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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-95 ろくでもないのは、ななでもない

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 ゲームというのは、面白くはあれどもずっとやり続けられるようなものではない。
 適度な休憩も必要だし、モチベーションがないと辛くなってくることもあるので、メリハリをしっかりと付けて行う必要がある。

 そのため今は、惑星の掃除でちょっとモチベーションが下がったため、ログアウトして現実のほうでゆっくり休むことにした。

「まぁ、家の中でボケっと過ごすよりも、外に出て過ごす方がリフレッシュできるかな」

 
 ミーちゃんと一緒に外に出たが、家の外から先は別行動にしていた。
 一緒にどこかに気軽に遊びに行ってもいいのだが、たまには別行動をしたいという意見を言ってきたので、合意したのである。
 プライベートまで一緒に過ごすこともないだろうし、お互いに好きなことをして過ごせばいいとは思う。

 でもこうやって、一人で過ごすのもなんとなく久しぶりなような気が…

「ああ、そうか。思った以上にアルケディア・オンラインにのめりこんでいたのもあったのかな?」

 オンラインゲームの弊害というべきか、考えたら結構人とゲーム内で触れ合う機会が多く、一人で過ごした時間がそこまでなかったとは思う。
 一応、ソロプレイで楽しんでいるはずなのだが…マリーやリンたちもいるし、完全に一人で過ごすって機会がなかったのかもしれない。


「そう考えると、プライベートな時間と割り切って一人で過ごせる今を楽しむべきかな?」

 周りにいつも誰かがいたが、こうやっていない時間を過ごすのも悪くはないだろう。
 人は一人では生きていけないが、それでも一人の時間も必要なもの。
 ちょっと寂しく思う気持ちもあるが、せっかくの一人の時間ということで何から手を付けようか考えながら春は歩くのであった…

…その背後に、迫る者たちがいたことに、気が付かず。














「…これはこれで、良かったかもね」

…春がプライベートな時間を過ごそうとしていたその所、ミントは一人路地裏でつぶやいていた。
 一緒に外に出て歩き回りたくもあったが、このプライベートな時間をお互いに過ごそうと提案したのは、不味いと理解していたからこそ。

 思ったより早く来たようだが、おそらくはあのニンニク臭やその他色々と混ざった悪臭によるメンタルダメージが原因だろう。
 余裕があったはずだが、ゴリゴリと削られたせいで一気に限界に来てしまったのだろう。


 急がなければならない。この衝動が襲ってくる前に、彼に何かをしでかす前に。
 ある程度制御できるようになっていても、削れている今、少々どころかかなり不味いことをしかねないこの身が恨めしい。
 抑えるためには、これを飲む必要があるが、正直言ってかなり避けたかった。
 

 ああ、ダメだ。これを飲んで抑えることができても、この味は嫌いだ。
 わかっているのだ。自分の体が本当に求めているのはこれではなく、飲んで抑えられたとしても後々また来るのが目に見えている。
 ならばなぜ、帰ってきてしまったのか…いや、その理由は言わずとも理解している。

「とりあえず、これで衝動を…」

 懐に隠し持っていた、こういう時のために用意していたものの封を開け、飲み干そうとした…その時だった。


―――バァン!!






 響き渡るのは、一発の銃声。
 ただ、それが撃ったのは肉ではなかったものの、真っ赤な花が周囲一帯に飛び散って咲き誇る。

『…ちぃっ、油断を狙ったつもりが、まだ避けれたのか』

 この国の言葉ではない、別の国の言葉でそう叫ぶ声が銃声の後から出てきた。

『おいおい、あの雑魚どもが精神的なダメージを結構与えだろうに、微妙な結果にしかなってないようだが』
『それでも、飢えた様子を見ると相当余裕はなくなっているだろう。あれ一つしか持ってきていないようだし、飢えているのならば今がチャンスだ!!』
『我らが主に導きを!この「†聖・悪・滅協会†」の幹部がそろいし今、悪しきものはここで消し去る運命なり!!』

 一人ではなく、複数人がぞろぞろと出てきて口々に思ったことを口にする。約一名、明らかに後々の黒歴史になりそうな組織名っぽいのを名乗っているが、正式名称は違っており、そのものが好きに言っているだけで、そんな集団ではない。
 それはさておき、狭い路地裏だというのに、その人数で集まればかなり過密となり…いざとなれば逃げる場もなくなるというのだが、彼らにはここまで来て逃げる気もないようだ。

『『『逃げ場を封じた!!我らが神の敵となりうる、悪しき真祖の一柱・・・・・を今ここで怨獄へ引きずり込むのだ!!』』』

「…」

 そろって叫ぶ声は大きく響くが、その声を周囲の者たちは聞こえていないようだ。
 流石にこのご時世、堂々とやらかすのは不味いと分かっており、ある程度の人払いをするなどの対策はしているらしい。

 つまり、この状況において彼らは犠牲も覚悟しつつも、できる限りのことをなそうとしているようだが…今、そんなことは彼女には関係なかった。

「…ああ、そういうことか。ざますたちが言っていたのは、君たちだったのか」


―――理解をした。あの手助けをしてくれたとか言っていた者たちに関しての情報を。
―――うんざりしていた。諸外国を回っていた理由の一つに、しつこい奴らがいたということを。
―――どうでも良い。何もしていないのに、必ず悪と決めつける視野の狭い愚者がいたということを。


 彼女が目を向け、雰囲気が切り替わると彼らはひるんだようだが、どうやら逃げる気はないらしい。
 ここで多少の犠牲も覚悟のうえでありつつ、これで負けることはないと思い込んでいるのだろう。
 たとえ、ここで命が尽き果てても、彼らは信じる場所へ行けると信じているからこそ、命の炎が消える感覚を、恐れもしないのだろう。

 だが、そんな覚悟も何もかもどうでも良い。本当に、迷惑だとしか言いようがない。

『うぉいうぉい、なんかやばそうなんだが』
『ひるむな!!犠牲は覚悟のうえで、奴はここで仕留める!!』
『ああ、我らが主の導きよ!!先ほど奴の眷属かもしれぬ者も消すためにも割いた分もあるが、我々だけでこやつをここで滅してくれようぞ!!』

「!」

 最後の一人が、明らかに余計なことを言ったが、そんなことに気が付くものは誰もいない。
 彼らがもしも、もっとこの国の言語に流暢で、ことわざとかをよく知っているのであれば、自ら何をしてしまったのか言い表せたのかもしれないが…それはもう、訪れることもない機会。

 
 やってしまった。彼らは自ら、逃れることができない地獄へ足を踏み入れた。
 地雷原をコサックダンスで全力疾走をするように、盛大にやらかした。


 彼らがそのことに気が付いたのは、一陣の赤黒い風が吹き荒れて、光が失われた一瞬の時だけ。
 でも、その風が吹いた後は、一瞬だけ人だった何かが残されたに過ぎない。

 しかし、そのわずかな間だけだったというのに、過ぎ去った時間は数百…いや、数千、数万もの時間が流れたように、その人だった何かは灰と化して散っていく。

「…春!!」

 そんなものがあったこともすぐに忘れ、彼女は暴風と化して春の元へ向かうのであった…
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