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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-100 地道に進む、利用方法

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…病院内での電子機器の使用は、基本的に医療機器への影響や音による騒音などの理由によって禁止されていることが多い。
 だが、ある程度の条件を満たせば、この病院内ではアルケディア・オンラインのために使うVRMMO用の機器の使用は許されていた。

「というのも、リハビリとかでオンラインの仮想現実が役に立っているからか…現実での体の動かし方を忘れたのなら、仮想現実内で動かす感覚をつかんで、現実への応用に生かすなどのリハビリ用に使用されているからこそ、許されるんだね」
「でも、タイマーを使ってしっかりプレイ時間の制限はかかるんだよね。一日3時間だけしかできないようだよ」
「ヘッドセットのタイマーは元からついていたけど、そこまで気にしていることもなかったかも」

 というか、正直言って忘れていた部分があった。 
 もともとやりすぎ防止のために付けられているのだが、最近だと大体どのぐらいやったのか感覚的にわかる部分もあるし、自分で決めた時間だけでしっかりやめることできるので、タイマーの利用なんぞほぼやっていなかった部分もある。

 やりこみすぎて、動かない体よりも動く仮想現実の世界の方が楽しくなって、帰りたくないと駄々をこねる人が出たりするようだ。
 そのため、家でのプレイと違って制限時間がしっかりと作られているようだが…まぁ、そんなに支障はないだろう。

 しいていうのであれば、思いのほかVRMMOの可能性を医療機関が見出しまくっているのもあってか…

「…リモートワークというべきなのか、看護師の3割ほどが、使用人ボディに近い様なものでの遠隔操作なんだよなぁ。ハッキングとかされたらやばそうかも」
「メーゼ・イワド社がしっかりとハッキング対策をやっているって。そういうハッキングされたらやばそうな部分ほど、守りを甘くするわけがないじゃん」
「それもそうか」

 あの会社がそうたやすく突破されるようなセキュリティを作っているわけがない。
 一度、どこぞやの鏡面ののじゃロリがやらかしたやばいこともあったが、それは特例のようなもので、そうやすやすと暴れるようなこともできないようになっているのだろう。

 なんにせよ、入院中でゆっくり休む身だが、気分的にはずっと部屋に居続けるよりもちょっと外に出たいところがある。
 まだ手足が治りきってないので、ならばアルケディア・オンラインにログインして遊ぶぐらい良いだろう。

「それじゃ、病院内だけどやろうか」
「準備オッケー。ログイン場所は、最後にいた場所…私の牧場の星になると思うから、まずはそこからどこへ向かうか、ログインした後にお知らせなんかを見て話そうか」
「うん」
「「ログイン!!」」

 家の中ではなく、外のほうでやるのは実家に帰省してやった時以来のもの。
 制限時間付きだが、現実での3時間は十分すぎるほどの時間だし、長々やるようなこともない。

 ついでに言えば、ログインすればマリーたちと触れ合えるが、ついでにロロもいるからそこで家の状況なんかも聞いておいて、帰ってきたときに誇りで埋もれていることがない様に、掃除をしっかりするようにお願いもしておこう。

 そう思いながら、春とミントはそろってアルケディア・オンラインへログインしていくのであった…


【【【ピヨピヨピヨピヨ!!】】】
「って、ログイン早々にヒヨコの海に溺れる―――!!」
「あ、しまった!!施設の施錠、忘れてたから、全員出てきちゃってた―ー―!!」

…ログインしてすぐに、危うくヒヨコの洪水で即デスペナルティになるところであった。


―――――

 ヒヨコの海に溺れて、溺死しかけていたハルたちが助かって間もないそのころ。
 別の場所…オンラインの世界にある無数の星々の中、とある機械惑星の内部で作られているものがあった。


「…納期、昨日、最悪」

 ずーんっと物凄く目で見てわかるような、物凄く見事な落ち込みをしているのは…以前、Ver2.1のころにハルと同じく、レイドボスの役目を担ったことのあるプレイヤー、通称『鋼鉄の機械神』。
 黒き女神とは異なる神系のスキルを有しており、現在そのスキルを使用してあちこち機械のパーツが浮かび上がっている姿となっているのだが、それでもわかりやすい落ち込みをしていた。

 無理もないだろう。ちょっと油断し、自分で収めるべき納期を過ぎてしまい、納期が過ぎたことによる罰金が発生してしまうのだから。
 この仕事はどうせすぐに終わると、機械神の名を有する割には甘い見た手をしてしまっており、現在盛大に時間をオーバーしているのである。

 幸いというべきか、現実のほうのやり取りではなく、このアルケディア・オンラインの世界でのやり取りなので、現実の通貨ではなくこの世界のALを使うやり取りだったことだろうか。
 ただし、色々とやっているために余裕があるわけではなく…

「残金、10AL…!!」

 ちゃりーんっと、なけなしの小銭が落ちる音共に、絶望の顔を浮かべた。
 機械神、機械っぽい印象を持たれそうな名前で通っているが、本人をよく知る者たちが聞けば、絶対にそれはないと断言できるほど感情が豊かであった。
 ただし、よく出る感情が割と悲惨な方向性になりやすいので、その冷たいような悲しい様な様子からか機械神と呼ばれている可能性もあるが。

「宛て、あるか?怪物女王、不通。恐竜女帝、弟■■■。道化師、興行中。U/M/A、ゴリラランド建設中。死霊王、侵略星人交戦。…ぬぬぬ」

 期限までに間に合わなければ、確実にむしり取られるのは目に見えている。
 自業自得といえばそうなのだが、それでも限界ぎりぎりでどうにか借りられる相手がいないか、機械神は探れる範囲を名一杯広げて探しまくる。

「っ!!牧場主、黒き女神!!こちら、可能そう!!」
 
 どこかに借りられる相手がいないか、全力で探す中、希望の光が差した。

「イオヤ!!留守、頼む!!」
【了解、こちらの催促状ハ?】
「焼却炉へ!!」

 手短に自身の雇う使用人へ星の留守を任せ、すぐに動き出す機械神。
 そんな行動をするぐらいなら、もうあきらめて動くだけの時間を使って可能な限り間に合わせたほうが損害が少ないのではないかと、イオヤと呼ばれる使用人が口にしようとしたが、機械神は既にさっていた。

 全力で動き、土下座で頼み込む…その行動に移す速さは、尋常ならざるレベルだろう。
 だが、その間にも無情にも時間が過ぎ去っていくので、結局はより重い形で帰ってくるのだろうが、そんなことまで考える余裕はないのであった…
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