妖精糸でガッチガチに詰まるように丁寧にふさいでおいたのである、

「さて、後は一人ずつ狩りの時間だ。いくよ、ミーちゃん!!」
「ああ、わかったよ!!」

 スタンガンレベルの電撃で痺れさせたり、リンの格闘術で蹴り上げてはミーちゃんの武術で吹っ飛ばしたり、シアの霧で目くらましをしてからのバックドロップなど、様々な攻撃を行う。

 そして数分後には、襲ってきたハイジャック犯たちは見事に全滅したのであった…


「良し、あとはここからどうするかだけど…」

 派手に暴れたせいで、他の乗客たちにも見られていたんだけど…これはどうしようもないので、ここはいっそミーちゃんに投げようか。

「ミーちゃん、後は頼むよ。この体の接続を切ってただのフィギュアにするから、全力で自分の操り人形で動かしたってごまかしてね」
「いやいやいや!?そんなごまかし、通用しないと思うんだけど!?」
「昔、人形劇をしていた近所の公園のおじちゃんに対抗して、従えたガキ大将たちに縄を縛り付けて無理やりこれが私の操り人形でーすとかいってやらかした人が、普通の人形でごまかしきれないわけがないでしょ」
「あれはちょっとした黒歴史だからぁぁぁぁ!!」

…なお、このやらかし秘話の後日談としては、なぜか縛られることに快感を覚えた変態ガキ大将一味ができたのだが…うん、思い出さないでおこう。途中で恍惚とした表情になっていた彼らの醜聞は価値がないだろうしね。

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