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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-101 海を行く銀の彗星

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ブォォォォォォォォォ!!
ポォォォォォォォォォ!!

…ハルの所有する魔導戦艦グレイ号と、ミント…このオンライン上ではミルルンの名を持つ彼女が所有する魔導列車ファントム号の汽笛が鳴り響き、宇宙空間を飛翔していく。

「いや、そもそも現実だったら真空だから音は響かなそうだけど…そこは突っ込むのは野暮か」
『そうだよー。でも、良かった良かった。ハルの船が大きいから、いつもより多くの荷物が輸送できるから助かったよ』
「その代わりだけど、後で多少融通してくれるんだよね?」
『うん、しっかりと優れた商品は後でハルのほうに送っておくよ』
【滅茶苦茶嬉しいことデス。主様、良いご友人を持たれましたネ】
 
 船同士の通信機でミーちゃんと話している中、ぬっとロロが背後から現れた。
 いつもは冷静な表情をしている使用人だが、本日は隠しきれない喜びがあるせいか目を輝かせており、いつもよりも生き生きとしているような気がする。
 そういえば、使用人間でミルルン牧場産の品物は争奪戦があるほど人気があると言っていたが…偶然にもミーちゃんがそのミルルン牧場の主だったおかげで、その人気の品が手に入れられることに対して、物凄く嬉しがっていた。



 本日のログイン時間は、病院内でのプレイのために3時間の制限付きだが、それでもオンライン内で過ごす時間としては十分にある。
 そこで何をやろうかと話し合った結果、せっかくなのでミーちゃんの牧場で産出された製品がどこでどう卸されていたりするのか気になったので、手伝いながら見ることにしたのである。

 牧場のある惑星にはミーちゃんの魔導列車で来たが、ロロの操縦でグレイ号を呼び寄せ、せっかくなのでその巨大な宇宙戦艦の内部にも商品を詰め込み、一緒に宇宙を駆け抜けていく。
 魔導戦艦だから、輸送艦のような役目はどうなのかと思うところもあったが…なんとなく、この船自体は嫌がっている様子もないように思えるだろう。
 むしろ、「船」としての役目でまともにできるようなことに対して、喜んでいるような汽笛にも聞こえてくる。海賊船だったときから意志があるらしいとは聞いていたが、この様子だと戦艦よりもこういう何かを運ぶ船としての役目のほうが好きなのだろうか。

 ちなみに、魔導列車のほうは惑星に来た時の客車ではなく、牧場から算出された品々を詰め込んだ貨物列車が多く連結されており、魔導戦艦の全長よりも少し長いほどになっている。
 この船に積載した商品の量も考えると、争奪戦が起きずに無事に欲しい人たちの元へすべてが配分されそうなものだとは思うが…

【いえ、それは甘いデス。むしろ量が多くなった分、より優れた品々を確保しようとさらなる争いを生む可能性が想定できますネ】
「そんなものなの?」
【そんなものなのデス。主様には体感してほしくはないのですが、あの激戦はさながら世界…いや、宇宙戦争に匹敵するレベルのすさまじいものなのデス】
「怖っ」
【もっと身近なものに例えるならば、激安セールに群がるおばちゃんの大群のごとし激戦になりマス】

 急にかなり庶民的な方に下げられたとは思うが、それと同等なのはどうなのか。
 いや、あれはあれでやばい様な…うーん、全然違うとも言い切れないのが恐ろしい。確か昔、ミーちゃんと近所の激安スーパーのさらなる安さを得た閉店セールに参加してみて…さながら、某風の谷で虫の大群に弾き飛ばされるがごとし、すさまじい勢いに吹っ飛ばされたことを思い出すだろう。
 あの筋肉バカの父さんも、負けていたような…恐怖って、そういうことを示すのだろうか。




 そんなどうでも良いような、近所のおばちゃん軍団の猛牛のような悍ましさを思い出していたところで、ふと、船の汽笛が急に違う鳴り響き方を始めた。

ブォブォブォオオオオオ!!
ポッポッポッポッポォォォォォ!!

「ん?なんだ?」
【これは…警戒の汽笛ですネ。何か、接近しているようデス】
 
 どうやらこの二隻に向かって、何かが接近してきているらしい。
 レーダーで感知したのか、警戒の音を鳴り響かせているようだ。

「接近物はなんだ?」
【レーダー探知…分析完了。別の船がかなりの速度で接近してきているようデス。上部スクリーンに、投影いたしマス】

 そう言いながらロロが操作を行い、上のほうに設置されていたスクリーンに感知した船をウ映し出した。
 魔導戦艦ゆえにあちこちに接近に対するレーダーを取り付けつつ、どのようなものかすぐに目で見て確認できるように、かなりの距離でも撮影できるカメラが設置されているらしい。
 そのカメラのうち一台が、高速で接近してきている船を捉えているようだ。

「船というけど、形が見えないな。どちらかといえば、彗星のようにも見えるかも」
【戦艦や列車のようなサイズではなく、小型の一人分だけ乗れるようなものが、内部に探知できていマス。彗星のように輝くガスを纏っているように見えますが、アレは一種の防衛機構のようデス】

 色合いとしては銀色であり、きらきらと流れていく様子は美しくもある。
 だが、その速度は尋常じゃないようで、横に一緒に映し出されている僕らとの距離をわかりやすく図解した映像では、凄まじい速度で接近している様子が見て取れた。

【目視可能領域まで、あと20秒ほど。亜光速から減速を確認】
「つまり?」
【到着予想地点、我々の間に来るようデス】

 そうこうしているうちに、宇宙空間のほうを見れば、すぐにその姿が見えてきた。
 速度を落としているというがそれでもかなりの速度で接近し、大体横並びになったところで同行速度に変化していた。

【チャンネル接続を確認、通信を求めているようデス】
「相手の情報はわかるか?」
【情報称号、合致を確認。主様のフレンド登録内に対象者有り。フレンドリスト、登録情報を照会すれば…『機械神』のようデス】
「機械神…ああ、そういえば前に、レイドボスをやりあった時に登録していたっけ」

 結構前のことだが、運営に依頼されてのレイドボスとしての役目を担ったことがあったが、その時に僕以外にも怪物女王と一緒に、機械神という名のプレイヤーもいたのだ。
 その際に、せっかくだからレイドボスになった者同士として、イベント後にフレンド登録もしていたが、そんなに話すこともなかったが、それでも覚えているのだ。

【妖精郷の改造にも、その伝手で知恵を拝借できましたからネ】
「なるほど」

 あの魔改造ぶりを思い出すと、物凄く納得はできる。レイドボスをやっていた時にも巨大ロボットを繰り出していたというので、技術だけを見れば可能なのだろう。
 できれば、止めてほしかったと思うのだが、既に遅すぎる話か。


 しかし、どうして今になった機械神が、この宇宙フィールドで急に会いにやってきたのだろうか。
 そう思いつつも、通信を断る理由はないので、接続して会話を交わ…

『通信許可、感謝。突発、至急、金、急募!!』
「…なんて?」

…久しぶりに出会った友人から、まさかの土下座映像からの金の無心ってどうなのだろうか。


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