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Ver.4.0 ~星々の輝き、揺らめく境界~

ver.4.2-136 救助よりも情報を先に

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「スヤァ…クピィ…」
「…ミーちゃんが帰ってきているのは驚いたけど、ぐっすり寝ているね」
【本日は休日ですので、主様と朝から遊べそうだとおっしゃってましたが…悲しいことに、深夜遅すぎて眠りにくかったのか、爆睡されておりマス】

 春が起床し、朝食を取り始めたころにロロがミントの帰宅を知らせてきた。
 帰ってくるまで時間がかかりそうな話があったが、どうやら思ったよりも早く用事を終えることができて、すぐさま帰ってきたらしいのだが…どうも結構遅い時間の帰宅になってしまったようで、疲れているのもあったのか朝方ごろには寝息を立て始め、完全に爆睡してしまったらしい。

 一応、真祖…吸血鬼に似たようなものって聞いているけど、朝から爆睡する吸血鬼というのはあながち間違ってないのかもしれない。
 しいていうのであれば、普通にベッドのほうで眠ってくれればよかったのだが、どうも夜食をいただいた後に眠ってしまったせいか、椅子のほうに面白動画とかに投稿したらかなりいいねを稼げそうな感じの姿勢で爆睡されているぐらいだろうか。

「というか、こんな姿勢で眠らなくとも…これでよく眠れるよね?」
【疲れていたのでしょウ。夜食を食べて、緊張の糸とかがほぐれたのかもしれまセン。…追及を逃れるために、ぷしゅっとした薬が効きすぎたかもしれませんガ】
「ん?今何か言った?」
【いいえ、何もありまセン。このまま寝られたので、ベッドへ運びたかったのですが…ほら、がっしりと椅子をつかんでいる手もあるせいで、まともに寝かせられないのが困りますネ】

 このままでも眠れているのであれば、後で全身がこりそうだけど寝かせてあげたほうが良いだろうか。
 むしろちょっと、撮っておくべきか…こんな寝相、珍しすぎて記録しておいた方が良いかもしれない。でも、それやったらあとで、記憶を消し去りそうなことをやらかしそうだしなぁ…ミーちゃんがうっかりバナナの皮で滑って宙を舞った映像を偶然撮ってしまったやつが、末路を思い出したしやめておこう。
 あいつは今、その経験を活かしてトライアスロン選手になったとかいう話だったが…うん、まぁ元気ならそれでいいか。



 
 とにもかくにも、せっかくいるのならば一緒にアルケディア・オンラインをプレイしようかと思ったが、この様子だとしばらく目を覚まさないだろう。
 それに、最終ログイン場所を考えると、現地集合してもらわないと一緒に遊べないし…うん、本日はもうちょっと海王惑星を楽しんでから、ミーちゃんのログイン場所へ向かうべきか、あるいは起きてログインしてきた頃合いで、集合場所を決めて遊ぶべきか。あ、ミステリートレインの旅行もついでに誘おうかな。

 現実のほうで起きてもらってから決めようかなと思いつつ、最終ログイン場所…海王惑星ルカドンへ春はログインした。
 昨日は中三病がルカドンをテイムしに向かったようだが、一晩経過したのでちょっとは動きがあるはずだろう。


「早ければもうテイムして、早速メールしているかも…って、あれ?」

―――――
>警告!!警告!!警告!!
>ログイン場所に設定されている「海王惑星ルカドン」の座標がずれています。
>魔導船などの移動手段で惑星外に出る際は、宇宙地図の見直しをお願いいたします!!
―――――

 ログインしようとしたところで、急に出てきた注意のログ。
 場所が爆破されていたり、消し飛ばされていた時に出る警告があるというのは聞いたことがあるが…惑星の座標がずれているとは、何があったのだろうか。

「…いや、これって多分、中三病さんが原因かな?ルカドンへ影響を与える何かがあったとするならば、直近だと中三病さんが怪しいし…うん、確認してみよう」

 警告表示に対して確認を入れ、ログインをしてハルは惑星ルカドンに降り立った。
 星の座標がずれているというのは気になりつつも、そこまで変わったことはないと思いたかったが…ログインして早々、その考えは甘かったことを知った。


ズンガラガッシャァァァン!
ビュゴォオオオオオオオオオオ!!

「大嵐の真っ最中になっている―――――!!」

 穏やかな海はどこかへ消し飛んだというように、周囲一帯を天変地異がごとくすさまじい豪雨や強風、時折竜巻や落雷が暴れまわっており、大嵐と化していた。

―――――
>メールが届いております。
>フレンドの「中三病」からのものになっております。
>開封しますか?>はい

『拝啓ハルさんへ
ごめん、やらかしちゃった☆
轟雷扇を使って呼び出すための舞を行い、ルカドンと思われる巨大な水龍が出現して、テイムに挑んだんだけど…大失敗しました。
タスケテタスケテタスケテタスケテェェェェェ!!』
―――――
「何をしでかしたんだよ中三病さぁぁぁん!!」

 嫌な予感が的中してしまった。確実に中三病さんがやらかしたようで、惑星全体に座標がずれるほどの未曽有の大天災を引き起こしてしまったようである。
 フレンド登録しているのでログイン状況を確認してみれば、惑星の…地球でいえば赤道直下あたりにある島のほうにいるらしいが、そこでログインしている状況にあることが確認できた。

「どう考えても面倒ごとの予感しかないけど、問いたださないと!!グレイ号へ乗、」
ビュゴォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
「ってぇぇぇぇぇぇ!!吹っ飛ばされる!!風が強すぎるんだけどぉおおおおおおお!!」

 何をどうやらかしたのか、ログインしている中三病の元へ問いただすために、船に乗って向かおうとしたのだが、港へ向かう前に風に吹っ飛ばされてしまった。
 かろうじて無事に着地することができたが、このままではまともに港へ向かうこともできない。
 そもそも大嵐すぎて海が大荒れしまくっており、まともに船が動くかもわからない。

「あ、そうだ!!」
 
 ふと、そこでこの中を無理して向かう必要はないことにハルは気が付いた。
 ハウスシステムをすぐに起動してまずは大嵐の中から抜け、安全な室内へ移動する。

「ロロ!!グレイ号を遠隔操作で、呼び寄せて!!港まで向かえないから頼む!!」
【了解デス】

 魔導船…宇宙戦艦にまで改造されてしまったグレイ号だが、元々は海賊船。
 それもただの船ではなく、どうも心を宿しているらしい生きた船。
 そのため自動操縦のように、船自身に任せて進むことができるようになっているのが、こういう時に利用できるのを思い出したのである。

 ひとまず今は、船の到着を待ち、この大嵐の中でログインしているらしい中三病さんへ、すぐさま何がどうなってこうなったのか、詳しい説明をしてもらえないかメールを送ってみるのであった…

「…とはいっても、ハウスシステムに気が付かなかったら、この天災の中でメールに返信できる余裕あるかな?」

…なお、5分ほどでグレイ号はあっさりと港を出港してやってくることができた。
 どうやら、元海賊船というのもあってか様々な嵐の海に遭遇したことがあり、だいぶ慣れていたらしい。

「こういう時に、経験豊富な船で良かったと思えたよ…」
【テセウスの船のように、当時の部品はだいぶ入れ替えましたけどネ。経験は部品ではなく心に宿っているのでしょうカ?】





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